家族のものは迷わず買えるのに、自分の服は何か月も迷ってしまう。
友人へのプレゼントは「せっかくだし」と少し奮発できるのに、自分のランチはできるだけ安く済ませる。
恋人や家族が疲れていたら、マッサージや外食をすすめられるのに、自分が疲れていても「まあ、寝れば何とかなる」と済ませてしまう。
そんなことはないでしょうか。
自分にお金を使えない人は、珍しくありません。
「欲しいものがないわけではない」
「必要だとわかっているものもある」
「でも、自分のためにお金を使おうとすると、なぜかブレーキがかかる」
このような感覚がある場合、それは単なる節約だけでは説明できないことがあります。
もちろん、無理な浪費をすすめたいわけではありません。家計を考えることも、将来のために備えることも必要です。
ただ、必要なものまで買えない。休むためのお金も使えない。自分の学びや楽しみにお金を使うと、後ろめたくなる。
その状態が続いているなら、お金の問題だけでなく、自分をどのように扱っているかを見てみる必要があるかもしれません。
自分にお金を使えないのは、単なる節約とは限らない
節約と、自分を後回しにし続けることは、似ているようで違います。
節約は、自分で納得してお金の使い方を選んでいる状態です。
「今月は旅行のために外食を控えよう」
「この服は今の自分には必要ないから、買わないでおこう」
「優先順位を考えると、今は貯金に回したい」
このように、自分の意思で選んでいるなら、お金を使わないことにも納得感があります。
一方で、自分にお金を使えない状態には、苦しさが伴うことがあります。
本当は新しい靴が必要なのに、「まだ履ける」と何年も我慢する。
美容院に行きたいのに、「私なんかにお金をかけても」と思って先延ばしにする。
疲れているのに、休むための時間やサービスにはお金を使えない。
その一方で、家族の服や子どものもの、友人への贈り物には迷わずお金を使える。
この場合、お金の問題というより、自分をどの位置に置いているかの問題になっていることがあります。
自分は最後でいい。
自分のことは後回しでいい。
自分に使うくらいなら、誰かのために使ったほうがいい。
そんな考えが当たり前になっていると、「自分のために使う」という選択そのものが落ち着かなくなります。
自分にお金を使えない心理的な理由
自分にはお金をかける価値がないと感じている
自分にお金を使えない背景には、
「私にそこまでしなくていい」
という感覚が隠れていることがあります。
少し質のよい服を見ても、
「私が着ても仕方がない」
と思う。
興味のある講座を見つけても、
「私が学んで何になるのだろう」
と考える。
疲れているのに、体を整えることにお金を使うのは贅沢だと感じる。
これは、ものそのものが高いか安いかだけの話ではありません。
「私にそれを与える価値があるのか」
というところで止まってしまうのです。
大切な友人が傷んだ靴を履いていたら、
「そろそろ買い替えたら?」
と言えるかもしれません。
家族が疲れ切っていたら、
「今日は外で食べよう」
と提案できるかもしれません。
それなのに、自分のことになると急に判断が厳しくなる。
自分には、できるだけお金をかけないほうがよいと思っているのかもしれません。
人のために使うことで、自分の存在価値を感じている
人にはお金を使えるのに自分には使えない人の中には、「誰かの役に立っている自分」に価値を感じやすい人もいます。
家族のために何かを買う。
友人の相談に乗るために時間を使う。
職場で人の分まで引き受ける。
恋人が喜ぶことを優先する。
それ自体は、思いやりでもあります。
ただ、
「役に立てているときだけ、自分には価値がある」
と感じていると、自分のためにお金を使うことが難しくなります。
自分のために使うお金は、誰かの役に立つ証明になりにくいからです。
「これを買ったら、誰が喜ぶ?」
「これにお金を使って、何の役に立つ?」
「私だけ楽しむことに意味がある?」
そんなふうに考えてしまうことがあります。
けれども、自分の体を整えること、自分が楽しめる時間を持つこと、気分よく日々を過ごすことにも意味はあります。
誰かに見せるための成果ではなくても、毎日の生活を続けていくために必要なものがあります。
自分だけ楽しむことに罪悪感がある
自分にお金を使おうとしたときに、罪悪感が出てくることもあります。
「家族は我慢しているのに、私だけ買っていいのかな」
「子どもに使うべきお金では?」
「親に何かしてあげたほうがいいのでは?」
そう考えているうちに、欲しかったものを買う気持ちがしぼんでいきます。
そして、結局いつものように、
「やっぱりやめておこう」
となる。
家族を優先してきた時間が長い人ほど、自分だけの楽しみにお金を使うことに慣れていない場合があります。
カフェでゆっくりするだけでも、
「こんなことをしていていいのかな」
と思う。
マッサージを予約しても、
「このお金で家族に何か買えたのに」
と考える。
楽しむための時間なのに、頭の中で家計会議が始まってしまいます。
家族のお金にまつわる経験が影響している
育った家庭のお金の使い方が、現在の感覚に影響していることもあります。
