お金はあるのに使うのが怖い|将来への不安が強い人の心理

感情・心のしくみ

同じくらいのお金を持っていても、使える人もいれば、なかなか使えない人もいます。

生活に困っているわけではない。

貯金もある。

欲しいものを買ったからといって、その後の暮らしに困るわけでもない。

それでも、お金を使おうとすると迷う。

そして、お金を使わずに済むと、どこかホッとする。

もしそうだとしたら、見てみたいのは、

「いくら持っているか」ではありません。

自分とお金との間に、どんな感情があるのか。

そこには、その人がこれまで生きてきた中で感じてきたことが、思っている以上に表れていることがあります。


お金に対して感じることは、人によって違う

お金そのものには、感情はありません。

一万円札は、誰が持っていても一万円です。

でも、その一万円を見たときに感じることは、人によって違います。

「これがあれば安心感がある」と思う人もいます。

「使ったらなくなる」と感じる人もいます。

「もっと持っていなければ怖い」と感じる人もいれば、

お金そのものに、どこか嫌な感じがする人もいます。

もちろん、

「私はお金が怖い」

「私はお金しか頼れない」

と、考えているわけではありません。

むしろ多くの場合は、

「私は心配性だから」

「昔から節約する方だから」

「将来何があるかわからないから」

というくらいに考えています。

でも、実際にお金を使おうとしたときに強く不安になるのであれば、その不安には、その人なりの理由があります。

お金をどう使うかを見ると、その人がお金をどう感じているのかが見えてくることがあります。

使えないことだけを見るより、
「私とお金との間には、どんな感情があるのだろう」
と見てみる方が、わかることがあります。


「お金は、いつかなくなるもの」と感じていることがある

今は十分なお金がある。

それでも、減ると怖い。

そんな人の中には、心のどこかで、「お金は、いつかなくなるもの」と感じていることがあります。

子どもの頃、「そんなものを買うお金はない」とよく言われていた。

親がお金のことで何度も言い争っていた。

急に家の暮らしぶりが変わった時期があった。

収入がなくなることで、家族が不安定になったことがある。

自分自身が、かなりお金に困った経験をしたこともあるでしょう。

そうした経験があると、今は十分にあると頭ではわかっていても、

「今あるからといって、これからもあるとは限らない」という感覚が残ります。

だから、お金が減ったとき、現在の残高を見ているだけなのに、過去に感じた不安まで一緒に出てくる。

「まだ十分ある」と考えても、簡単には安心できません。

心の中では、「ほら、やっぱりお金は減っていく」という方が強く感じられるからです。


誰にも頼れないと、お金が頼れるものになることもある

お金をなかなか使えない人の中には、お金そのものよりも、人とのつながりが関係していることがあります。

「困ったとき、誰かに助けてもらえばいい」と思える人と、「何かあったら、自分で何とかするしかない」と思っている人では、お金の意味が変わります。

誰かに頼ることが苦手。

家族がいても、本当のところでは自分で何とかするしかないと思っている。

人に助けを求めたとき、助けてもらえなかった経験がある。

頼ったことで傷ついたことがある。

そうやって生きてきた人にとって、お金は、生活するためのものだけではなくなります。

「これがあれば、一人でも何とかできる」というものになります。

人はいつか離れるかもしれない。

仕事は変わるかもしれない。

体調を崩すこともあるかもしれない。

でも、お金があれば何とかなる。

そう感じていると、お金はかなり大きな支えになります。

その場合、お金を使うことは、「少し残高を減らす」というだけのことではなくなります。

自分を支えてくれているものを減らすように感じるのです。

だから、使うことが怖くなります。


「お金があれば、人に頼らなくていい」と思ってきた人もいる

自分で働いて、自分のお金を持つことによって、自由になれた人もいます。

親に頼らなくてよくなった。

夫に頼らなくても生活できるようになった。

嫌な場所から離れることができた。

自分で選べるようになった。

そんな経験がある人にとって、お金は、自由そのものに近い意味を持っていることがあります。

だから、貯金が減ると、「自由が減っていく」ように感じる。

「誰かに頼らなければならなくなるかもしれない」という怖さまで出てくる。

そうすると、実際には十分なお金を持っていても、「使っても平気」とはなかなか思えません。

お金が減ることで怖いのは、数字が減ることだけではなく、もう一度、誰かに頼らなければならない自分になることなのかもしれません。


お金そのものを「怖いもの」と感じていることもある

一方で、お金がないことだけではなく、お金そのものに怖さを感じる人もいます。

家の中で、お金を持っている人の言うことが絶対だった。

「誰が食べさせていると思っているんだ」

と言われたことがある。

お金を出してもらう代わりに、相手の言うことを聞かなければならなかった。

遺産や借金、お金の貸し借りで、身近な人たちの関係が壊れていった。

そんな経験があると、お金には、「力がある」という感覚と一緒に、

「人を変える」

「人を支配する」

「揉め事を起こす」

という感覚まで結びついていることがあります。

本人は、

「お金は欲しい」と思っている。

でも、お金との間には怖さもある。

すると、

増やしたいのに増えると落ち着かない。

もらえるのに受け取れない。

使っても落ち着かない。

持っていても安心感がない。

そんな矛盾した反応が出ることがあります。

お金のことで悩んでいるように見えて、その奥には、人との関係の中で経験してきたことが影響していることもあるのです。


お金を使うと「なくした」と感じるのはなぜだろう

お金を使うと、残高は減ります。

これは事実です。

