重い荷物を持っていても、
「持とうか?」
と言われると、
「平気。自分で持てるから」
と答える。
デートのお店を決める時も、
「どこか探しておくよ」
と彼が言ってくれたのに、
「時間がかかりそうだから」
と、自分で検索を始める。
困ったことがあっても、相談する前に自分で調べ、自分で考え、自分で何とかする。
本当は、もう少し彼に頼ってみたい。
「今日は疲れたから助けてほしい」
「会いたいから予定を考えてほしい」
「今回はあなたに決めてほしい」
そう言えたらいいと思っています。
それなのに、彼から手を差し出されると、
「私がやるよ」
と反射的に断ってしまう。
そして後になってから、
「私はいつも一人で頑張っている」
と寂しくなることがあります。
頼りたい気持ちより先に、相手の負担を考えてしまう
好きな人に頼れないのは、頼りたい気持ちがないからではありません。
頼る前に、いろいろなことを考えてしまうのです。
「忙しいのに頼んだら悪いかな」
「こんなこともできないのかと思われないかな」
「面倒な人だと思われたくない」
「断られたら傷つく」
お願いする前から、相手の反応を考え、自分の希望を引っ込めます。
彼から、
「何かできることはある?」
と聞かれても、考える時間を取らずに、
「特にないよ」
と答えてしまうこともあります。
本当は、話を聞いてほしかった。
駅まで迎えに来てほしかった。
次に会う日を決めてほしかった。
けれども、その気持ちを言葉にする前に、
「それくらい自分で何とかしよう」
と処理してしまいます。
相手を困らせないことを優先してきた人ほど、自分が何をしてほしいのかを考えなくなります。
「頼むこと」よりも、「任せること」が難しい
何とかお願いできたとしても、そこで終わりではありません。
頼ることに慣れていない人にとっては、お願いした後に相手へ任せることも難しいからです。
たとえば、彼にお店を選んでもらうことにしたとします。
ところが、彼が調べているのを見ていると、
「そのサイトより、こっちのほうが見やすいよ」
「駅から遠くない?」
「予約できるか確認した?」
と、次々に口を出したくなる。
結局、自分でスマートフォンを取り出し、
「もう私が探すね」
となることがあります。
彼に何かを頼んでも、
「そこは、こうして」
「それだと後で困るから」
「やっぱり私がやる」
と、途中で仕事を取り返してしまう。
頼ったつもりでも、実際には相手に任せるところまではできていないのです。
「私がやったほうが早い」が出てくる
自分でやったほうが早い。
自分で決めたほうが間違いがない。
相手に説明するくらいなら、自分で動いたほうが楽。
そう思うこともあるでしょう。
実際に、その通りの場面もあります。
ただ、毎回それを続けていると、恋愛の中で自分がすべてを担当するようになります。
予定を決める。
必要なことを調べる。
忘れないように連絡する。
問題が起きたら対処する。
彼が動くのを待てず、自分が先にやる。
すると、彼の側も、
「自分がやっても直される」
「任せると言われても、結局彼女がやる」
「自分は手を出さないほうがいいのかもしれない」
と感じることがあります。
少しずつ彼が動かなくなり、自分がさらに動く。
そのうち、
「この人は何もしてくれない」
と不満を感じるようになります。
もちろん、最初から何もする気がない男性もいます。
ただ、自分が相手の出番を待てず、先に全部やってしまっている場合もあります。
この二つは分けて考える必要があります。
自分とは違うやり方を見ていると落ち着かない
相手に任せるとは、相手が自分とは違うやり方をすることも受け入れるということです。
自分なら、前日までに予約する。
彼は当日になってから決める。
自分なら、必要な情報をすべて調べてから動く。
彼は、まず行ってみてから考える。
自分なら、順番を決めて片づける。
彼は、目についたところから始める。
結果に問題がなくても、途中の進め方が違うだけで不安になることがあります。
「本当に任せていいのだろうか」
「最後に私が何とかすることになるのではないか」
そう思うと、黙って見ていられません。
相手に頼ることが難しいというより、自分が管理していない状態に耐えにくいのかもしれません。
これまで自分がしっかりすることで物事を回してきた人にとって、「誰かに任せて待つ」という時間は、かなり落ち着かないものです。
何もしない自分でいると、不安になる
いつも頑張る側にいる人は、何かをしている時に自分の居場所を感じることがあります。
相手を助ける。
予定を整える。
気を利かせる。
困っていることを解決する。
そうしている間は、
「私はこの人の役に立っている」
と思えます。
反対に、自分が何もせず、相手にしてもらう側になると、
