「今日は何も買わない」
そう決めて通販サイトを閉じたはずなのに、仕事で疲れた夜に届いたのは、タイムセールの通知。
何となく画面を開くと、
「在庫あと3点」
「クーポンの期限は本日まで」
という文字が並んでいる。
本当に必要かと聞かれたら、今すぐ必要なものではない。似たものも家にある。
それでも、「この価格なら買ってもいい」「これがあれば気分が変わりそう」と理由を作り、購入ボタンを押す。
買った直後は、少し気持ちが明るくなる。ところが翌朝になると、
「また買ってしまった」
という後悔が残る。
頭では、一晩考えたほうがよいとわかっている。それでも、その場になると購入を止められないのはなぜでしょうか。
この記事では、通販で衝動買いが起きる仕組みと、買い物によって変えようとしている感情を整理します。
・通販で「今すぐ買わなければ」と感じる理由
・買った瞬間に気持ちが軽くなる背景
・商品が欲しい気持ちと、気分を変えたい気持ちを見分ける方法
- 衝動買いは、商品を見る前から始まっていることがある
- 「残りわずか」が、欲しいかどうかを考える時間を奪う
- 「お得だから買う」と、支払ったお金の実感が薄くなる
- レビューを読むうちに「買わない理由」より「買う理由」を探し始める
- 買った瞬間に、今日の自分が報われた気がする
- 「自分へのご褒美」が必要になるほど、我慢が続いていないか
- 衝動買いはするのに、本当に欲しいものにはお金を使えないこともある
- 届いた途端に興味が薄れるのはなぜか
- 欲しいものを自由に選べなかった経験が影響することもある
- 衝動買いをしたくなったときに確認すること
- 買わないための仕組みは、感情を確認する時間を作る
- 方法を知っていても、買うことをやめられないとき
- まとめ|欲しい商品と、変えたい気分を分けて考える
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衝動買いは、商品を見る前から始まっていることがある
衝動買いというと、魅力的な商品を見つけたため、急に欲しくなったように思えます。
けれども、購入の流れは、サイトを開く前から始まっていることがあります。
仕事で嫌なことがあった。
家族のために動いたのに、誰にも気づいてもらえなかった。
一日中、人の都合に合わせていた。
やることばかりで、自分が楽しめる時間がなかった。
疲れているのに、まだ家事が残っている。
そうした夜に通販サイトを開くと、商品を見ること自体が気分転換になります。
きれいな服。
便利そうな家電。
生活が整いそうな収納用品。
使えば自分が変わりそうな美容用品。
画面を見ている間は、今日あった嫌なことから意識が離れます。
商品が届いたあとの生活を想像すると、
「これがあれば、少し楽になれそう」
「今よりきれいな部屋になるかもしれない」
「この服を着たら、今の自分とは違う気分になれそう」
という期待が生まれます。
この段階で欲しくなっているのは、商品だけではありません。
商品を手に入れたあとの気分も一緒に買おうとしているのです。
「残りわずか」が、欲しいかどうかを考える時間を奪う
「在庫あと3点」
「タイムセール終了まで10分」
「この商品を見ている人がほかにもいます」
このような表示を見ると、商品が必要かを考える前に、
「今決めなければ、手に入らなくなる」
という焦りが出ます。
本来、買い物で確認したいのは、
「私はこれを使うのか」
「今の生活に必要なのか」
ということです。
ところが限定表示を見た瞬間、判断基準が変わります。
「買うかどうか」より、
「失ってもよいか」
を考え始めるのです。
必要のないものでも、手に入れられなくなると聞くと、急に価値が上がったように見えます。
期限がなければ三日考えたかもしれない商品を、あと10分で決めようとします。
焦っているときは、使う場面や保管場所まで考える余裕がありません。
購入後に困る可能性より、今逃すことへの焦りが大きく感じられます。
「お得だから買う」と、支払ったお金の実感が薄くなる
送料無料まで、あと800円。
二つ買えば20%引き。
今日なら2,000円分のポイントが戻る。
このような条件を見ると、予定になかった商品を追加することがあります。
本人の感覚では、
「800円の商品を買った」
より、
「送料を払わずに済んだ」
という満足のほうが強くなります。
二つ目が必要だったかより、割引を利用できたことに意識が向きます。
ポイントを得るために支払った金額より、受け取るポイントのほうが印象に残ります。
お得に買えたことと、必要なものを買えたことは同じではありません。
3,000円の商品を買わなければ、支出は0円です。
ところが30%引きで2,100円になると、
「900円得をした」
と感じます。
実際には2,100円を使っています。
それでも、値引きによって「買ってもよい理由」ができるため、欲しい気持ちに許可を出しやすくなるのです。
レビューを読むうちに「買わない理由」より「買う理由」を探し始める