でも、普通はお金を渡す代わりに、何かを受け取っています。

食事をした。

旅行をした。

暮らしやすいものを買った。

学びたいことを学んだ。

誰かと楽しい時間を過ごした。

疲れていたから、少し楽ができるものを選んだ。

ところが、お金を使うのが怖い人は、

受け取ったものより、「いくらなくなったか」の方が気になります。

旅行から帰ってきて、「楽しかった」より先に、「こんなに使ってしまった」が出てくる。

ずっと欲しかったものを買っても、喜ぶより、「買わなくてもよかったんじゃないか」と考えてしまう。

これは単にケチだから、という話ではありません。

その人とお金との間に、「お金はなくなるもの」という感覚が強くあると、

使ったことで受け取ったものより、なくなったことの方が大きく感じられるのです。


お金を使わなかったときの「ホッとする」に注目してみる

欲しいものを買わなかった。

旅行をやめた。

外食をせずに家で食べた。

そして、「よかった。使わずに済んだ」とホッとする。

この「ホッとした」という感覚には、その人のお金との関係がよく表れます。

使わなかったから、未来のお金を守れた。

何かあったときの備えを減らさずに済んだ。

自分でちゃんと管理できた。

そうやって、お金を使わないことで安心感を得ていることがあります。

それなら、「もっと楽しむために使えばいい」と言われても、簡単には変わりません。

使うことで得られる楽しさよりも、使わないことで得られる安心感の方が大きいからです。

まずは、そこに気づく必要があります。


「十分ある」がわからなくなるとき

お金を使うのが怖い人に、「いくらあれば安心できますか?」と聞いても、答えが出ないことがあります。

500万円あれば安心すると思っていた。

500万円を超えたら、今度は1000万円欲しくなった。

1000万円あっても、「老後には足りないかもしれない」と思う。

もちろん、老後の生活費や病気への備えなど、現実的に考える必要のあるお金はあります。

でも、それとは別に、気持ちの中で、いつまでも「足りない」と感じることがあります。

この「足りない」は、計算するだけではどうにもならないのです。

誰にも頼れない。

いつ何が起きるかわからない。

あるものは、いつかなくなる。

そんな気持ちをお金で埋めようとしているとしたら、いくら増えても安心感が続かないからです。


「お金が減ると何が怖いのか」を見てみる

お金を使えないと、「もっと気楽に使えるようにならなきゃ」と思うかもしれません。

でも、無理に使う必要はありません。

まず見てみたいのは、お金が減ったとき、自分の中で何が起きるのかです。

「不安になる」ということだけでなく、もう少し先まで見てみます。

もし、このお金がもっと減ったら、何が怖いのだろう。

誰かに頼ることになるのが怖いのか。

自分で選べなくなることが怖いのか。

昔のように、お金に困ることが怖いのか。

何かあったとき、自分ではどうにもできないことが怖いのか。

あるいは、「お金は持っていなければ危ない」と、ずっと思ってきたのかもしれません。

「お金を使えない自分」を変えようとする前に、
お金が減るとき、自分の中にどんな気持ちが出てくるのかを見てみる。


そこに、お金との付き合い方を変えていく手がかりがあります。


過去と今が一緒になっていることもある

今は、お金がある。

仕事もしている。

すぐに生活に困る状況でもない。

それでも強く恐れを感じるのであれば、今のお金だけを見て反応しているわけではないことがあります。

子どもの頃に感じた不安。

誰にも頼れなかったときの心細さ。

自分で何とかするしかなかった経験。

お金をめぐって人が争う姿を見た怖さ。

そうしたものが今のお金との間にも残っていると、頭では、「今はあの頃と違う」とわかっていても、心は同じように反応することがあります。

私たちのカウンセリングでは、こうした過去の経験や、そのときに感じた感情が潜在意識や無意識から現在の反応に影響することがあると考えます。

だから、「十分あるんだから使えばいい」と考えるだけでは、変わらないことがあるのです。


お金を使えるようになることが目的ではない

お金との関係を見直すというと、「もっとお金を使えるようになる」ことがゴールのように思えるかもしれません。

でも、使うことそのものが目的ではありません。

貯めたいなら、貯めてもいい。

必要のないものを買わないのも、その人の選択です。

ただ、

怖いから使わないことと、自分で考えて使わないことは違います。

同じように、不安をなくすためにお金を持ち続けることと、自分が望む暮らしのために貯めることも違います。

自分とお金との間に何があるのかが少し見えてくると、「なくなるから使わない」だけではなく、

「これは残しておきたい」
「これは今の自分のために使いたい」
「これは使わなくていい」

と、自分で選びやすくなっていきます。

その方が、お金に振り回されずに付き合っていけるのではないかと思います。


頑張るだけでは、うまくいかなくなったときに

頭では「これくらい使っても問題ない」とわかっている。
それでも、お金を使おうとすると不安になる。
貯金が増えても、なかなか安心感が持てない。
そんなときは、金額や家計の問題だけでは整理できない気持ちがあるのかもしれません。

カウンセリングでは、「もっと使えるようになりましょう」と行動だけを変えるのではなく、なぜお金が減ることが怖いのか、お金が自分にとってどんな存在になっているのか、その背景にある経験や感情も一緒に見ていきます。

お金との関係をたどっていくと、誰かを頼ることへの怖さや、これまで一人で何とかしてきたこと、昔感じていた不安などにつながっていくことがあります。

最初から、うまく説明できなくても構いません。

「お金はあるのに、なぜか使うのが怖い」というところからでも、お話しいただけます。

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