次のようなことはないでしょうか。
彼との将来を考えた方がよいとわかっているのに、仕事が忙しいことを理由に何年も話せていない。
夫に伝えたい不満があるのに、
「子どものことが落ち着いてから」
「今は夫も疲れているから」
と先へ延ばしている。
転職したいと思いながら、資格を取ったり情報を集めたりするばかりで、求人には応募していない。
一番好きな人や第一希望の場所には近づかず、断られてもそれほど傷つかずに済みそうな方を選んでいる。
こうしたことは、それぞれ別の問題に見えます。
けれども、その奥に「回避癖」という同じ反応が隠れている場合があります。
ここでいう回避癖とは、本当に向き合いたいことや、向き合った方がよい問題に近づいたとき、別の用事や問題へ意識を移し、そこで感じるはずだった感情を避ける反応です。
何もせずに逃げるとは限りません。
むしろ、仕事を頑張る。
準備をする。
情報を集める。
誰かの問題を解決する。
別の相手や場所を選ぶ。
そのように行動しているため、本人にも回避しているという自覚がないことがあります。
回避癖は、自分では気づきにくい
回避癖がある人も、
「私は大切な問題から逃げている」
とは考えていないことがほとんどです。
実際に仕事は忙しい。
相手も疲れている。
今は家族の問題がある。
まだ準備が足りない。
もう少し情報を集める必要がある。
どれも納得できる理由です。
だからこそ、回避に気づきにくくなります。
たとえば、彼との将来を考えようとすると、急に仕事の問題が気になり始める。
夫に不満を伝えようとした日に、部屋の片づけや子どもの予定を優先する。
転職先を探そうとすると、先に資格を取った方がよいと思い始める。
第一希望へ申し込もうとすると、
「今の自分には、まだ早い」
という気持ちが出てくる。
一つひとつには、もっともな理由があります。
ただ、理由が変わりながら、同じ問題だけが何年も残っているなら、その奥に向き合うことへの恐れがあるのかもしれません。
回避癖は「何もしないこと」とは限らない
回避している人が、怠けているように見えるとは限りません。
むしろ、忙しく動いていることがあります。
彼とのことを考える代わりに、仕事へ力を注ぐ。
転職する代わりに、勉強や資格取得を続ける。
本命へ近づく代わりに、別の人との関係を進める。
夫との問題を考える代わりに、子どもや親の世話へ意識を向ける。
本人は、必要なことを一生懸命やっています。
そのため、
「これだけ頑張っているのだから、逃げているはずがない」
と思うこともあります。
けれども、その頑張りによって、本来向き合いたかった問題を考えずに済んでいることがあるのです。
別のことへ取り組む行動力がないのではありません。
最も大切な問題に近づくと、そこで感じるものが大きいため、行動力を別の方向へ使っているのです。
パートナーとの大切な話を避ける
回避癖は、恋愛や夫婦関係に現れることがあります。
彼が結婚についてどう考えているのか、本当は聞きたい。
このまま待つのか、別の道を選ぶのか、自分でも考えたい。
ところが、
「彼の仕事が落ち着いてから」
「最近は関係がうまくいっているから」
「せっかく会えた日に重い話をしたくないから」
と、話を延ばします。
聞かなければ、期待を残しておけます。
彼に結婚する意思がないと知ることもありません。
別れるかどうかを決める必要もありません。
夫婦関係でも同じことが起こります。
家事の負担がつらい。
夫の言葉に傷ついた。
お金の使い方に不安がある。
会話が減り、このままでよいのかと感じている。
それでも、
「今は夫の仕事が忙しい」
「子どもの受験が終わってから」
「休みの日に揉めたくない」
と話し合いを先へ延ばします。
話さなければ、その日は喧嘩になりません。
現在の生活も続きます。
しかし、話さなかった不満や悲しさまで消えるわけではありません。
パートナーの回避癖に困ることもある
自分ではなく、彼や夫に回避癖がある場合もあります。
結婚の話をすると、
「今は仕事が忙しい」
「まだ考えられない」
と話を終える。
夫婦の問題を話そうとすると、黙る。
話題を変える。
冗談でごまかす。
突然不機嫌になる。
「また今度」と言いながら、次に話す日を決めない。
一度だけなら、その日は本当に余裕がなかったのかもしれません。
けれども、話題や時期を変えても毎回同じように終わるなら、相手も何かを避けている可能性があります。
相手から責められること。
自分の問題を認めること。
答えが出ない自分を見ること。
相手の怒りや悲しみを聞くこと。
関係が変わること。
そのようなことが怖くて、話し合いから離れている場合があります。
相手が話し合いに参加しない責任まで、こちらが引き受ける必要はありません。
どれだけ言葉を選んでも、本人に向き合う意思がなければ、二人で話し合うことはできないからです。
