義母に嫌なことを言われた。
夫にそのことを話したら、「悪気はないと思うよ」「昔からああいう人だから」「そんなに気にしなくてもいいんじゃない?」と言われた。
こちらはつらかった気持ちをわかってほしかっただけなのに、気づけば夫から義母の事情を説明されている。
そんなことが何度も続くと、義母や義父への腹立たしさ以上に、「この人は私の夫なのに、どうして私の気持ちより親のことをわかろうとするんだろう」という寂しさが強くなっていくことがあります。
夫が義実家の味方をする理由は、夫婦によってさまざまです。
夫自身の性格や価値観、その場の状況によることもありますし、妻との関係の中で何か不満や寂しさを抱えている場合もあります。
ただ、その背景の一つとして、夫と実家との心理的な距離が、結婚後もとても近いままになっていることがあります。
今回は、この「夫と実家との心理的な距離」というところから、義実家の味方ばかりする夫と、そのことで孤独を感じる妻の間に何が起きているのかを考えてみたいと思います。
義実家の味方をされたときにつらいのは、意見が違うことだけではありません。
「私は夫にとって、親より遠い存在なのだろうか」
そんなふうに感じてしまうことが、妻を深く傷つけることがあります。
親との心理的な距離が近いとは、どういうこと?
親との心理的な距離が近いというのは、単に仲がいいということとは少し違います。
大人になって結婚しても、親がどう思うかが自分の判断に強く影響したり、親を悲しませると自分が悪いことをしたように感じたり、親の機嫌や気持ちを必要以上に背負ってしまったりすることがあります。
たとえば、自分ではこうしたいと思っていても、親が反対すると急に迷い始める。
親が不機嫌になると、自分が何とかしなければと思う。
親が傷ついたように見えると、自分の方が悪かったのではないかと感じる。
そういうことが多いと、年齢は大人でも、親との関係だけはまだ「大人同士」になりきれていないことがあります。
大人になっていくというのは、親を大切にしなくなることではありません。
親と違う考えを持ってもいい。
親が望まない選択をすることもある。
それでも、自分は自分の人生を生きていく。
親の気持ちは親のもの、自分の気持ちは自分のものとして分けて考えられるようになることでもあります。
もし夫が実家との心理的な距離が子供時代のように近いままだとしたら、妻と親の意見がぶつかったときにも、妻の気持ちより先に親の気持ちを考えることがあります。
妻が「私はあの言い方が嫌だった」と話しているのに、「でも母さんにも事情がある」と返す。
妻が「次からは行きたくない」と言っても、「そんなことをしたら親がどう思うか」と考える。
夫にとっては自然な反応でも、妻からすると、「どうして私より親の気持ちを先に考えるの?」となるのです。
どうして親との心理的な距離が近いままになるのか
そもそも親と子は、心理的距離が近いものです。
ですが、子供から大人に成長していく過程で、親との距離は幼い頃よりも広がっていくものです。
また、恋人ができたり、結婚したりすると、誰よりも心理的距離が近いのは、恋人や配偶者となるのが一般的ではあります。
ですが、理由は人によりさまざまですが、親との心理的な距離が、子供時代のように近いままになっていることがあります。
たとえば、実家にいた頃から親の気持ちを気にしながら過ごしてきた人もいます。
母親の話を聞くことが自分の役割になっていたり、父親の機嫌が悪いときには家の雰囲気が悪くならないように気を配ったりしてきたのかもしれません。
そんなふうに家族の中で過ごしていると、自分の気持ちよりも親を安心させることの方が大切になっていくことがあります。
親を悲しませると、自分が悪いことをしたように感じる。
親に反対すると、親を傷つけたように感じる。
自分が自由に決めるより、親が納得する選択をした方が安心する。
そうした関わり方が長く続いていれば、結婚したからといって急に変わらなかったりするのです。
本人は「親に逆らうのが怖い」と自覚していないこともあります。
むしろ、「親を大切にするのは普通」「母さんにも事情がある」「父さんの言うこともわかる」と、本当にそう思っていることもあります。
ただ、その考えの奥に、親を悲しませることへの罪悪感や、親と違う選択をすることへの不安がある場合もあります。
だから妻から見ると、「どうしてそこまで親をかばうの?」と思うような場面でも、夫にとってはそれほど不自然なことではないのかもしれません。
実家の価値観が、そのまま「普通」になっていることもある
親との心理的な距離が近すぎるままだと、実家で身につけた価値観もそのまま残りやすくなります。
たとえば、正月には実家に集まるものだとか、親の頼みは断らないものだとか、家族なら多少のことは我慢するものだという考え方です。
本人にとっては、それが特別な価値観だという感覚がありません。
子どもの頃からそうだったために、「家庭とはこういうものだ」と思っているのです。
そこへ妻から「私はそれが嫌だ」と言われても、夫には何がそんなにつらいのかわからないことがあります。
妻は「私の気持ちを尊重してくれない」と感じる。
夫は「どうして普通のことをそんなに嫌がるんだろう」と感じる。
同じ出来事について話しているのに、二人が受け取っている意味は違います。
結婚すると、それぞれ別の家庭で身につけた「当たり前」を持って、一緒に暮らし始めます。
もし夫が実家との心理的な距離を近く保ったままだと、自分の実家のやり方を「うちのやり方」として、そのまま夫婦に持ち込みやすくなることもあります。
妻からすると、「私は夫と新しい家庭を作ったつもりなのに、まだ義実家の中にいるような気がする」と感じることがあります。