購入を迷ったとき、レビューを確認する人は多いでしょう。
使いやすさや品質を確認するために、レビューは役立ちます。
ただ、すでに気持ちが購入へ傾いているときは、情報を集める目的が変わることがあります。
「これを買っても失敗しない」
と確信するためにレビューを探すのです。
高評価を読めば、
「やはり買う価値がある」
と思います。
低評価を見ても、
「この人の使い方が合わなかっただけかもしれない」
と考えます。
自分と似た生活をしている人の感想を見つけると、
「この人が使えているなら、私にも必要」
という気持ちになります。
レビューを読んで冷静に判断しているつもりでも、実際には購入への許可を集めている場合があります。
確認したいのは、
「買わないと決めるための情報も、同じように見ているか」
ということです。
買った瞬間に、今日の自分が報われた気がする
衝動買いは、購入した商品が届く前から満足を生みます。
購入完了の画面を見た瞬間に、
「楽しみができた」
「今日は嫌なことばかりではなかった」
「私にも、自分のために選べるものがある」
という気持ちになることがあります。
仕事や家庭では、すぐに結果が出ないことが多いものです。
頑張っても感謝されない。
話し合っても相手が変わらない。
片づけても、また散らかる。
一日働いても、翌日には次の仕事が待っている。
その点、通販は購入ボタンを押せば、すぐに「注文完了」と表示されます。
自分で選び、自分で決め、結果が目に見える。
誰かの返事や許可を待つ必要もありません。
そのため、何をしても報われないと感じた日に、買い物がわかりやすい達成感を与えることがあります。
衝動買いで求めているのは、商品だけとは限りません。
頑張った自分が報われる感覚、嫌な気分から離れる時間、自分で何かを選べる感覚を買おうとしていることがあります。
「自分へのご褒美」が必要になるほど、我慢が続いていないか
「今日くらい買ってもいい」
「私はこれだけ頑張った」
「たまには自分に何か買わないとやっていられない」
そう思って購入することもあります。
自分へのご褒美として買い物をすること自体に問題はありません。
欲しかったものを買い、使うたびに満足できることもあります。
ただ、毎回かなり疲れたあとでなければ、自分に何かを与えられないなら、買い物の前に長い我慢があるのかもしれません。
普段は自分の希望を後回しにしている。
休みたいと思っても、やるべきことを優先する。
人の頼みは引き受けるのに、自分のための予定は延期する。
欲しいものがあっても、「無駄かもしれない」と我慢する。
その状態が続くと、セールや限定表示が、欲しいものを手に入れる許可になります。
「安くなっているから」
「今日しか買えないから」
という理由があれば、自分の希望を認めやすくなるのです。
衝動買いはするのに、本当に欲しいものにはお金を使えないこともある
通販で予定外のものを買う一方で、本当に欲しいものにはお金を使えない人もいます。
何度も使う服には迷うのに、安い服を何着も買う。
疲れを取るための休暇や宿泊には迷うのに、夜中に日用品や雑貨を注文する。
長く学びたかったことには申し込めないのに、割引された教材を買う。
これは、お金を使うこと全般に抵抗がないという話ではありません。
本当に欲しいものを選ぶには、
「私はこれが欲しい」
と自分の希望を認める必要があります。
一方、セール品や便利そうな商品なら、
「安いから」
「役に立ちそうだから」
「いつか使うから」
と理由をつけられます。
自分の喜びのために使ったと感じにくいため、購入への罪悪感が出にくいのです。
結果として、意図して選んだ一つにはお金を使えず、許可を出しやすい商品を何度も購入することがあります。
届いた途端に興味が薄れるのはなぜか
注文したときは、届くのが待ち遠しかった。
配送状況を何度も確認した。
ところが荷物が届くと、箱を開けないまま数日たつ。
開封しても、一度使っただけで置いたままになる。
この場合、商品を使うこと以上に、届くまでの期待を楽しんでいた可能性があります。
注文した直後には、
「この商品が来たら生活が変わる」
という想像ができます。
服が届いたら、出かけたくなる。
収納用品が届いたら、部屋が整う。
調理器具が届いたら、料理をするようになる。
美容用品が届いたら、自分に自信が持てる。
しかし、商品が届いても、生活が自動的に変わるわけではありません。
片づけには時間が必要です。
料理には準備が要ります。
服を着ていく場所も必要です。
買った商品が、疲れや寂しさそのものをなくしてくれるわけでもありません。
期待と現実の差が見えると、興味がなくなっていきます。
そして再び、新しい商品に「今度こそ変わるかもしれない」という期待を向けることがあります。
欲しいものを自由に選べなかった経験が影響することもある
子どもの頃や過去の生活で、自分の欲しいものを言いにくかった人もいます。
欲しいと言うと、贅沢だと叱られた。