相手が避けている間に、自分も大事なことを後回しにしてしまうことがある
彼や夫が大切な話から逃げているのは、実際に起きていることかもしれません。
ただ、
「彼が決めてくれない」
「夫が話し合ってくれない」
という問題を長く抱えているとき、自分にも回避が起きている場合があります。
それは、
「相手が向き合わないなら、自分はこの関係をどうするのか」
という問題です。
彼が決めるまで待ち続けるのか。
自分が待てる期限を伝えるのか。
話し合いに参加しない夫と、どのような関係を続けるのか。
二人だけでは難しいため、第三者へ相談するのか。
今の状態が変わらなくても、この生活を選ぶのか。
相手の答えを待っている間は、自分で選ばずに済みます。
相手が回避しているという現実と、自分も選択から距離を取っている可能性は、分けて考える必要があります。
転職したいのに、準備ばかり増えていく
回避癖は、仕事にも現れます。
本当はやってみたい仕事がある。
今の職場を離れたいとも思っている。
けれども、
「まだ経験が足りない」
「先に資格を取った方がよい」
「今の仕事が忙しく、転職活動をする余裕がない」
と考え、準備ばかりが増えていく。
資格や経験が必要な仕事もあります。
現在の生活を考えれば、すぐに辞められない場合もあります。
ただ、資格を一つ取ると、今度は別の勉強が必要に思える。
仕事が落ち着くと、収入が下がる不安が出てくる。
条件のよい求人を見つけても、応募するには自信が足りないと感じる。
このように、動かない理由だけが変わり続ける場合があります。
転職すれば、今までの生活が変わります。
新しい職場で通用するかわからない。
今より条件が悪くなるかもしれない。
失敗したとき、
「あのまま残っていればよかった」
と後悔する可能性もあります。
転職を避けているというより、転職した後に感じる不安や後悔を避けている場合があるのです。
本命や第一希望を選ばない
一番望んでいるものほど、選べなくなることもあります。
一番好きな人には近づけないのに、それほど気持ちが動かない人とは関係を進められる。
第一希望の仕事には応募せず、採用されやすそうな仕事を選ぶ。
本当に通いたい講座や場所があるのに、似た別の場所を選ぶ。
第二希望なら、うまくいかなくても、
「本当に欲しかったものではないから」
と思えます。
本命を選んで断られたら、自分がどれほど望んでいたのかが明らかになります。
失ったときの悲しさも大きくなります。
反対に、望みがかなったとしても、これまでの生活が変わります。
責任が増える。
周囲から期待される。
後戻りできないように感じる。
回避癖は、失敗を避けるためだけに起きるものではありません。
本気になることや、望みがかなった後の変化を避けるために起きることもあります。
回避すると、その瞬間は楽になる
回避癖が続くのは、回避することで気持ちが楽になるからです。
彼に結婚の意思を聞かなければ、望まない答えを聞かずに済む。
夫へ不満を伝えなければ、拒絶されたり喧嘩になったりせずに済む。
転職へ応募しなければ、不採用にならない。
本命へ近づかなければ、はっきり断られずに済む。
話さない。
決めない。
申し込まない。
その瞬間、気持ちは少し楽になります。
「また明日考えよう」
「もう少し準備してからにしよう」
と思うことで、今日感じるはずだった怖さから離れられるのです。
回避には、つらい感情から自分を守る働きがあります。
だから、回避してきた自分を責めるだけでは、同じことが続きやすくなります。
楽になった後にも、問題は残る
回避すれば、その場の苦しさは減ります。
しかし、向き合わなかった問題までなくなるわけではありません。
彼との将来は曖昧なままです。
夫婦の不満も残ります。
転職したい気持ちも消えません。
本命を選ばなかった違和感も続きます。
しばらくすると、再び同じ問題が浮かんできます。
そこでまた別の理由を見つけ、先へ延ばす。
この繰り返しが長くなると、
「あのとき話していれば」
「もっと早く動いていれば」
「本当に望んでいた方を選べばよかった」
という後悔が出ることがあります。
さらに、
「私は肝心なときに動けない」
「また逃げるのではないか」
「自分の判断を信用できない」
と感じるようになることもあります。
回避は一時的に気持ちを楽にします。
長く続ければ、後悔や自己不信という別の苦しさが生まれる場合があります。
避けているのは、問題よりも感情
回避している人は、決断や話し合いそのものを怖がっているように見えます。
実際には、その先で感じる感情を避けている場合があります。
- 拒絶される怖さ
- 期待していた未来がなくなる悲しさ
- 長く待ってきたことへの後悔
- 本当は腹が立っていたと認めること
