頭ではわかっているのに行動できないのはなぜ?心の抵抗が起きる理由

ではわかっているのに心の抵抗で行動できない心理 感情・心のしくみ

「やったほうがいいのは、わかっている」

「このままではよくないことも、理解している」

「でも、どうしても動けない」

そんなことはないでしょうか。

謝ったほうがいいのに、謝れない。

断ったほうがいいのに、また引き受けてしまう。

助けを求めたほうがいいのに、一人で抱える。

話し合ったほうがいいのに、相手を避ける。

もう続けたくないのに、関係を終わらせられない。

頭では何をすべきかわかっているのに、行動がついてこない。

そのたびに、

「私は意志が弱いのではないか」

「ただ面倒だから逃げているだけでは」

と、自分を責めたくなるかもしれません。

けれども、行動できないときには、その行動をした先で起きることを避けようとしている場合があります。

動きたくないのではなく、動いたあとに感じる痛みや不安を避けているのです。

これを、心の抵抗と呼ぶことがあります。

行動できない理由はいくつかある

最初に確認しておきたいのは、動けない理由がすべて心の抵抗とは限らないことです。

疲れている。

予定を詰め込みすぎている。

何から始めればよいかわからない。

必要な情報が足りない。

やることが多く、優先順位を決められない。

体調がよくない。

そもそも自分がやるべきことではない。

このような状態では、気持ちの問題を探すより、休む、予定を減らす、情報を集める、作業を分けるといった対応が必要です。

また、

「やるべきだと思っているけれど、本当はやりたくない」

という場合もあります。

人から言われたから。

一般的には正しいとされているから。

周囲がそれを望んでいるから。

そのために「やらなければ」と思っているだけで、自分は納得していないこともあります。

心の抵抗を考える前に、

本当に自分はそれをしたいのか
今の自分に、それをする余力があるのか
何をすればよいか、具体的に決まっているのか

を分けて考える必要があります。

心の抵抗とは、行動の先にあるものを避ける動き

心の抵抗は、ただ行動を邪魔するものではありません。

その行動をしたことで感じるかもしれない感情や、起きるかもしれない結果から、自分を守ろうとする動きです。

たとえば、謝ったほうがよいとわかっているのに謝れない人がいます。

表面だけを見ると、

「素直になれない」

「プライドが高い」

ように見えるかもしれません。

けれども本人の中では、

謝ったら、自分だけが悪いことにされる。

相手からさらに責められる。

自分の言い分は聞いてもらえなくなる。

謝罪したことで、相手のしたことまで許したと思われる。

そんな結果を恐れている場合があります。

この人は謝ることができないのではありません。

謝ったあとに、自分だけが不利になることを避けようとしているのです。

「やったほうがいい」と「やっても平気」は別

頭では正しい行動がわかっていても、気持ちが納得しているとは限りません。

頼ったほうがいい。

断ったほうがいい。

本音を言ったほうがいい。

関係を終わらせたほうがいい。

どれも、理屈ではわかっている。

けれども、その行動をしたら、

嫌われるかもしれない。

相手が怒るかもしれない。

自分が間違っていたと認めることになる。

もう元の関係には戻れなくなる。

思っていたより大切にされていないとわかるかもしれない。

そう感じていると、行動の手前で止まります。

「やったほうがいい」と理解することと、「やっても自分は対応できる」と思えることは別なのです。

失敗することより、失敗した自分を見るのが怖い

何かを始められないとき、失敗が怖いのだと思うことがあります。

けれども、怖いのは失敗という出来事だけではないかもしれません。

失敗したら、

「やっぱり私には能力がなかった」

と感じる。

人から期待外れだと思われる。

これまで築いてきた評価が崩れる。

自分の選択が間違いだったと認めなければならない。

そのようなことが怖い場合があります。

挑戦しなければ、失敗は確定しません。

「やればできたかもしれない」

