付き合って何年かたつ。
彼のことが嫌いなわけではない。
一緒にいれば楽しい日もあるし、自分のことを理解してくれていると思うこともある。
ただ、結婚の話になると、彼ははっきりしない。
「今は仕事が忙しい」
「もう少し落ち着いてから考えたい」
「結婚しないと言っているわけではない」
そんな言葉を聞きながら、気づけば時間がたっている。
友人からは、
「結婚する気がないなら、早く別れたほうがいいよ」
と言われる。
自分でも、このままでよいとは思っていない。
けれども、別れると考えると、
「本当にこの人を失っていいのだろうか」
と不安になる。
結婚するか、別れるか。
そろそろ決めなければと思うのに、どちらを選んでも後悔しそうで動けない。
そんな状態が続くことがあります。
彼に問題があるかを調べても、答えが出ない
決められないときほど、相手を詳しく見極めようとします。
責任感はあるのか。
金銭感覚は合っているのか。
家族との関係はどうか。
仕事ばかりを優先する人ではないか。
結婚後に家事を分担してくれるのか。
何か問題が起きたとき、話し合える人なのか。
もちろん、結婚を考えるうえで確認しておきたいことです。
ただ、彼のことばかり細かく見ようとすると、かえって答えが出にくくなる場合があります。
よいところを見れば、
「この人を逃したら、次はないかもしれない」
と思う。
気になるところを見れば、
「結婚したら苦労するのではないか」
と思う。
彼の長所と短所を数え続けても、どちらか一方には決まりません。
誰にでも、結婚生活に向いている部分と、扱いにくい部分があるからです。
問題は、彼が結婚にふさわしい男性かどうかだけではありません。
自分が、この人との生活を選びたいのかどうかです。
三つの迷いが一つになっている
「結婚するか別れるか決められない」ときには、いくつかの違う問題が混ざっていることがあります。
一つ目は、そもそも自分が結婚したいのかという問題です。
二つ目は、この彼と結婚したいのかという問題です。
三つ目は、今別れたら、次の相手に出会えないのではないかという不安です。
この三つは、似ているようで違います。
結婚生活そのものを望んでいるのか。
彼とこれからも一緒にいたいのか。
一人になることが怖いために、今の関係を失いたくないのか。
これらが混ざったままだと、
「彼にもっと結婚向きの部分があれば決められる」
と思いやすくなります。
けれども、彼の条件が整ったとしても、自分が結婚生活を望んでいなければ迷いは残ります。
反対に、彼と暮らしたい気持ちはあっても、「結婚しなければ時間を無駄にする」という焦りが強ければ、二人の関係そのものがわからなくなります。
「結婚したい」のか、「結婚できる私になりたい」のか
結婚を考えるとき、本人の希望だけでなく、周囲からどう見られるかが入り込むことがあります。
この年齢で独身のままでよいのか。
家族を安心させたい。
友人たちはみんな結婚している。
一度くらいは、誰かから正式に選ばれたい。
結婚できない人だと思われたくない。
こうした気持ちがあっても不思議ではありません。
ただ、「彼と生活したい」という希望と、「結婚できる自分でありたい」という思いは別です。
結婚が決まれば、自分の価値が証明されるように感じることがあります。
反対に、彼が結婚を決めてくれないと、
「私は妻にするほどの女性ではないのか」
「もっと若い女性なら、彼も迷わなかったのではないか」
と、自分への評価に結びつけてしまいます。
すると、結婚について話し合っているつもりでも、実際には、
「私を選ぶ価値があると証明してほしい」
という話になっていきます。
彼が結婚を決めることと、自分の価値は同じではありません。
しかし、二つが結びついていると、彼との生活を望んでいるのか、彼に選ばれることで自信を取り戻したいのかがわからなくなります。
大きな問題がない関係ほど、終わらせにくい
浮気をされた。
暴言がある。
お金の問題がある。
明らかな問題があれば、別れる理由を説明しやすいでしょう。
ところが、決められない関係には、はっきりした問題がないことも多いものです。
彼は悪い人ではない。
会えば楽しい。
困ったときには助けてくれる。
大きなケンカもない。
ただ、結婚については話が進まない。
このような関係では、
「こんなに悪いところがない人と別れていいのだろうか」
と思います。
しかし、別れるためには、相手が悪い人である必要はありません。
よい人であっても、自分が望む関係とは違う場合があります。
反対に、欠点があるから結婚してはいけないとも限りません。
重要なのは、彼の人物評価ではなく、二人が同じ方向へ進もうとしているかどうかです。
「いつか彼が決める」を待つことで、自分は決めずに済む
彼が結婚に踏み切れないため、自分も動けない。
そう感じることがあります。
たしかに、結婚は一人では決められません。
彼の意思も必要です。
ただ、彼が決めない状態を待ち続けることで、自分も決断を先送りしている場合があります。
彼が結婚すると言えば、この関係を続ける。
彼が結婚しないと言えば、別れる。
決定権を彼に預けておけば、自分が選ばなくて済みます。
しかし、彼が曖昧な返事を続ける人なら、待つ時間だけが長くなります。
その間も、
「今はまだ別れるほどではない」
「もう少し待てば、気持ちが変わるかもしれない」
と考えます。
待つことも、自分がしている選択です。
何も決めていないようで、今の関係を続けることを毎日選んでいます。
相手を急かさない「理解のある女性」を続けていないか
彼に結婚の話をすると、重いと思われるかもしれない。
責任を迫ったら、逃げられるかもしれない。
仕事が大変な彼を困らせたくない。
