結婚したいのに、家庭を持つことが怖いのはなぜ?

結婚を考えると、子どもの頃の家庭を思い出して不安になる女性 恋愛・夫婦関係

彼から、

「来年くらいには結婚したいと思っている」

と言われた。

ずっと待っていた言葉のはずなのに、その日から気持ちが落ち着かなくなった。

彼の食べ方が気になる。

お金の使い方も、少し違う気がする。

彼の母親との距離が近すぎるのではないか。

一緒に暮らしたら、自分ばかり家事をすることになるのではないか。

「本当にこの人でいいのだろうか」

と考え始める。

ところが、彼が結婚の話をしなくなると、

「私との将来を考えていないの?」

と寂しくなる。

結婚したい。

けれど、結婚が現実になると逃げたくなる。

この矛盾が続くと、

「私は、本当は結婚したくないのかもしれない」

「彼をそれほど好きではないのかもしれない」

と思うことがあります。

もちろん、現在の彼との関係や結婚条件に、現実的な問題がある場合もあります。

ただ、彼との交際中はうまくいっていたのに、「家庭を持つ」という話が出た途端に強い抵抗が始まるなら、子どもの頃に持った家庭へのイメージが影響していることもあります。

結婚の話が出るまでは、うまくいっていた

恋人として付き合っている間は、彼との時間を楽しめていた。

週末に会う。

食事をする。

旅行へ行く。

それぞれの家へ帰り、自分の生活に戻る。

この距離なら、彼を好きでいられた。

ところが、結婚となると話が変わります。

一緒に住む。

お金を共有する。

家事を分担する。

家族や親戚と関わる。

病気や仕事の問題が起きたときには、二人で対応する。

恋人だった相手が「家族」になる。

そこで初めて、本人の中にある「家庭とは何か」というイメージがはっきりしてきます。

頭では、

「彼は父親とは違う」

「私は母親と同じ生き方をする必要はない」

と理解しています。

それでも心の奥では、

「家族になったら、相手は変わる」

「家庭に入ったら、自分の自由がなくなる」

「また誰かの世話をする生活になる」

と感じることがあるのです。

彼が嫌なのか、家庭を持つことが怖いのか

結婚を前に迷いが出たからといって、すべてを過去の家庭の影響にすることはできません。

彼との間に、本当に確認した方がよい問題があることもあります。

金銭感覚が大きく違う。

家事は女性がするものだと思っている。

話し合おうとすると不機嫌になる。

女性側だけが仕事や住まいを変える前提になっている。

子どもを持つかどうかについて考えが合わない。

こうした問題があるなら、結婚への抵抗には現実的な理由があります。

一方で、話し合える相手で、大きな問題が見当たらないのに、

「家族になる」

という言葉だけで強い恐れが出ることもあります。

その場合は、

「私は彼が嫌なのか」

だけでなく、

「私は家庭を持つことで、何が起きると思っているのか」

を見ていく必要があります。

子どもの頃、「家」はどのような場所でしたか

生まれ育った家庭が、誰にとっても休める場所だったとは限りません。

両親の喧嘩が多かった。

家族の誰かが、いつも不機嫌だった。

親の愚痴や夫婦の問題を聞かされていた。

家事やきょうだいの世話を早くから担当していた。

父親や母親が家庭に責任を持たなかった。

親の機嫌を悪くしないよう、言いたいことを我慢していた。

外から見ると普通の家庭でも、家の中では緊張していた人もいます。

そのような環境で過ごした人にとって、家庭は、

  • 誰かの様子を読み続ける場所
  • 自分の希望を後回しにする場所
  • 問題が起きても逃げられない場所
  • 家族の世話を引き受ける場所
  • 誰か一人の我慢によって成り立つ場所