という可能性を残しておけます。

動かないことで、自分の能力に結論を出さずに済むのです。

この場合、行動を止めているのは、失敗を避けたい気持ちだけではありません。

自分への評価が下がることを避けようとしています。

成功したあとに起きる変化が怖いこともある

うまくいかないことだけが怖いわけではありません。

うまくいったあとに、生活や人間関係が変わることを恐れている場合もあります。

仕事で成果を出したら、さらに責任が増える。

収入が増えたら、家族から頼られる。

独立したら、すべて自分で判断しなければならない。

恋人ができたら、一人の時間が減る。

自分の希望を通したら、今までの役割には戻れない。

望んでいたはずのことでも、それによって失うものがあります。

自由が減るかもしれない。

周囲との関係が変わるかもしれない。

期待されることが増えるかもしれない。

すると、表面では成功を望みながら、行動の途中で止まることがあります。

このとき必要なのは、

「成功したいのだから頑張ろう」

と自分を追い立てることではありません。

成功したら、何が変わると感じているのか。

その変化に、どのような不安があるのか。

そこを具体的に見る必要があります。

人から言われると、やりたくなくなる

自分でも必要だと思っていたのに、人から言われた途端にやる気がなくなることがあります。

「早くやったほうがいいよ」

「普通はそうするでしょう」

「あなたのためを思って言っているの」

そう言われると、

「今やろうと思っていたのに」

「指図されたくない」

という気持ちが出る。

これは、行動そのものが嫌なのではなく、自分の選択を奪われたように感じている場合があります。

以前から、人の期待に応えてきた。

親や上司の指示に従うことが多かった。

自分の希望より、周囲の都合を優先してきた。

そのような人は、人から正しいことを言われるほど、

「また相手の言うとおりにしなければならない」

と感じることがあります。

そこで行動しないことで、自分の意思を守ろうとします。

この場合は、相手の言葉に従うか逆らうかではなく、

私は本当はどうしたいのか

を選び直す必要があります。

謝ったほうがいいのに謝れない理由

自分が言いすぎたことは、わかっている。

相手を傷つけたことも理解している。

それでも謝れない。

その背景には、

「謝ったら負ける」

という感覚だけでなく、

「私が謝ったら、相手の問題はなかったことにされる」

という気持ちがあるかもしれません。

自分にも悪かったところはある。

けれども、相手にも問題があった。

こちらが謝れば、全部自分のせいにされそうで怖い。

だから謝罪の言葉が出ない。

この場合は、

自分の言動について謝ることと、相手の言い分をすべて認めることを分けます。

「きつい言い方をしたことは悪かった」

と伝えることと、

「あなたの言うことが全部正しい」

と認めることは同じではありません。

自分の非を認めても、自分の傷つきや怒りを伝える権利は残ります。

断ったほうがいいのに引き受けてしまう理由

仕事や頼みごとを断ったほうがよいとわかっていても、

「いいですよ」

と答えてしまうことがあります。

あとから疲れ切り、

「どうしてまた引き受けたのだろう」

と後悔する。

ここでは、断ったあとの相手の反応を恐れている場合があります。

嫌な顔をされる。

協力的ではない人だと思われる。

困っている人を見捨てたように感じる。

次から頼られなくなる。

自分が断ったせいで、誰かに負担がいく。

そのため、引き受けること自体を選んでいるというより、断ったあとに出る罪悪感を避けています。

断る練習をする前に、

「断ったら、私はどのような人になったように感じるのか」

を見ると、抵抗の理由がわかりやすくなります。

冷たい人。

役に立たない人。

自分勝手な人。

そのように思われることが怖いなら、問題は頼みごとの内容だけではありません。

人からどう見られるかによって、自分の価値を決めていることが関係しています。

頼ったほうがいいのに頼れない理由

自分だけでは負担が大きい。

人に聞いたほうが早い。

手伝ってもらえる相手もいる。