妻がつらいのは、義実家を大切にすることではない
夫が親を大切にすること自体が問題なわけではありません。
妻が苦しくなるのは、夫婦なのに、自分より親との方が心理的に近いように見えるからです。
こちらが傷ついているのに、まず親の事情を説明される。
自分の希望を伝えているのに、親がどう思うかを先に気にする。
夫婦で決めたいことなのに、親の意見が入ってくる。
そうしたことが重なると、
「私はこの人にとって、どのくらい近い存在なんだろう」
という疑問が出てきます。
夫婦になったということは、「この人とは誰よりも近い関係を作っていける」と思ったからだったはずです。
だから「私より親が大事なの?」という気持ちが出てくるのです。
ただし、妻が求めているのは、何があっても自分を優先してほしいということではなかったりします。
「今回はお義母さんの言うこともわかる」と夫が言っても、普段から「この人は私の気持ちをわかっている」と思えていれば、それほど傷つかないこともあります。
問題になるのは、夫婦のつながりより、親とのつながりの方が強いように感じることです。
妻が求めているのは、「親より私を選んで」ということとは限りません。
「この人は私の気持ちも大切にしてくれる」
そう思えることが、夫婦のつながりになります。
妻が傷つく背景にも、人それぞれの理由がある
同じようなことが起きても、どれくらい傷つくかは人によって違います。
これまでに、自分より誰かを優先されたと感じる経験や、困っているときに守ってもらえなかった経験があると、夫が義実家を優先したように見えたとき、以前の寂しさまで重なることがあります。
ただ、妻が強く傷つくからといって、必ず妻の過去に原因があるわけではありません。
夫婦になった相手が自分より親との方を近く感じているように見えること自体が、十分につらいこともあります。
夫婦の間で、同じすれ違いが繰り返されることがある
夫が実家との心理的な距離を近く保っている場合、義実家との出来事をきっかけに、夫婦の間で同じやり取りが繰り返されることがあります。
妻は本当は、「私の気持ちをわかってほしい」と思っている。
でも何度もわかってもらえなかったために、「どうしていつもお義母さんの味方なの?」と強く言うようになる。
夫には、それが「親を責められている」と聞こえる。
すると夫は、さらに「母さんにも事情がある」「そんなつもりで言ったわけじゃない」と親をかばおうとする。
夫が親をかばうほど、妻は「やっぱり私より親なんだ」と感じる。
そして妻は、もっと強く夫に訴える。
こうして、妻は夫との距離を近づけたいのに、夫には親との関係を否定されているように伝わることがあります。
夫も妻を傷つけたいわけではないのに、親との関係を守ろうとすることで、結果として妻との距離が広がってしまうことがあります。
必要なのは、「親か妻か」を決めることではない
だからといって、夫に「親と距離を取ればいい」と言えば解決するわけではありません。
親を大切にしながら、妻も大切にすることはできます。
大切なのは、夫が親との関係とは別に、妻との関係を作っていくことです。
親がどう思うかだけでなく、「自分は妻とどうしたいのか」を考える。
親が嫌がるかもしれなくても、夫婦で相談して決める。
親と違う考えを持っても、それだけで親を裏切ったことにはならないと感じられるようになる。
そうやって親との関係が少しずつ大人同士の関係になっていくと、夫婦の間にも新しい関わり方が作りやすくなります。
一方で、「私の味方をして」という言葉だけでは、夫には「親と妻のどちらかを選べと言われている」と伝わってしまうこともあります。
たとえば、
「あなたにお母さんを責めてほしいわけじゃない。私はあのとき嫌だったし、あなたには『それは嫌だったね』ってわかってもらいたかった」
と伝える。
その方が、妻が本当に求めていることが夫にも伝わりやすくなります。
そして妻自身も、自分は夫に何をしてもらえたら安心できるのかを考えてみることが大切です。
その場で何か言ってほしいのか。あとで気持ちを聞いてほしいのか。義実家との付き合い方を一緒に考えてほしいのか。
「味方になってほしい」という言葉の中身がわかると、夫に伝える言葉も変わってきます。
まとめ|夫と義実家との心理的な距離を見てみる
義実家の味方ばかりする夫には、さまざまな背景があります。
今回はその一つとして、夫と実家との心理的な距離が、結婚後も近いままになっている場合を取り上げました。
親と仲がいいことが問題なのではありません。
親の気持ちと自分の気持ちを分けることが難しかったり、夫婦のことを決める場面にも親の思いや価値観が強く入ってきたりすると、妻には「夫婦なのに、私より親との方が近い」と感じられることがあります。
そして、本当に苦しいのは義母の言葉そのものより、「夫が自分のところにいてくれない」と感じることかもしれません。
カウンセリングでは、義実家との出来事だけを見るのではなく、夫との間で何が繰り返されているのか、そのとき自分は何に傷ついているのかを見ていきます。
「親を大切にする人だから仕方ない」と頭ではわかっているのに苦しさが消えないときには、その奥にある寂しさや悲しさにも目を向けていきます。
そこが見えてくると、「夫に何をしてほしかったのか」「これから夫婦としてどんな関係を作りたいのか」も、少しずつ言葉にできるようになります。
義実家の問題だと思っていたけれど、本当に苦しかったのは、
「夫と親の方が、私と夫よりも近いように感じることだった」と気づく人もいます。
そこがわかると、義実家への怒りだけでは見えなかった、夫婦の間で本当に扱いたいことが見えてくることがあります。
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