として記憶されることがあります。

大人になった現在は、実家を出て、自分の生活を作っている。

仕事もしている。

一人で困ったことへ対応できる。

それでも、結婚によって再び「家庭」という場所に入ると考えると、子どもの頃の緊張が蘇ってくる。

家庭とは、我慢する場所だと思っている場合がある

母親がいつも疲れていた。

家事、仕事、子育てを一人で抱えていた。

父親への不満を口にしながら、

「結婚なんて、するものじゃない」

「女は我慢するしかない」

と言っていた。

その姿を見て育つと、結婚に対して、

「好きな人と生活すること」

よりも、

「女性が我慢して家庭を維持すること」

というイメージを持つことがあります。

すると、彼が結婚を望んでくれてもうれしさだけでは済みません。

「妻になったら、私も母のようになる」

「今の仕事や生活を諦めることになる」

「私が家族全員を支えなければならない」

という不安が出てきます。

現在の彼が家事をする人でも、話し合いのできる人でも、気持ちが追いつかないことがあります。

家庭という言葉に、過去の負担がすでに含まれているからです。

結婚すると、また自分が支える役になる気がする

子どもの頃から、家庭の中で頼られる側だった人もいます。

親の愚痴を聞く。

きょうだいの面倒を見る。

家事を手伝う。

家の雰囲気が悪くなれば、明るく振る舞う。

家族の問題が起きれば、自分が何とかしようとする。

本人には、

「必要だったからやった」

という感覚しかないかもしれません。

しかし、結婚を考えたとき、

「家族ができたら、また私が全部やることになる」

という恐れが出ることがあります。

彼が苦しそうにしていると、自分が支えなければならない気がする。

家事が残っていると、彼に頼むより自分でやった方が早いと思う。

彼の親の問題まで、自分が対応する未来を想像する。

まだ何も起きていないのに、結婚後の負担を一人で背負い始めます。

その負担から逃れるために、結婚そのものを遠ざけたくなる場合があります。

大人になっても、家庭の話になると子どもの頃の感覚が出ることがある

普段の生活では、十分に大人として行動できている人でも、家庭の話になると、子どもの頃の考え方や感じ方に戻ってしまうことがあります。

これは、その人が幼いという意味ではありません。

家庭という場所で深く傷ついた経験があるため、似た場面に強く反応しているのです。

現在の大人の自分は、

「嫌なことがあれば話し合える」

「自分で家を出ることもできる」

「経済的にも一人で暮らせる」

と知っています。

けれど、傷ついた子どもの目線では、

「家族になったら逃げられない」

「我慢しなければならない」

「誰も助けてくれない」

と感じています。

この二つが同時にあるため、

結婚したい。

でも、家庭は持ちたくない。

という矛盾が生まれます。

あの頃の家庭がつらかったことを認める

家庭へのイメージを変えていくために、まず必要なのは、当時の自分が経験したことを、そのまま認めることです。

怖かった。

悲しかった。

家に帰りたくなかった。

親の喧嘩を聞きたくなかった。

子どもなのに、親の相談役をしたくなかった。

家族の機嫌を取る生活が嫌だった。

なぜ自分ばかり我慢しなければならないのかと腹が立っていた。

その感情を、

「親も大変だったから」

「もっとひどい家庭もあるから」

とすぐに否定してしまわないことです。

親に事情があったとしても、子どもの自分が苦しかったことは変わりません。

本当は、家族に何をしてほしかったのか

怒りや不満を見ていくと、その奥に願っていたことが見えてくる場合があります。

本当は、両親に喧嘩をやめてほしかった。

親の愚痴を自分へ話さないでほしかった。

「これは大人の問題だから、あなたは心配しなくていい」と言ってほしかった。

失敗しても責めず、話を聞いてほしかった。

家事やきょうだいの世話を任せず、子どもとして過ごさせてほしかった。

家に帰ったとき、緊張せずに過ごしたかった。

誰かに守ってほしかった。

親に甘えたかった。

こうした気持ちは、現在になって初めて言葉になることがあります。

当時は、感じてもどうにもならないと思い、望むこと自体をやめていたからです。

何があれば、あの頃の自分は救われただろう

過去を理解し直すときに、

「何があれば、あの頃の自分は救われただろう」

と考えることは役に立ちます。

話を最後まで聞いてくれる大人。

怒鳴り声から離れられる場所。

親の問題を自分の責任にしなくてよいという言葉。

家族の世話をしなくてもよい時間。

嫌だ、悲しい、怖いと言っても責められない関係。

家に帰れば、自分の味方がいるという感覚。

これらが見えてくると、自分が作りたい家庭も具体的になります。

「温かい家庭がほしい」

という言葉だけでは、何を作ればよいのかわかりません。

けれど、

  • 意見が違っても怒鳴らない
  • 家事を一人へ集中させない
  • 一人で過ごす時間を認め合う
  • 夫婦の問題を子どもへ背負わせない
  • 相手の不機嫌を、もう一方がすべて処理しない
  • 困ったことは二人で話し合う
  • 家族であっても嫌なことは断れる