それでも頼れないことがあります。

助けを求めたら、

できない人だと思われる。

迷惑そうな顔をされる。

断られて傷つく。

あとから恩を着せられる。

こちらの事情へ踏み込まれる。

そのように感じているからです。

過去に頼って傷ついた経験があるなら、

「人に頼っても平気」

と簡単には思えません。

必要なのは、誰にでも頼めるようになることではありません。

誰なら頼めるのか。

何をどこまで頼むのか。

断られた場合に、次にどうするのか。

頼んだあと、相手に何を握られるように感じるのか。

そこまで考えておくことです。

本音を言ったら、関係の現実がわかってしまう

話し合ったほうがよいのに、避け続けることもあります。

恋人に今後のことを聞きたい。

家族に負担を分けてほしいと伝えたい。

職場で理不尽な扱いについて確認したい。

けれども、話さない。

それは、本音を言うことが怖いだけではなく、相手の答えを聞くことが怖い場合があります。

結婚する気はないと言われるかもしれない。

家族から、今までどおりやってほしいと言われるかもしれない。

職場に改善する意思がないとわかるかもしれない。

曖昧なままなら、期待を残しておけます。

話し合えば、関係の現状がはっきりします。

その結果を受け取る覚悟ができていないため、行動を止めているのです。

この場合は、

「勇気を出して話しましょう」

だけでは足りません。

望んでいない答えが返ってきたら、自分はどうするのか。

そこまで考えることで、話す準備が整います。

終わらせたほうがいいのに終われない理由

もう続けたくない。

この関係では苦しい。

この仕事を続けても、よくならない。

そうわかっていても、終わらせられないことがあります。

終わらせたら、

これまでの努力が無駄になる。

一人になる。

収入や居場所を失う。

相手が困る。

自分の選択が間違いだったと認めることになる。

そのような怖さがあるからです。

続ける苦しさは、すでに知っています。

けれども、終わらせたあとの生活はまだわかりません。

人は、苦しくても知っている状態にとどまることがあります。

終わらせるためには、気持ちを決めるだけでなく、

その後の生活。

お金。

住まい。

人間関係。

相手からの反応。

自分の罪悪感。

それらへどう対応するかを考える必要があります。

抵抗は、「終わらせてはいけない」と言っているのではありません。

「終わらせたあとに起きることへ、まだ対応できない」と知らせている場合があります。

正しい行動をすると、自分だけが損をする気がする

頭では正しいと思っていても、行動したくないことがあります。

自分から謝る。

仕事を公平に分ける。

相手の事情を理解する。

冷静に話し合う。

けれども、

「なぜ私だけが大人にならなければならないのか」

という怒りがある。

自分はずっと我慢してきた。

相手は何も変わっていない。

それなのに、また自分が折れなければならないように感じる。

この状態で正しい行動を求められると、

「また私ばかりが損をする」

と感じます。

そのため、行動しないことで、

「今回は私だけが譲らない」

と自分を守ろうとします。

この場合、必要なのは感情を抑えて正しい行動を取ることではありません。

自分が何に納得していないのか。

相手へ何を求めているのか。

今回、自分が引き受けるべきことはどこまでか。

そこを分けることです。

動けないことで、何を避けられているのか

抵抗を整理するときは、

「なぜできないのだろう」

だけでなく、

できないままでいると、何を避けられるのだろう

と考えます。

謝らなければ、自分だけが悪いと認めずに済む。

断らなければ、嫌われる不安を感じずに済む。

頼らなければ、拒絶されずに済む。

本音を言わなければ、相手の本当の答えを聞かずに済む。

関係を終わらせなければ、一人にならずに済む。

挑戦しなければ、自分の能力に結論を出さずに済む。

動けないことには、何らかの不利益があります。

同時に、今の自分を守っている面もあります。

そこがわかると、

「抵抗をなくさなければ」

ではなく、

