夫の浮気がわかったとき、妻の中には何度も同じ疑問が浮かびます。
なぜ浮気したのか。私に何が足りなかったのか。浮気相手の何がよかったのか。私より、その人の方がよかったのか。
浮気された側にとって、この疑問はとてもつらいものです。
腹が立つだけではありませんし、悲しいだけでもありません。
「私がもっと優しくしていればよかったのかな」「私が女として見られなくなったからなのかな」「私では足りなかったのかな」と、自分の価値まで否定したくなることもあります。
夫の浮気について考えるとき、まず分けておきたいことがあります。
浮気をしたという行動の責任は、浮気をした本人にあります。
夫婦関係に問題があったとしても、寂しかったとしても、不満があったとしても、それで浮気をしてよいことにはなりません。
ただ、「浮気した夫が悪い」で話を終わらせてしまうと、なぜ浮気が起きたのかはわからないままです。夫婦の間で何が起きていたのか、夫は何を足りないと感じていたのか、妻は夫との関係の中で何を足りないと感じていたのか。そこまで考えることで、これから夫婦関係をどうしていくのかを考えやすくなります。
浮気するということは、何かを外に求めているということ
浮気の背景には、何かが足りないと感じていることがあります。
刺激がほしかった。認められたかった。男として見られたかった。話を聞いてほしかった。やさしくしてほしかった。家庭とは違う自分でいられる場所がほしかった。
何を足りないと感じていたのかは、夫婦によって違います。
たとえば、妻が子どものことで精いっぱいになり、夫婦で話す時間がほとんどなくなっていたとします。夫は「自分には関心を向けてもらえない」「自分の話を聞いてもらえない」と感じていたかもしれません。
そこへ、自分の話をよく聞いて、「大変だったね」と言ってくれる女性が現れた。その女性は、夫にとって「自分に関心を向けてくれる人」として魅力的に感じられるでしょう。
また、妻が夫を頼りなく感じ、何かあるたびに馬鹿にするような言い方をしていたなら、夫は「認めてもらえていない」と感じていたかもしれません。そこで外の女性から「すごいですね」「頼りになります」と言われたら、その言葉に強く惹かれる人もいます。
夫婦の間で足りないと感じているものを、外の異性との関係で得ようとする。これを、不足原則という考え方で捉えることができます。
つまり、浮気相手を見ると、夫が夫婦の間で何を足りないと感じていたのかがわかることがあるのです。
不足していたからといって、妻が悪いわけではない
ここまで読むと、「それなら、私が夫に与えなかったから浮気されたということ?」と思う方もいるでしょう。
そういう話ではありません。
妻が夫にやさしくできなくなっていたとしても、そこには理由があったはずです。夫も妻の話を聞いてくれなかったのかもしれませんし、妻が家事や子育てを一人で抱え、夫を気遣う余裕などなかったのかもしれません。
夫から馬鹿にされるような言い方をされ続けて、妻の側も傷ついていたかもしれません。夫が「認めてもらえなかった」と感じていたとしても、妻も「私は大切にされていなかった」と感じていたかもしれないのです。
ですから、不足があったからといって、「妻がもっと与えればよかった」「妻が夫を満たさなかったから浮気された」ということではありません。
夫婦の間で何かが足りなくなっていた。
どちらか一人だけが原因とは限りません。
夫婦の問題はフィフティフィフティ、でも浮気の責任は別
私は、夫婦関係の問題についてはフィフティフィフティだと考えています。
これは、「どちらも同じだけ悪い」という意味ではありません。二人の関係の中で起きてきたことには、夫にも妻にも、それぞれできたことがあったという意味です。
夫が寂しかったのであれば、妻との間でそれを伝えることができたかもしれません。妻が夫に腹を立て、冷たくなっていたのであれば、妻側にもそうならざるを得なかった理由があるでしょう。
夫は妻に何を与えていなかったのか。妻は夫に何を与えていなかったのか。二人はいつから話さなくなったのか。何を諦めるようになったのか。
そこは、夫婦二人の問題として考える必要があります。
ただし、浮気したという行動までフィフティフィフティになるわけではありません。