という形なら、これからの家庭に取り入れられます。

怒りを認めずに、親を理解しようとしない

親を許した方がよいと聞くと、

「どうして傷つけられた側が、許さなければならないの?」

と思う人もいるでしょう。

その反応は自然です。

怒りや悲しみを十分に扱っていない段階で、

「親にも事情があった」

「親も苦労していた」

と理解しようとすると、また自分の感情を後回しにしてしまいます。

子どもの頃も親を優先した。

大人になってからも親を理解するため、自分を後回しにする。

これでは、当時と同じことを繰り返します。

まずは、

「私は怒っていた」

「私は傷ついた」

「親の問題を背負わされたことが嫌だった」

という感情を受け止める必要があります。

感情を表現し、解放していく中で、少しずつ親の人生を見る余裕が生まれることがあります。

親を許すことは、されたことを正当化することではない

ここでいう許しは、親のしたことを正しかったことにする意味はありません。

つらかった出来事を、なかったことにもしません。

親を好きになる必要もありません。

仲のよい親子になることとも違います。

許しとは、

「絶対に許せない」

と握りしめていることで、今も止まっている自分の人生を楽にしていくことです。

親には、親の事情があった。

親自身も苦しい家庭で育ったのかもしれない。

夫婦関係や経済的な問題で、余裕を失っていたのかもしれない。

子どもの気持ちを受け止める力を持っていなかったのかもしれない。

そうした事情を理解しようとすることはできます。

同時に、

「それでも、あの頃の私は傷ついた」

「子どもの私が背負うことではなかった」

と認めることもできます。

親の事情を理解することと、親の責任をなくすことは同じではありません。

親を許せないことで、自分の幸せまで止めていないか

親を許せない気持ちが強く残っていると、自分が幸せになることにも抵抗が出る場合があります。

自分だけ温かい家庭を作ったら、過去の苦しさがなかったことになりそう。

幸せになったら、親のしたことを認めるようで悔しい。

親とは違うと証明するため、完璧な家庭を作らなければならない。

結婚しないことで、親の結婚を否定し続けたい。

親を許せないのに、自分だけ幸せになってよいのかわからない。

本人が、こうしたことをはっきり考えているとは限りません。

結婚が近づくと関係を壊したくなる。

家庭を持つことを考えると、強い怒りが出たり、気持ちが重くなる。

うまくいきそうな相手より、結婚できない相手を選んでしまう。

そのような形で現れることがあります。

親を許せないから結婚できない、と決めつけることはできません。

ただ、親への怒りにとらわれ続けていることで、自分の幸せまで止めている部分があるなら、許しは自分の人生を取り戻すために必要になります。

親の事情と、子どもの自分が受けた傷を分ける

感情を受け止めた後で、現在の大人の視点から親の人生を見ていきます。

親は、どのような家庭で育ったのか。

親にとって、結婚とは何だったのか。

親は何を怖がっていたのか。

誰にも相談できず、苦しさを子どもへ向けていたのか。

親自身も、家族のために我慢することしか知らなかったのか。

親の人生を理解すると、

「親も親で苦しかったのだろう」

と思えることがあります。

だからといって、

「子どもにぶつけても仕方がない」

とはなりません。

親の人生は親のもの。

子どもの自分が受けた傷は、自分のもの。

二つを分けます。

親が自分を十分に守れなかったのは、子どもの自分に価値がなかったからではありません。

親の中に、守る力や余裕が足りなかったのです。

この理解が、親を許す気持ちへつながることがあります。

過去の家庭と、これから作る家庭を分ける

親を理解し、許しを進めることは、実家を理想の家族へ変えることではありません。