「避けているものへ、どのように対応するか」

を考えられるようになります。

行動の前に、怖い結果への対応を考える

動けないときに、無理に勢いをつけても、また元の状態へ戻ることがあります。

先に、行動したあとに起きると感じていることを具体的にします。

断って嫌な顔をされたら、どうするか。

頼んで断られたら、次は誰に聞くか。

本音を言って望まない答えが返ってきたら、どのような選択をするか。

謝ったあとに相手から責められたら、どこまで話を聞くか。

仕事を辞めたあと、収入や生活をどうするか。

怖い結果への対応が決まると、行動の手前にある抵抗が減ることがあります。

「何も起きない」と思い込む必要はありません。

嫌な反応が返ってくる可能性もあります。

そのときに、自分をどう守るかを考えておくのです。

行動を細かくするだけでは足りないこともある

よく、

「まずはできるところから始めましょう」

と言われます。

行動が大きすぎて動けない場合には、役立つ方法です。

ただし、問題が行動の大きさではなく、その先の結果への恐れなら、作業を細かくしても抵抗は残ります。

たとえば、

「恋人に今後のことを聞く」

という行動を、

「まずメッセージを書く」

に分けても、

望まない答えを聞くことへの怖さは変わりません。

「謝る」を、

「まず謝罪の言葉を考える」

に分けても、

自分だけが悪者になる不安は残ります。

何をするかだけでなく、

何が起きると感じているのかを扱う必要があります。

「やるべき」から、自分で選び直す

抵抗が強いときは、

「やるべきなのにできない」

と考え続けています。

そこで一度、

「私は本当にこれをするのか」

と選び直します。

謝るのか。

今回は謝らず、先に自分の気持ちを整理するのか。

引き受けるのか。

条件を変えて引き受けるのか。

断るのか。

話し合うのか。

今は話さず、準備が整ってからにするのか。

関係を続けるのか。

終わらせるのか。

人から見た正解ではなく、自分が結果まで引き受けられる選択を考えます。

行動しないという選択もあります。

ただし、

「怖いから動けなかった」

のか、

「考えたうえで、今は動かないと決めた」

のかでは、自分の感覚が違います。

自分で決めたと感じられると、抵抗に振り回されにくくなります。

抵抗は、なくすものではなく、内容を読むもの

心の抵抗が出たからといって、必ず行動してはいけないわけではありません。

反対に、抵抗を押し切って動けばよいとも限りません。

抵抗が知らせているのは、

拒絶が怖い。

自分だけが損をするのが嫌だ。

相手の答えを聞く準備ができていない。

今までの役割を失いたくない。

結果に対応できる自信がない。

ということかもしれません。

その内容がわかれば、必要な準備ができます。

伝え方を考える。

頼る相手を選ぶ。

断られたあとの方法を決める。

生活面の準備をする。

自分の責任と相手の責任を分ける。

それから、やるかやらないかを選びます。

頭ではわかっているのに動けないときは、自分を怠け者だと決める前に、

「この行動をしたら、何が起きるように感じているのだろう」

と考えてみます。

行動そのものではなく、その先にあるものを怖がっているとわかることがあります。

カウンセリングでは、行動できない自分を責めるのではなく、何を避けるために止まっているのかを整理していきます。

過去に似た行動をしたとき、何が起きたのか。

誰の反応を恐れているのか。

動いたら、どのような自分になると感じるのか。

動かないことで、今は何を守れているのか。

そこが見えてくると、ただ自分を追い立てるのではなく、行動するために必要な準備や、今は選ばない理由がわかるようになります。

わかっているのにできないとき、心は理由もなく止まっているわけではありません。

その理由を理解したうえで、自分がどうしたいのかを選び直すことが、次の行動につながります。

こちらの記事もどうぞ

頭では何をすればよいかわかっているのに動けない理由や、その行動をした先で何が起きると感じているのかを整理したい方は、カウンセリングをご利用いただけます。

タイトルとURLをコピーしました