寂しかったなら、寂しいと言うこともできた。不満があったなら、話し合うこともできた。夫婦関係を続けられないほど苦しかったなら、そのことについて話すこともできた。
その中で、嘘をついて外に別の関係を作ったのであれば、その行動の責任は浮気した本人にあります。
ここを分けて考えることは、とても大切です。
良い・悪いだけで夫婦関係を考えると、その先に進みにくくなる
浮気がわかった直後なら、「浮気した夫が悪い」と思うのは当然です。
実際、浮気という行動について言えば、夫に責任があります。
ただ、夫婦関係を続けたいと思ったとき、「どちらが悪いか」「どちらが正しいか」だけで夫婦を考え続けると、その先に進みにくくなることがあります。
「あなたが全部悪い。私は何も悪くない」
と言われ続ければ、夫の中にも悔しさが出てくるでしょう。「自分だってずっと我慢してきた」「全部自分だけが悪いことにされた」と感じる人もいます。
その気持ちが浮気を正当化するわけではありません。
でも、どちらかを間違っている人にして終わらせるだけでは、夫婦の関係はよくならないのです。
再構築を考えるなら、「なぜ夫は外に行ったのか」だけではなく、「その前から二人の間で何が起きていたのか」まで考える必要があります。
浮気相手を見ると、不足していたものがわかることがある
夫から、
「彼女は話を聞いてくれた」
「彼女はやさしかった」
「彼女といると楽だった」
「彼女は自分を認めてくれた」
などと言われたら、腹が立つでしょう。
「だから何?」
「それで浮気していいの?」
「私が悪いと言いたいの?」
と思うのは当然です。
それでも、夫婦関係をやり直したいのであれば、悔しいけれど、その言葉には大事な情報が入っています。
「話を聞いてくれた」というなら、夫は話を聞いてもらうことを求めていた。
「やさしかった」というなら、やさしく接してもらうことを求めていた。
「頼りにされた」というなら、自分を認めてもらうことを求めていた。
夫の言葉には、自分の浮気を正当化したい気持ちが入っていることもあります。それでも、「何を外に求めていたのか」というところには、本音が出ていることがあります。
だから、浮気相手を見ると、夫婦の間で何が不足していたのかがわかることがあるのです。
もちろん、だから妻が浮気相手のようになればいい、という話ではありません。
夫は浮気相手より、「その人といるときの自分」を求めていたのかもしれない
妻はどうしても浮気相手と自分を比べてしまいます。
どんな女性なのか。自分より若いのか。自分よりきれいなのか。自分よりやさしいのか。夫は自分よりその女性を好きなのか。
ですが、夫が求めていたのは、その女性そのものだけとは限りません。
その女性と一緒にいるときの自分が好きだったということがあります。
褒められる自分。必要とされる自分。男として見られる自分。家庭の責任から離れていられる自分。弱音を聞いてもらえる自分。
浮気相手との関係では、生活の全部を一緒に背負っていません。家計のこと、子どものこと、親のこと、毎日の家事、疲れた日の不機嫌。夫婦なら避けて通れない日常の多くを共有していません。
夫は自分の都合のよい部分を出し、相手も夫の限られた部分を見ています。だからこそ、その場所では「いい自分」でいられるのです。
浮気相手を嫌いだったということではありません。好きだった人もいるでしょう。
ただ、「その人だから」ということだけではなく、「その人といると、自分がどんな自分でいられたのか」ということも、浮気を考えるうえでは大切です。
妻が浮気相手のようになる必要はない
夫が浮気相手にやさしさを求めていた。
それなら妻も、もっとやさしくしましょう。
そんな単純な話ではありません。
浮気相手に勝つ必要もありませんし、浮気相手の真似をする必要もありません。
考えたいのは、「私はこれから、夫とどんな関係を作りたいのか」ということです。
もし夫婦の間で思いやりが減っていたと思うなら、自分ができる範囲で思いやりを増やす。会話がなくなっていたと思うなら、以前より話す時間を持ってみる。夫を馬鹿にするような言い方が増えていたと思うなら、そこは変えていく。
これは、「私が悪かったから直す」ということではありません。
自分が望む夫婦関係を作るために、自分の担当するところを変えるということです。
そして当然、夫にも同じことが必要です。
