父親の浮気で母が苦しむ姿を見ながら、「私は絶対にこんな結婚はしない」と思っていた。
それなのに、自分が結婚した夫にも浮気が発覚した。
父とは違う人を選んだつもりだったのに、なぜ同じことが起きたのか。自分の見る目がなかったのか、どこかでこの状況を選んでいたのかと、自分を責めてしまう女性もいます。
この記事では、子どもの頃に見ていた夫婦関係が、現在の相手選びや我慢の基準にどのような影響を与えるのかを整理します。
- 父親と同じ問題を持つ夫を選びやすくなる理由
- 父や母への感情が夫婦関係に与える影響
- 親と同じ関係を繰り返さないために確認したいこと
父と同じことをする夫を選んだのは、見る目がなかったから?
「父親の浮気であれほど苦しんだのに、どうして浮気をする夫を選んでしまったのだろう」
そう考えると、自分の選択がすべて間違っていたように感じるかもしれません。
しかし、結婚するときから「この人は浮気をする」とわかっていたわけではないはずです。
夫には優しいところや頼りになるところがあり、一緒に生きていきたいと思える理由があったはずです。交際中に多少の不安があったとしても、「結婚すれば変わるかもしれない」「私との関係なら大丈夫かもしれない」と思うこともあります。
人は、頭で条件を確認するだけで相手を選んでいるわけではありません。
なぜか気になる。放っておけない。もっとこちらを見てほしい。私ならこの人を理解できる気がする。
そうした感覚にも、これまでの人間関係で身につけた基準が影響します。
父親の浮気を見て育ったからといって、浮気をする男性を意識的に探しているわけではありません。
ただ、浮気や裏切りを含む男女関係が、本人にとってまったく知らない世界ではないことがあります。
子どもの頃に覚えた「夫婦とはこういうもの」
子どもは、両親の夫婦関係を見ながら、男女の関係を学んでいきます。
両親から直接教えられなくても、家庭の中で繰り返されていることを見て、夫婦とはどのようなものかを理解していきます。
父親が家に帰らない。母親が父親を待っている。父親にほかの女性がいるらしい。母親は傷つきながらも家庭を守ろうとしている。
そのような家庭で育つと、次のような考えを持つことがあります。
- 男性は、いつかほかの女性を選ぶ
- 妻は、苦しくても家庭を守るもの
- 愛する人を待ち続けるのが女性の役割
- 不満を言うと、相手が離れていく
- 裏切られても、簡単には関係を終わらせられない
本人がこの考えに賛成しているわけではありません。
むしろ、「母のようにはなりたくない」「父のような男性は選ばない」と強く思っている人もいます。
それでも、子どもの頃から見てきた関係は、自分にとっての夫婦関係の基準になっていることがあります。
穏やかに話し合える関係や、疑わずにいられる関係を経験したことがなければ、それがどのような感覚なのか想像しにくいからです。
嫌だった関係ほど、見慣れていることがある
父親の浮気が嫌だったのなら、父とは正反対の男性を選べば同じ問題は起きないように思います。
実際に、「浮気をしそうにない真面目な人を選んだ」「父とは性格がまったく違う人と結婚した」と話す女性もいます。
それでも、関係の中で感じる感情が、子どもの頃と似ていることがあります。
相手が何を考えているかわからない。自分より仕事やほかの人を優先される。こちらを向いてほしくて待ち続ける。相手の態度によって、自分の気持ちが大きく揺れる。
男性の性格や職業が父親と違っていても、関係の中で自分が置かれる立場が似ているのです。
落ち着いて愛情を示してくれる男性より、どこか距離があり、追いかけなければこちらを向いてくれない男性に強く惹かれる人もいます。
不安が大きいほど相手のことを考える時間が増えるため、その強い反応を「この人をとても好きだから」と受け取ることもあります。
見慣れている関係には、苦しさと同時に予測できる部分があります。
また待つことになる。いつか裏切られるかもしれない。私が頑張ればこの関係は続くかもしれない。
つらい関係であっても、どのように振る舞えばよいかを知っているため、初めて経験する穏やかな関係よりも、つらい関係のほうがなじみがあり、関わりやすく感じられることすらあるのです。
父に甘えられなかった気持ちが、夫への期待として表れる
父親が浮気をしていた家庭では、娘が父親に甘えにくくなることがあります。
父親が家にいない。母親が父親のことで苦しんでいる。母親の前で父親を好きだと言いにくい。
そのような状況では、本当は父親に会いたくても、その気持ちを言えないことがあります。
「お父さんにもっとこちらを見てほしかった」
「私のことを選んでほしかった」
「家族より、ほかの女性を選ばないでほしかった」
こうした気持ちを持つこと自体が、母親を裏切るように感じる子どももいます。
言えなかった気持ちは、成長したからといってすべて消えるとは限りません。
夫が自分より仕事やほかの女性を優先したとき、現在の夫に対する悲しみと、父親に選ばれなかった頃の悲しみが重なることがあります。
すると夫の浮気は、今起きている出来事だけではなく、過去の記憶や感情まで重なって感じられるほど、大きな意味を持つようになります。
「今度こそ、私を選んでほしい」
「この人に選ばれたら、私は愛される価値があると証明できる」
その思いが強くなるほど、夫の行動に納得できなくても、関係から離れにくくなる。
夫を好きな気持ちが残っていても、浮気や曖昧な扱いまで受け入れる必要はありません。
「夫を好きか」と「私はどのように扱われたいか」は、分けて考えることができます。
夫への気持ちを否定する必要はありません。
浮気されても好きなことや、夫に誘われるとうれしいこと、夫との時間を待ってしまうこともあるでしょう。