そう考え、話を切り出すことを控える人もいます。
話したとしても、
「今すぐじゃなくていいんだけど」
「結婚だけがすべてではないと思っているけど」
「あなたの仕事が落ち着いてからでいいよ」
と、彼が負担を感じないように、自分の気持ちを控えめにして伝えます。
相手を思いやっているのですが、それでは自分が何を望んでいるのかが伝わりません。
彼から見れば、今の関係のままでも大きな問題はないように見えるでしょう。
理解のある女性でいようとするほど、自分が待てる時間や、本当は何を望んでいるのかを言えなくなることがあります。
これは恋愛だけの話ではありません。
仕事でも、相手の事情を理解して、自分の希望を後回しにする。
家族にも、「今は大変だから」と言えない。
友人関係でも、相手の都合に合わせる。
いつも相手の事情を先に考えてきた人は、結婚のような大きな問題でも、相手が決めやすい時期を待とうとします。
けれども、自分の時間も同じように進んでいます。
結婚後の生活を考えると、気が重くなることもある
「結婚したい」と思っていたはずなのに、具体的な生活を想像すると気が重くなることがあります。
一緒に暮らしたら、家事はどうなるのか。
彼の家族との付き合いは増えるのか。
住む場所や仕事はどうするのか。
一人で過ごす時間は確保できるのか。
今よりも自分の負担が増えるのではないか。
結婚という言葉には憧れがあっても、生活として考えると望んでいない部分が見えてくることがあります。
その場合、結婚をためらっているのは彼だけとは限りません。
自分もまた、今の自由や生活を失うことが怖いのかもしれません。
それを認めず、
「彼が決めてくれないから進めない」
と考えていると、自分の迷いを見なくて済みます。
彼の答えだけでなく、自分は結婚によって何を得たいのか、何を失うと感じているのかを見る必要があります。
どちらを選んでも、何かは失う
結婚するか別れるかを決められないのは、どちらにも失うものがあるからです。
結婚すれば、一人で自由に決められる生活の一部を失うかもしれません。
相手の家族や生活習慣を引き受けることになるかもしれません。
別れれば、これまで築いてきた関係を失います。
次に同じような相手と出会える保証もありません。
一人になる時間も経験するでしょう。
何も失わずに済む選択肢を探していると、決断できません。
結婚しても後悔しない。
別れても寂しくならない。
次の相手にも必ず出会える。
そんな保証があれば決められるでしょう。
けれども、大きな選択には、決めたあとでしかわからないことがあります。
決断とは、完全な確信を得ることではなく、どちらの不確かさを引き受けるかを選ぶことでもあります。
期限を設けるのは、彼を脅すためではない
結婚について期限を設けるべきか迷う人もいます。
「半年以内に決めてくれなければ別れる」
と伝えれば、彼を追い詰めるようで嫌だと感じるかもしれません。
期限は、相手を動かすために使うと、脅しになりやすいものです。
一方で、
「私は、いつまでなら今の関係を続けたいのか」
を自分の中で考えることには意味があります。
彼が決めるまで何年でも待てるのか。
一年なら待てるのか。
具体的な話が何も進まない状態でも、今の関係を続けたいのか。
期限を考えることは、相手に命令することではありません。
自分の時間をどのように使うかを決めることです。
ただし、期限を決めても、自分が守れないなら状況は変わりません。
彼がまた曖昧な返事をしたときに、さらに期限を延ばす。
それを繰り返すなら、問題は日付ではなく、なぜ自分の決定を実行できないのかというところにあります。
彼の返事より、今の関係を見る
結婚について聞いたとき、
「いつかはしたい」
「もう少し待ってほしい」
と言われることがあります。
その言葉だけを聞けば、可能性は残っているように思えます。
けれども、見る必要があるのは言葉だけではありません。
将来について具体的な話をしようとしているか。
住まいやお金について考えようとしているか。
自分の事情だけでなく、こちらの時間や希望も考えているか。
話し合いを避けずに向き合おうとしているか。
結婚するという言葉が出ているかどうかより、二人で未来を作ろうとする行動があるかどうかです。
「いつか」という言葉を信じて待ち続けるのか。
今の関係で実際に起きていることを見るのか。
ここでも、自分が何を選びたいかが問われます。
答えを出す前に、何を守ろうとしているのかを見る
結婚するか別れるかを迷っているとき、相手の条件を比較するだけでは、なかなか答えが出ません。
結婚できない自分だと思われたくない。
今まで付き合った時間を無駄にしたくない。
次の相手が見つからないのが怖い。
彼に選ばれないまま終わりたくない。
一人になることを避けたい。
周囲に「別れたほうがいいと言ったでしょう」と思われたくない。
こうしたものが決断に入り込んでいないかを見る必要があります。
仕事では、評価されるまで辞められない。
家族には、感謝されるまで世話を続ける。
恋愛では、彼が結婚を決めるまで待ち続ける。
場面は違っても、「相手が自分を選んでくれたら、これまでの頑張りが報われる」という生き方が続いている場合もあります。
一人で考えていると、彼が結婚向きかどうかを調べることと、自分がどんな生活を望んでいるのかが区別しにくくなります。
カウンセリングでは、結婚を勧めたり、別れを勧めたりするのではなく、彼との現実、結婚への希望、一人になる不安、これまでの選び方を分けて整理します。
誰かに正解を決めてもらうためではありません。
彼がどう答えるかとは別に、自分はどのような生活を選びたいのかを見つけていくためです。