妻が寂しかったこと。妻が何を我慢してきたのか。妻は夫から何をもらえずに苦しんでいたのか。浮気によって妻をどれほど傷つけたのか。
夫もそこに向き合う必要があります。
妻だけが不足を埋めようとすれば、また妻ばかりが頑張る関係になってしまいます。
ですが、夫婦同時に始められるわけでもなかったりします。
それが理不尽さを感じ、とても悔しいと感じる部分です。
浮気相手と別れただけでは、再構築は終わらない
夫婦関係をやり直したいと考えたとき、まず浮気相手との関係を終わらせることは必要です。
ただ、それだけで以前の夫婦に戻れるわけではありません。
夫が何を外に求めていたのか。妻は何を夫からもらえずに苦しんでいたのか。二人の間でいつから話さなくなったのか。何を我慢し、何を諦めてきたのか。
そこが変わらなければ、浮気相手がいなくなっても、夫婦の問題は残ります。
だから再構築では、「浮気相手と別れたか」だけではなく、浮気が起きる前から二人の間にあった問題にも向き合う必要があります。
ただし、それを浮気発覚直後からすぐに考えるのは難しいでしょう。
傷ついたばかりの妻に、「夫婦の問題も考えましょう」と言われても、「浮気された私が、なぜそこまでしなければならないの」と思って当然です。
まずは、浮気によって傷ついた自分の気持ちを扱う時間が必要です。
その後で、関係を続けたいと思ったときに、二人の関係について考えていけばいいのです。
再構築で夫に必要なのは、罪悪感から逃げ続けないこと
再構築では、妻だけが変わればいいわけではありません。
夫にとって大きな課題になるのが、自分が浮気したことで持つことになった罪悪感です。
自分が妻を傷つけた。家族を傷つけた。嘘をついた。信頼を壊した。
それを本当に認めるのは、簡単なことではありません。
罪悪感が強いほど、妻の前から逃げたくなる人もいます。妻の言い方を責めたり、「もう終わったことだ」と話を切ったり、「自分にも言い分がある」と言いたくなったりすることもあります。
けれども再構築をしていくのであれば、いつかは、「自分は妻を傷つけた」ということから逃げずにいられるようになる必要があります。
そして、「本当に申し訳なかった」と妻に言えるようになること。
これは、口先で「ごめん」と言えば終わる話ではありません。
自分がしたことを認め、妻がどれほど傷ついたのかを受け止め、それでも妻の前から逃げずにいられるようになることです。
カウンセリングをしていると、そこまでたどり着くのに数年かかる人もいます。
それくらい、浮気後の再構築には時間がかかってしまうのです。
とは言っても、数年間ずっと苦しいわけではありません。
取り組むべき事に取り組んでいくことで、徐々に気持ちは楽になっていきます。
「なぜ浮気したのか」の答えを、自分を責めるために使わない
夫がなぜ浮気したのかを知りたいと思うと、「私に何が足りなかったのか」という疑問になりやすいです。
でも、本当に考えたいのは、夫は何を足りないと感じ、なぜそれを夫婦の外に求めたのかということです。
夫婦の間に不足していたものがあったなら、妻側にも変えられるところはあるでしょう。同時に、夫側にも変えなければならないところがあります。
そして、浮気という行動の責任まで妻が引き受ける必要はありません。
夫婦の問題は、二人の間で作られてきたものです。
浮気という行動は、浮気した本人が選んだものです。
この二つを分けられるようになると、「全部私のせいだった」にも、「全部夫だけの問題だった」にも片寄らずに、二人の関係を考えられるようになります。
浮気された直後は、そこまで考えられなくても大丈夫です。
まずは、傷ついた自分の気持ちを大切にする。
そして関係を続けたいと思ったときに、夫が何を外に求めていたのか、自分は夫との関係で何が足りないと感じていたのかを考えていく。
その先に、以前と同じ夫婦へ戻るのではなく、これまでとは違う関係を作っていく可能性があります。
一人で考えていると、「私が悪かったのかな」「夫が全部悪いのかな」「浮気相手の方がよかったのかな」と、同じところを行ったり来たりしてしまうことがあります。
そんなときは、夫を許すか離婚するかを決める前に、自分が何に傷つき、夫婦の間で何が起きていたのかを一緒に考えていくこともできます。
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