相手によって自分が変わるのはなぜ?|人との関係の中で見えてくる自分

仕事・対人関係

「この人といると、なぜかすごく気をつかう」

「別の人には普通に言えることなのに、この人には言えない」

「普段はしっかりしているのに、この人の前だと急に自信がなくなる」

そんなことはありませんか。

人によって、話し方が変わる。
頼れる相手もいれば、絶対に頼れない相手もいる。
ある人とは自然に笑えるのに、別の人といるとずっと緊張している。

すると私たちは、

「私は人に気をつかいすぎる性格だから」
「私は頼るのが苦手だから」
「私は自信がないから」

と、自分の性格の問題として考えがちです。

でも、本当にいつでもそうでしょうか。

誰と一緒にいるときも、同じように気をつかっていますか。
誰に対しても、本音が言えないのでしょうか。

もしかすると、自分自身だけを見ていてもわからないことが、人との関係の中にはあるのかもしれません。

この記事のポイント

人と関わるとき、そこにいるのは「相手」と「自分」だけではありません。

その二人の間には、

「この人の前では頑張ってしまう」
「この人には認めてもらいたくなる」
「この人には助けてほしくなる」

といった、自分でも気づいていなかった反応が生まれることがあります。

その反応に気づくことができると、

「私はこういう人だから仕方がない」

ではなく、

「この人と、これからどんな関わり方をしたいのか」

を考えられるようになります。

人によって「出てくる自分」は違う

たとえば職場では、何でも自分で判断して、周囲からも頼られている女性がいたとします。

仕事では、

「私がやります」
「大丈夫です」
「任せてください」

と自然に言える。

ところがパートナーの前になると、急に相手の反応が気になって、自分で決められなくなる。

「これを言ったら嫌がるかな」
「今日は機嫌が悪そうだから、やめておこう」
「本当はこうしたいけれど、合わせた方がいいかな」

同じ人なのに、職場と恋愛ではまるで違う自分が出てきます。

反対に、仕事では周囲に遠慮している人が、家族の前では強く物を言うこともあります。

友人には素直に「助けて」と言えるのに、夫にはどうしても言えない人もいます。

だとすると、

「私は頼れない人」
「私は気が弱い人」
「私は怒りっぽい人」

と決めつけてしまうだけでは、見えてこないことがあります。

大切なのは、

「誰といるときに、私はそうなるのか」

という視点です。

相手だけを見ても、自分だけを見てもわからないことがある

人間関係に問題が起こると、私たちはどちらか一方を見ようとします。

「あの人が冷たいから」
「あの人が自分勝手だから」

と相手を見ることもあれば、

「私が気にしすぎるから」
「私がもっと大人になればいい」

と自分を見ることもあります。

もちろん、相手の言動を見ることも、自分自身を振り返ることも必要です。

でも、それだけでは見えてこないことがあります。

それが、

「この人といるときの私は、どうなっているのか」

ということです。

たとえば、相手が特別に何かを要求しているわけではないのに、なぜか先回りして世話をしてしまう。

何も責められていないのに、この人の前では「ちゃんとしていなければ」と力が入る。

普段なら流せるような一言なのに、ある人から言われるとひどく腹が立つ。

反対に、他の人なら断れるのに、なぜかこの人には断れない。

そこには、相手だけの問題でも、自分だけの問題でも説明しきれない、二人の関係の中で起きていることがあります。

相手の表情や声の変化を見て、「嫌われたかも」「怒っているのかも」と不安になりやすい場合は、相手の反応をどう受け取っているのかという別の視点もあります。

詳しくは、
相手の態度が冷たいと「嫌われたかも」と不安になる理由
で解説しています。

人との関係の中で、初めて見える気持ちもある

自分の気持ちは、一人で静かに考えればすべてわかるとは限りません。

人と関わることで、初めて出てくる気持ちもあります。

普段は寂しいと思っていなかったのに、大切な人が離れていきそうになった途端、強い寂しさが出てくる。

自分は一人で何でもできると思っていたのに、ある人と出会って初めて「本当は誰かに頼りたかった」と気づく。

怒るようなことではないと思っていたのに、ある人との関係では何度も腹が立つ。

それは、

「この人が私をこんな気持ちにさせた」

わけではないのかもしれません。

その人との関係によって、自分の中にあったものが表に出てきたとも考えられます。

人との関係は、ときに自分でも知らなかった自分を見せてくれます。

「相手のことばかり考えている」と、自分が見えなくなることもある