ただし、「好きだから耐えるしかない」と考えてしまうと、自分が感じている怒りや寂しさが置き去りになります。
母と同じ立場に立つことで、つながりを保つ
父親の浮気が続いていた家庭では、娘と母親の距離が近くなることがあります。
母親の愚痴を聞く。母親を励ます。父親の代わりに母親を支える。母親がこれ以上傷つかないように、自分は手のかからない子どもでいようとする。
子どもにとっては、母親を守るために必要な行動だったのかもしれません。
しかし、大人になっても母親を支える役割が続いていると、自分だけ母親とは違う夫婦関係を手に入れることに抵抗を感じる場合があります。
「私だけ幸せになったら、母を置いていくことになる」
「母が我慢したのだから、私も我慢しなければならない」
「母と同じ経験をすれば、母の気持ちをもっと理解できる」
本人がそのように意識して考えているわけではありません。
母親への愛情や忠誠心が、現在の夫婦関係に影響している可能性があるということです。
また、母親が父親に捨てられることを恐れていた場合、娘も「不満を言えば男性は離れていく」と感じるようになることがあります。
夫が浮気していても強く言えない。夫が帰ってきたときは機嫌よく接する。自分の寂しさより、夫が帰ってこなくなることのほうが怖い。
この状態では、夫への怒りがあっても、関係を壊したくないために飲み込むことが増えていきます。
親との関係を振り返ることと、夫の浮気の責任は分けて考える
親との関係が夫選びに影響していたと知ると、「結局、私が夫を浮気させたということなのか」と感じる人もいます。
ここは、はっきり分けて考える必要があります。
夫が浮気をするかどうかを決め、行動した責任は夫にあります。
親との関係を振り返るのは、自分がどのような男性に惹かれ、何を我慢し、どの時点で違和感を見過ごしやすいのかを理解するためです。
夫婦関係に問題があったとしても、浮気をしてよい理由にはなりません。
妻が変わったからといって、必ず夫が浮気をやめるとも限りません。
自分の過去を振り返る目的は、夫を変える方法を探すことだけではありません。
これまで自動的に選んできた立場から離れ、現在の自分がどうしたいのかを考えられるようにすることです。
「父も浮気をしたのだから、男性とはこういうものだ」
「母も我慢していたのだから、妻は耐えるものだ」
そうした前提を持っていることに気づけば、その前提に従い続けるのか、別の関係を選ぶのかを考えられるようになります。
親と同じ関係を繰り返していないか確認する
親との関係が現在の夫婦関係に影響しているかどうかは、次の問いを通して確認できます。
- 父親の浮気を知ったとき、本当は何を感じていたか
- 父親に言いたかったのに言えなかったことは何か
- 母親の愚痴や悲しみを聞く役になっていなかったか
- 両親を見て「男性とはこういうもの」「妻とはこういうもの」と何を学んだか
- 夫との交際中に感じた違和感を、どのような理由で見過ごしたか
- 夫へ不満を言ったら、何が起きると感じるか
- 穏やかで疑わずにいられる関係を想像すると、どのような気持ちになるか
答えを出そうとして考えすぎる必要はありません。
「なぜか腹が立つ」「考えたくない」「そんなことは関係ないと思いたくなる」と感じる問いには、まだ整理できていない感情が含まれていることがあります。
また、「父親のことは嫌いだから関係ない」と感じる場合もあります。
嫌いという感情の中に、怒りだけでなく、会いたかった、甘えたかった、私を見てほしかったという思いが残っていることもあります。
父親を好きだったと認めることと、父親の浮気を許すことは別の話です。
子どもの頃に父親を求めていた自分の気持ちを知ることで、夫に何を求め続けているのかが見えてくる場合があります。
父と母の夫婦関係を、自分の人生から分けていく
親と同じ夫婦関係を繰り返さないために必要なのは、父親と正反対の男性を探すことではありません。
父親の浮気を見た自分が何を感じたのか。母親を見ながらどのような役割を引き受けたのか。男性や結婚について、どのような考え方を持つようになったのか。
これらを現在の自分の視点から見直していくことが必要です。
子どもの頃には、母親を支えることで家族の中に自分の居場所を作っていたのかもしれません。父親を待ち続けることで、いつか自分を選んでもらえると信じていたのかもしれません。
その方法は、当時の自分が家族の中で生きていくために必要だった可能性があります。
しかし、現在の夫婦関係でも同じ役割を続ける必要があるかどうかは、改めて考えられます。
夫の浮気を知っても待ち続けるのか。
夫との関係を続けるなら、何を求め、何を受け入れないのか。
夫が変わることを待つ間、自分の生活や気持ちをどのように扱うのか。
こうした判断は、父親に選ばれなかった子どもの立場や、母親を支えていた娘の立場から行うと、苦しさを我慢する方向へ傾きやすくなります。
頭では「夫に振り回されたくない」と思っていても、行動を変えられないときには、夫を手放すことが、父親や母親とのつながりまで失うことのように感じられ、見捨てられるような不安が出てくることがあります。
カウンセリングでは、父親に言えなかった怒りや寂しさ、母親を置いて幸せになることへのためらい、夫に選ばれることで証明したかった自分の価値などを整理していきます。
過去の出来事そのものは変えられませんが、当時の自分が抱えた感情を解放し、子どもの頃に身につけた考えを、大人になった今の視点で見直すことはできます。
父と母の夫婦関係は、父と母が生きた関係です。
自分がどのような夫婦関係を選ぶか、どのような扱いを受け入れるかは、今の自分が改めて決めていくことができます。
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