過去は変わりません。

親が現在も変わらないこともあります。

距離を置いた方がよい親もいます。

それでも、自分の中にある家庭のイメージは変えていくことができます。

家庭とは、必ず誰かが我慢する場所ではない。

結婚すれば、自分の人生がなくなるとは限らない。

家族になっても、嫌なことは断れる。

一人で過ごす時間を持つこともできる。

問題が起きたとき、子どもに背負わせず、大人同士で話し合える。

過去の家庭では得られなかったものを、現在の自分が新しい家庭に取り入れることができます。

現在の彼や結婚条件に問題がないかも確認する

家庭への悪いイメージを変えれば、どの結婚でも受け入れられるわけではありません。

現在の相手が、

  • 家事や育児を女性の役割だと思っている
  • 話し合いへ参加しない
  • 怒ることで要求を通そうとする
  • 女性の仕事を軽く扱う
  • 義家族からの要求を当然だと思っている
  • お金や異性関係に大きな問題がある

のであれば、その違和感は過去の反応だけではありません。

結婚への恐れを整理すると、

「これは過去の家庭での経験や記憶が影響している」

という部分と、

「これは現在の彼との間に実際にある問題」

を分けやすくなります。

過去を扱うことは、現在の相手を無条件に信じることではありません。

現在の自分が、現実をより正確に判断するためにも必要なのです。

自分は、どのような家へ帰りたいのか

結婚するべきか。

この人を選ぶべきか。

その答えを急いで出す前に、

「自分は、どのような家へ帰りたいのか」

を考えてみる。

疲れた日は、家事を減らせる家。

意見が違っても、相手の存在まで否定しない家。

一人になりたい日には、その時間を認め合える家。

困ったときには、どちらか一人に任せず相談できる家。

うれしいことがあれば、遠慮せず話せる家。

家族の機嫌を整えるため、自分の気持ちを隠さなくてよい家。

子どもの頃に欲しかったものが、これから作る家庭の基準になることがあります。

過去の家庭が苦しかったからこそ、家庭の中で何が人を傷つけるのかを知っている。

同時に、何があれば人は家で休めるのかも、少しずつ理解していくことができます。

過去の家庭に、自分の結婚を決めさせない

結婚したいと思っているのに、家庭を持つ話が出ると逃げたくなる。

相手の欠点ばかり気になり、気持ちがわからなくなる。

同じことが何度も繰り返されているなら、結婚相手の選び方を学ぶだけでは整理しにくいことがあります。

カウンセリングでは、「家庭」と聞いたときに何を思い浮かべるのか、子どもの頃に家庭の中でどの役割を担っていたのか、当時本当は何を感じていたのかを見ていきます。

怖かったこと、腹が立っていたこと、誰にも言えなかった寂しさを受け止め、表現し、解放していくことがあります。そのうえで、親の人生や限界を現在の視点から理解し、親の事情と自分が受けた傷を分けていきます。

許しは、親のためだけに行うものではありません。

親への怒りや、過去の家庭への絶望によって、これからの結婚や幸せまで決められないようにするためのものです。

親のしたことは変えられません。

過去に戻って、理想の家庭で育ち直すこともできません。

それでも、過去の家庭によって作られたイメージを理解し直し、これから自分がどのような家を作るかは選べます。

「家庭とは、あの家のようなもの」

という理解から、

「家庭には、さまざまな作り方がある」

という理解へ。

傷ついた子どもの自分の気持ちを置き去りにせず、大人になった自分がこれからの生活を選ぶ。

それが、過去の家庭に自分の結婚を決めさせないということなのだと思います。

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