「私は何を返せばいいのだろう」
「何もしていない私と一緒にいて、相手は楽しいのだろうか」
と不安になることがあります。
愛されるためには、何かを差し出さなければならない。
役に立たなければ、そばにいてもらえない。
そう感じていると、相手の好意を受け取るだけの立場にはなかなかなれません。
何かをしてもらったら、すぐに同じだけ返そうとする。
ごちそうしてもらったら、次は必ず自分が払おうとする。
助けてもらったら、それ以上のことをして返そうとする。
恋愛でいつもバランスを取ろうとしすぎると、相手に支えてもらっている実感が持ちにくくなります。
お願いは、相手を試すことではない
頼れない状態が続くと、言葉にしないまま相手の愛情を確かめたくなることがあります。
「本当に大切に思っているなら、言わなくても気づくはず」
「困っているのだから、自分から助けてくれるはず」
そう思って待つ。
けれども、相手が気づかなければ、
「やっぱり私は大切にされていない」
と傷つきます。
お願いするのが怖いために、相手が自分から動くかどうかで気持ちを確かめようとするのです。
ただ、相手が気づかなかったことと、愛情がないことは同じではありません。
自分が何に困っているのか。
何をしてもらえるとうれしいのか。
どこまで手伝ってほしいのか。
そこは言葉にしなければ伝わらないこともあります。
お願いとは、相手が正解を出せるか試すことではなく、自分の希望を関係の中に出すことです。
断られることと、嫌われることを分ける
頼るのが怖い人にとって、お願いを断られることは大きな出来事に感じられます。
「今日は難しい」
「その日は予定がある」
「それは自分にはできない」
そう言われると、
「迷惑だったのだろうか」
「もう頼らないほうがいい」
「私のことは大切ではないのかもしれない」
と考えてしまう。
けれども、一つのお願いに応じられないことと、自分の存在を拒絶されることは別です。
相手にも、予定や体調や得意不得意があります。
頼ることは、必ず引き受けてもらえる権利を持つことではありません。
お願いを伝える。
相手は、できるかどうかを答える。
難しければ、別の方法を一緒に考える。
このやりとりができることも、頼り合える関係の一つです。
まずは一つお願いして、相手のやり方を待ってみる
頼る練習は、生活を左右するようなことを任せるところから始める必要はありません。
たとえば、
「次のお店は選んでもらえる?」
「この荷物を持ってもらえる?」
「今日は話を聞いてほしい」
「会える日を二つくらい考えてくれる?」
と、具体的に伝えてみます。
そしてお願いした後は、すぐに自分で取り返さないことです。
相手が考える時間を待つ。
自分とは違う方法でも、目的が果たせるなら任せてみる。
何かしてもらった時には、すぐに埋め合わせを考えるのではなく、
「ありがとう。助かった」
と受け取る。
最初は落ち着かないかもしれません。
「本当にこれでいいのだろうか」
「自分がやったほうが早かった」
と思うこともあるでしょう。
けれども、頼るとは、自分の望んだ通りに相手を動かすことではありません。
相手の方法や判断が入る余地を残すことでもあります。
本当に任せられる相手なのかも見る
自分が頼れない理由だけを探し続ける必要はありません。
お願いしても毎回面倒そうな態度を取る。
引き受けたことを何度も放置する。
失敗した後の対応をすべてこちらに押しつける。
困っていることを話しても、まともに聞こうとしない。
そのような状態なら、任せるのが怖いのには、現在の相手との関係にも理由があります。
自分が過剰に頑張っているのか。
相手に任せる余地を作れていないのか。
それとも、実際に相手が引き受けようとしないのか。
ここを区別することが大切です。
「私がもっと上手に甘えれば変わるはず」と、すべてを自分の課題にしなくてもよいのです。
一人で頑張る恋愛から、行き来のある関係へ
好きな人に頼りたいのに頼れない時、単にお願いの言葉を覚えれば解決するとは限りません。
なぜ、相手の負担を先に考えてしまうのか。
頼んだ後に、なぜ自分で取り返したくなるのか。
何もしていない自分では、愛されないように感じるのか。
相手に任せると、どのようなことが起こりそうで怖いのか。
カウンセリングでは、そうしたことを一緒に整理していきます。
何でも彼に任せることを目指すのではありません。
自分ができることは自分でする。
必要な時には相手に頼る。
相手が差し出してくれたものを受け取る。
そして、自分もできる時には相手を支える。
どちらか一方だけが頑張るのではなく、二人の間に行き来を作っていくために、今の自分がどこで相手の出番をなくしているのかを見ていきます。