ただし、人との関係を見ることと、相手のことばかり考えることは違います。

「あの人はどう思っている?」
「嫌われていない?」
「何をしてほしいんだろう」
「私がどうすれば機嫌がよくなる?」

相手のことを考える時間ばかりが増えると、自分のことが見えなくなってきます。

本当は嫌だったのか。

寂しかったのか。

疲れていたのか。

もっと近づきたかったのか。

それとも、少し離れたかったのか。

相手のことを考えることに慣れている人ほど、こうした自分の感覚が後回しになることがあります。

すると、

「相手がどうしたいか」は一生懸命考えているのに、

「私は、この人とどうしたいのか」

がわからなくなります。

「私はこういう人だから」と決めつけない

人間関係で同じようなことが続くと、

「私はいつも人に合わせてしまう」
「私は男を見る目がない」
「私は人付き合いが苦手」

と、自分を固定して考えたくなることがあります。

でも、少し視点を変えてみます。

「私は人に合わせる人」ではなく、

「この人といるとき、私は合わせる側に回っている」

「私は頼れない人」ではなく、

「この人との関係では、頼れない私になっている」

と見てみる。

すると、「自分の性格だから仕方がない」とあきらめずにすみます。

なぜなら、あなたの性格だけで決まっているのではなく、相手との関わり方によって起きていることだからです。

気づいたら、次に「どう関わりたいか」を考える

自分がその人との間でどうなっているかに気づくことは、ゴールではありません。

大切なのは、その先です。

たとえば、

「この人の前では、いつも私が我慢している」

と気づいたとします。

そうすると、

「私は、この人とこれからも同じ関わり方をしたいのだろうか」

と考えることができます。

全部引き受けず、一つだけ断ってみる。

わかってもらえるまで我慢するのではなく、「私はこう感じた」と伝えてみる。

相手が決めるのを待つのではなく、自分の希望も言ってみる。

何でも一人で処理するのではなく、「手伝って」と言ってみる。

あるいは、関係そのものから少し距離を取ることが必要な場合もあるでしょう。

相手を変えなくても、自分の関わり方を選び直すことで、二人の関係が変わることがあります。

逆に、こちらが頑張りすぎることで、相手が任せる側になっていく関係もあります。

自分の中だけを探しても見つからない答えがある

「私は本当はどうしたいんだろう」

そう考えても、なかなか答えが出ないことがあります。

そんなときは、自分の中だけを探し続けるより、

「誰といるときの私は、楽なんだろう」

「誰といるとき、私は必要以上に頑張っているんだろう」

「誰の前では、言いたいことを飲み込んでいるんだろう」

「この人の前では、私は何を我慢しているんだろう」

と、人との関係から自分を見てみると、思いがけないことが見えてくる場合があります。

自分というものは、一人でいるときだけにわかるものではありません。

誰かと出会い、話し、近づいたり離れたりする中で、自分の気持ちや考えが見えてくることもあります。

だから、人間関係で悩んだときには、

「相手がどういう人なのか」
「自分の何が問題なのか」

だけではなく、

「この人といるとき、私はどんな自分になっているんだろう」

と考えてみてください。

そこに気づくことができれば、これまで無意識に繰り返してきた関わり方を、そのまま続ける必要はなくなります。

自分が何を感じ、何を望み、何が嫌だと思っているのか。

それが見えてきたところから、

「私は、この人とどう関わっていきたいのか」

を選び直すことができます。

ただ、頭では「もっと頼ればいい」「本音を言えばいい」とわかっていても、いざその人を目の前にすると、いつもの自分に戻ってしまうこともあります。

夫には頼れない。
母親の前では言いたいことが言えない。
職場では何でも引き受けてしまう。

そうなるのには、その人との関係の中で、これまで身につけてきた役割や、言えなかった気持ち、過去の体験が関係していることもあります。

カウンセリングでは、「どうすればうまくできるか」という方法だけを考えるのではなく、なぜその人との間では、いつもの反応が出てくるのかを一緒に見ていきます。

そこがわかってくると、「また我慢してしまった」「また言えなかった」と自分を責めるだけではなく、今までとは違う関わり方を試せるようになっていきます。

人との関係の中で現れる自分を知ることは、自分を責めるためではありません。

これまで無意識に繰り返してきた関わり方に気づき、これから誰と、どんな関係をつくっていきたいのかを、自分で選んでいくためです。

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