家計が苦しく、親がいつも我慢していた。
欲しいものを言うと、困った顔をされた。
自分のために何かを買うと、
「そんなものは必要ない」
「もったいない」
と言われた。
親が自分のものを買わず、家族のために働き続けていた。
そのような家庭で育つと、
「自分のためにお金を使うと、誰かに負担をかける」
「自分だけ欲しいものを買うのは申し訳ない」
という感覚が残ることがあります。
また、親にお金をかけてもらったことへの申し訳なさから、
「今度は自分が我慢する番だ」
と感じている場合もあります。
今のお金の使い方を考えているようで、過去の家庭のルールを守り続けていることもあるのです。
ただ、現在の家計や生活状況は、当時とは違うかもしれません。
今も同じ基準で自分に我慢をさせる必要があるのかは、あらためて考えてよいことです。
「私はいいから」が習慣になっている
「私はいいから」
「私の分は後でいいよ」
「みんなが決めて」
「余ったらでいいよ」
こうした言葉を、よく使っていないでしょうか。
最初は、周囲への気遣いだったのかもしれません。
けれども、それが長く続くと、自分でも本当に欲しいものがわからなくなることがあります。
家族で外食へ行くときも、みんなが好きな店を優先する。
旅行先でも、自分の行きたい場所は言わない。
買い物でも、自分のものは最後に回す。
すると周りも、
「この人はそれでいいのだな」
と思うようになります。
けれども、内側では少しずつ不満がたまっていることがあります。
「誰も私のことを気にしてくれない」
「私ばかり我慢している」
「どうせ私の希望なんて聞かれない」
そう感じるようになる前に、「私はいいから」が本当に今の自分の希望なのかを確認してみる必要があります。
欲しいものを選ぶことに慣れていない
自分にお金を使えない人は、欲しいものを選ぶこと自体に慣れていない場合もあります。
「何が欲しい?」
と聞かれても、すぐに答えられない。
「どれが好き?」
と聞かれると、相手が喜びそうなものを選んでしまう。
自分の希望より、値段や実用性、周りの反応を先に考えてしまう。
こうなると、自分のためにお金を使う以前に、
「自分は何を選びたいのか」
が見えにくくなります。
欲しいものがないのではなく、欲しいものを考える時間を自分に与えてこなかったのかもしれません。
コンビニで飲み物を選ぶとき。
ランチのメニューを決めるとき。
休日の過ごし方を考えるとき。
日常の場面で、自分の希望を確認することも練習になります。
人にはお金を使えるのに、自分には使えない人の特徴
次の項目に当てはまるものはあるでしょうか。
- 家族や友人へのプレゼントは迷わないのに、自分のものは何度も考えて買わないことが多い
- 自分の服や靴は傷んでも「まだ使える」と思って買い替えない
- 人のための外食にはお金を出せるのに、自分ひとりの食事は安く済ませようとする
- 美容院、整体、学び、趣味などを「私には贅沢」と感じやすい
- 「私はいいから」「余ったらでいい」が口癖になっている
- 自分のために買い物をすると、あとから申し訳なさが出てくる
- 誰かに喜ばれるお金の使い方なら納得できる
- 自分の欲しいものを聞かれると、すぐには答えられない
- 本当は欲しいのに、「必要ない」と言ってあきらめることが多い
- 人には「ちゃんと休んで」と言えるのに、自分は休むことを後回しにする
たくさん当てはまったとしても、それだけ長い間、誰かを優先してきたのかもしれません。
気遣いを重ねてきたのかもしれません。
ただ、そのやり方が今の自分を苦しくしているなら、これまでと違う選び方を試す余地があります。
自分にお金を使えない状態が続くと起こりやすいこと
不満がたまりやすくなる
自分の欲しいものや必要なものを後回しにし続けると、表面上は問題がないように見えても、内側に不満がたまりやすくなります。
最初は、
「私が我慢すればいい」
と思っていたのに、だんだん、
「どうして私ばかり」
と感じるようになることがあります。
特に、自分は我慢しているのに、周りが自由にお金を使っているように見えると、腹立たしさが出ることもあります。
けれども周囲は、本人がそこまで我慢しているとは知らない場合があります。
「私はいいから」
と言い続けてきたため、本当にそれでよいのだと思っているかもしれません。
尽くしているのに報われない気持ちになる
人のためにお金や時間を使うことが多いと、どこかで見返りを期待することがあります。
「これだけしているのだから、少しはわかってほしい」
「私が我慢していることに気づいてほしい」
「同じくらい大切に扱ってほしい」
そのように感じること自体は、不自然なことではありません。
けれども、相手は我慢の大きさに気づいていない場合があります。
こちらは犠牲を払っているつもりでも、相手から見ると、
「本人がそうしたくてしている」
と見えていることもあります。
自分が何を我慢しているのかを伝えないまま、相手に気づいてもらおうとすると、報われない気持ちが強くなります。
自分だけ我慢すると、周りも受け取りにくくなる
自分を後回しにし続けると、周りの人が受け取りにくさを感じることもあります。