必要なもの以外は買ってもらえなかった。
自分より家族の都合が優先された。
お金を使うことについて、強い罪悪感を教えられた。
反対に、寂しいときや親が忙しいときに、物を買ってもらうことで気持ちを収めていた人もいます。
このような経験があると、大人になって自分でお金を使えるようになったときに、
「今なら誰にも止められない」
という解放感が出ることがあります。
自分で決められることを確かめるように、買い物をする場合もあります。
また、欲しいものを直接求めることに慣れていないため、
「安くなっていたから」
「必要になりそうだから」
自分のためにはお金を使えないこともあります。
現在の購入だけを見ても、なぜ止めにくいのかわからないときには、これまで「欲しい」という気持ちをどのように扱ってきたかを見る必要があります。
衝動買いをしたくなったときに確認すること
購入ボタンを押す前に、次のことを確認してみてください。
- セールでなくても、この商品を買いたいか
- 届いたら、いつ、どこで、どのように使うか
- 似た役割のものをすでに持っていないか
- 今感じているのは、欲しさ、疲れ、怒り、寂しさのどれか
- 商品が届いたら、何が変わると期待しているか
- 買わずに明日まで待つと、何が苦しいと感じるか
- 購入しない場合、今の気分をどう扱えばよいか
「本当に必要ですか」と自分に問いかけるだけでは、買いたい気持ちと戦うことになります。
それより、
「私は今、何を得たくてこれを買おうとしているのだろう」
と確認します。
商品が必要だとわかれば、買う選択もできます。
疲れをどうにかしたい、報われた気分になりたいという思いが強いなら、購入を決める前に、その気持ちをどう落ち着かせるかを考えます。
買わないための仕組みは、感情を確認する時間を作る
通販での購入は、とても簡単です。
カード情報が登録され、数回の操作で注文が完了します。
そのため、気持ちが変わるまでの時間を作る仕組みが役立ちます。
- セールやクーポンの通知を切る
- カード情報をサイトから削除する
- 欲しいものは一度お気に入りへ入れる
- 一定金額以上は、翌日以降に買う
- 夜は購入せず、昼間にもう一度確認する
- 通販アプリをスマートフォンの目立たない場所へ移す
- 一か月に使える金額を先に決める
これらは、自分を厳しく管理するためだけの方法ではありません。
購入までの間に、
「今日は何があったのか」
「なぜ今これが欲しいのか」
を確認する時間を作る方法です。
時間を置いても欲しく、使う場面も明確なら、そのときに購入できます。
方法を知っていても、買うことをやめられないとき
一晩待つ。
通知を切る。
買ったものを記録する。
方法を理解していても、疲れた日になると再び買ってしまうことがあります。
その場合、購入方法だけを変えても、買い物が担っていた役割は残ります。
仕事で報われない。
家族に不満を言えない。
誰にも頼れない。
休みたいのに休めない。
寂しいときにも、人へ連絡できない。
そうした感情を買い物によって一時的に変えている場合、購入をやめようとするほど、その奥にあるつらさや疲れがはっきり意識されてしまうことがあります。
必要なのは、自制心をさらに強くすることだけとは限りません。
買い物の前にあった疲れや怒りを、買わずにどう扱うか。
誰に何をわかってほしかったのか。
本当は何を受け取りたかったのか。
そこを整理することが必要になります。
まとめ|欲しい商品と、変えたい気分を分けて考える
通販でついポチってしまうとき、限定表示や値引き、送料無料、レビューが購入を後押ししています。
ただ、同じ表示を見ても、いつも買うとは限りません。
疲れている夜。
頑張ったのに報われなかった日。
人のために動き、自分の希望を後回しにした日。
そのようなときに購入しやすいなら、商品と一緒に、別の気持ちも手に入れようとしている可能性があります。
楽しみ。
達成感。
自分で選べる感覚。
頑張った自分が報われる感覚。
今の生活が変わるという期待。
衝動買いを減らすためには、欲しい気持ちを全部否定する必要はありません。
商品が欲しいのか。
買った直後の気分が欲しいのか。
その二つを分けて確認します。
通販サイトの仕組みを理解していても、それだけでは繰り返す衝動買いを止めるのは難しいことがあります。
カウンセリングでは、買いたくなる直前に何を感じているのか、買うことでどの感情を感じないようにしているのか、自分の希望や楽しみにお金を使うことをなぜ許可しにくいのかを整理していきます。
その感情を手放し、過去のお金や欲求にまつわる体験を、現在の視点から捉え直していきます。
買い物だけに気持ちを変えてもらわなくてもよくなると、欲しいものを意図して選び、必要のないものには時間を置くことがしやすくなります。
こちらの記事もどうぞ
衝動買いを繰り返す一方で、本当に欲しいものにはお金を使えないときには、買った商品の内容だけでなく、お金を使うことで得ようとしている感情から一緒に整理できます。