- 自分には力がないと感じること
- 一人になる寂しさ
- 自分で決めた結果へ責任を持つ怖さ
- 本当に望んでいたと認める恥ずかしさ
- 望みがかなった後に人生が変わる怖さ
考えない間は、これらの感情にも触れずに済みます。
だから、何をすればよいかわかりやすい仕事や用事へ向かいます。
仕事を終わらせる。
家事をする。
情報を集める。
誰かの相談に乗る。
忙しく動いている間は、自分の感情を感じずに済むからです。
本当に望んだことで傷ついた経験
回避癖の背景には、過去の経験が影響していることがあります。
欲しいものを口にしたら否定された。
自分の希望を伝えると、わがままだと責められた。
挑戦して失敗したとき、叱られた。
進路を自分で決めようとしたら、親が不機嫌になった。
本気で好きな人へ近づき、深く傷ついた。
夫に本音を伝えたら、責め返された。
家族の事情を優先し、自分の望みを諦めてきた。
そのような経験から、
「望まなければ、失望せずに済む」
「決めなければ、間違えずに済む」
「話さなければ、これ以上傷つかない」
と理解したのかもしれません。
本人は、過去の出来事を思い出しながら回避しているわけではありません。
現在は、
「今は時期が悪い」
「まだ準備が足りない」
「相手の状況が落ち着いてから」
と感じています。
その判断の奥で、以前感じた怖さや悲しさ、怒り、悔しさが動いている場合があるのです。
すべての先送りが回避とは限らない
今すぐ動かない方がよいこともあります。
生活費を確保してから転職する。
相手が落ち着いて話せる日を選ぶ。
必要な資格を取ってから応募する。
体調が戻るまで決断を待つ。
これらは、現実を考えた判断です。
回避との違いは、動かない理由が明確で、その後の予定が決まっているかどうかです。
「生活費を半年分準備できたら応募する」
「来週の日曜日に夫と話す」
「資格試験が終わったら、三社へ応募する」
というように、次の行動が決まっているなら、現在は待つと自分で選んでいます。
回避が起きているときは、
「もう少し落ち着いてから」
「自信がついてから」
「よい時期が来たら」
と、条件が曖昧なままです。
そして、一つの条件が整うたびに、次の理由が現れます。
向き合うとは、今すぐ答えを出すことではない
回避癖に気づくと、
「今すぐ話さなければ」
「すぐに転職しなければ」
「本命へ突進しなければ」
と自分を追い込みたくなることがあります。
向き合うことは、急いで結論を出すことではありません。
まず確認したいのは、
- 本当は何に向き合いたいのか
- そのことを考えると、何をしたくなるのか
- 代わりにどの問題へ意識を向けているのか
- 動いたら、何が起きると思っているのか
- 最も感じたくないものは何か
- 回避することで何を守っているのか
- 回避を続けることで何を失っているのか
ということです。
たとえば、夫へすぐ話すことが難しくても、自分が何に傷ついたのかを整理することはできます。
今日転職へ応募しなくても、応募を止めている怖さを言葉にできます。
本命へすぐ近づけなくても、なぜ第二希望なら選べるのかを考えることはできます。
逃げずに向き合うとは、恐れがなくなるまで待つことではありません。
恐れがあることを認めながら、別の問題へ移り続けず、自分の人生にとって大切なことから目を離さないことです。
回避癖は、カウンセリングにも現れることがある
回避癖は、カウンセリングを受けようとするときにも現れることがあります。
受けたいと思いながら、
「もう少し自分で整理してから」
「仕事が落ち着いてから」
「まだ相談するほどではないから」
と先へ延ばす。
相談することで、自分の本音や、避けていた問題が見えてしまうことが怖い場合もあります。
また、カウンセリングを受けても、本当に相談したかった問題には触れず、仕事や周囲の人の話を続けることがあります。
話したいことを忘れたわけではありません。
その問題へ近づいたときに出てくる感情を避けるため、話しやすい別の問題へ移っているのです。
こうした反応も、責める必要はありません。
なぜそこへ近づくことが怖いのかを見ることも、カウンセリングで扱える大切な部分です。
回避してきたことには、自分を守る理由があります。
ただ、これからも同じ問題を避け続けなければならないわけではありません。
問題へ近づいたときに出てくる感情や、過去に本気で望んで傷ついた経験を整理すると、怖さだけに現在の選択を決められにくくなります。
同じ理由を作りながら大切な問題を後回しにしてしまうときや、パートナーの回避に困り、自分がどうすればよいかわからなくなっているときは、カウンセリングをご利用いただけます。
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