家族にはよいものを出して、自分だけ残り物で済ませる。
相手には高価なプレゼントを渡すのに、自分は、
「私は何もいらない」
と言う。
受け取る側が、
「そこまでしなくてもいいのに」
「一緒に楽しみたいのに」
と感じることもあるでしょう。
自分だけが我慢する形になると、相手も素直に受け取りにくくなることがあります。
与える側と受け取る側が固定されることで、関係に偏りが生まれる場合もあります。
「私ばかり我慢している」という怒りに変わる
我慢が長く続くと、ある日、怒りとして出てくることがあります。
「私はずっと我慢してきたのに」
「みんな好き勝手している」
「誰も私のことを考えてくれない」
そう言われたとき、周囲は驚くかもしれません。
これまで本人が、
「私はいいから」
と言い続けてきたなら、本当に希望がないのだと思っていた可能性があるからです。
自分にお金を使うことは、単に買い物をすることではありません。
自分の必要や希望を後回しにしすぎないための意思表示でもあります。
自分に必要なものまで削っていないか
自分にお金を使うことと、考えずにお金を使うことは違います。
家計に余裕がない時期もあります。
優先しなければならない支払いがあることもあります。
今は買わないと、自分で決めることもできます。
ただ、
「本当に使えない」のか、
「自分にだけ使う許可が出ない」のかは、分けて考えたほうがよいでしょう。
疲れた体を整える。
仕事に必要な服を買う。
使いにくくなった日用品を買い替える。
学びたいことにお金を使う。
ひとりで落ち着いて過ごす時間を持つ。
これらは、必ずしも贅沢ではありません。
生活を続けるために必要なものまで削っていないか。
ほかの人なら買い替えをすすめる状態なのに、自分にだけ我慢を求めていないか。
そこを確認してみます。
自分のためにお金を使えるようになる三つの練習
自分のために使う予算を先に決める
自分のためにお金を使うたびに罪悪感が出る人は、あらかじめ予算を分けておく方法があります。
たとえば、月に3000円、5000円など、家計に合う金額を決めます。
本。
カフェ。
趣味。
美容院。
体のケア。
日用品。
使い道は自分で決めます。
「余ったら自分に使う」のではなく、最初から自分のために分けておくことがポイントです。
予算内であれば、使うたびに、
「買ってもよいだろうか」
と判断し直さずに済みます。
「必要か」だけでなく「本当はどうしたいか」を確認する
自分にお金を使えない人は、欲しいものが浮かんだ瞬間に、
「必要ない」
と打ち消すことがあります。
その前に、質問を変えてみます。
「本当は欲しい?」
「これがあると助かる?」
「今のものを使い続けると、何が困る?」
「私はどちらを選びたい?」
買うかどうかは、そのあとで決めればよいのです。
欲しいと思ったら必ず買わなければならないわけではありません。
ただ、自分の希望を聞く前に却下しないことが大切です。
使ったあとに、実際に何が変わったかを見る
自分のためにお金を使ったあと、
「やっぱり買わなければよかった」
「無駄だったかもしれない」
という気持ちが出ることがあります。
そのときは、罪悪感だけで結論を出さず、実際に何が変わったかを見ます。
靴を買い替えて、足が痛くなくなった。
美容院へ行って、朝の支度がしやすくなった。
本を読んで、考えが整理された。
カフェで過ごして、気持ちを切り替えられた。
整体へ行って、体が動きやすくなった。
使ったお金によって得られたものまで確認します。
すべての買い物が満足につながるとは限りません。
それでも、失敗したら次の選び方を考えればよいのです。
自分に使ったこと自体を間違いにする必要はありません。
まとめ|自分をいつも最後にしなくてもいい
自分にお金を使えないのは、単に節約が得意だからとは限りません。
自分にはお金をかける価値がないように感じていたり、人の役に立つことで自分の価値を確認していたり、自分だけ楽しむことに罪悪感があったりすることがあります。
育った家庭のお金の使い方や、
「自分は我慢する側」
という役割が影響している場合もあります。
「私はいいから」
と言い続けてきた人ほど、自分の欲しいものや必要なものを選ぶことに慣れていないこともあります。
必要なのは、高いものを買うことではありません。
生活に必要なものまで削っていないか。
自分の希望を、考える前から却下していないか。
自分のために使ったお金から、何を受け取ったのか。
そこを見ていくことです。
自分にお金を使おうとすると強い罪悪感が出る。
どうしても自分を後回しにしてしまう。
人に尽くしているのに、報われない気持ちや怒りがたまる。
そのような場合は、お金の使い方だけでなく、
「なぜ自分を最後にしてしまうのか」
「誰のために我慢してきたのか」
「自分に使うと、何が起こるように感じるのか」
を整理することで、今までとは違う選択が見えてくることがあります。
カウンセリングでは、現在のお金の使い方だけでなく、自分を後回しにするようになった背景や、人のために使うことで保ってきた関係についても一緒に整理していきます。




