頑張っているのに「今日も全然ダメだった」と思うのはなぜ?自分にだけ採点が厳しくなる心理

完璧主義に疲れてしまったイメージ 感情・心のしくみ

朝から仕事をして、頼まれたことにも対応した。

家に帰ってからは、食事を作り、洗濯もした。

連絡しなければならなかった相手にも、きちんと返信した。

それなのに、一日の終わりに思うのは、

「今日も全然ダメだった」

ということ。

周囲からは、

「十分やっているよ」

「そんなに頑張らなくてもいいんじゃない?」

と言われます。

けれども、自分ではそう思えません。

終わらなかった仕事が一つある。

返事が少し遅れた。

予定していたところまで片づかなかった。

その一つが気になり、できたことはすべて見えなくなります。

六つのうち五つ終わっていても、注目するのは残った一つ。

人に感謝されても、

「もっと丁寧にできたはず」

と反省する。

褒められても、

「この程度で褒めるなんて、期待されていないのかもしれない」

と受け取りません。

自分の中に、かなり厳しい査定担当者がいるようなものです。

しかも、その担当者は減点専門。

できたことには印をつけず、足りなかったところだけを赤字で囲みます。

これでは、どれほど頑張っても、自分に合格を出せません。

できなかった一つで、一日全部を不合格にしてしまう

自分への採点が厳しい人は、できたことと、できなかったことを同じようには見ません。

たとえば、予定していた仕事の八割が終わったとします。

一般的には、

「今日は八割できた」

と考えられるところを、

「二割も残してしまった」

と受け取ります。

誰かの役に立てたとしても、

「でも、もっと早く気づけたはず」

と思います。

忙しい一日の途中で少し休んでも、

「サボってしまった」

と判断します。

できたことは当然。

できなかったことは問題。

この採点方法では、百点を取らない限り、毎回失敗になります。

しかも、百点を取った日は、

「これくらいできて当然」

で終わります。

合格の日はなく、不合格の日だけが増えていくのです。

周囲の評価より、自分の評価のほうが厳しい

周りの人が認めてくれても、自分が認められないことがあります。

「助かったよ」

と言われても、

「でも、相手が気を使っているだけかもしれない」

と思う。

「よくやったね」

と言われても、

「もっとできる人なら、これくらい普通だろう」

と考える。

「少し休んだら?」

と言われても、

「まだ終わっていないのに休むなんて」

と思う。

他人からの評価を受け取らず、自分の採点だけを採用します。

しかも、その採点基準は、周囲が考えているものよりかなり高く設定されています。

自分では、

「もっとできるはずなのに、できていない」

と思っています。

けれども周囲から見ると、

「もう十分やっているのに、なぜまだ自分を責めるのだろう」

という状態になっていることがあります。

「もっとできるはず」が、自分を追い続ける

自分に厳しい人は、現在できていることよりも、理想の自分を基準にします。

もっと仕事が早い自分。

いつでも落ち着いて対応できる自分。

人に迷惑をかけない自分。

疲れていても機嫌よくいられる自分。

頼まれたことをすべてこなせる自分。

その理想と今の自分を比べて、

「まだ足りない」

と判断します。

問題は、理想の自分には、疲れも予定変更も体調不良もないことです。

いつでも十分な時間があり、集中力もあり、感情にも乱れがありません。

現実の自分は、眠い日もあれば、予定外のことが起きる日もあります。

仕事が重なることもありますし、誰かの対応で時間を取られることもあります。

その現実を採点に入れず、

「本来なら、もっとできたはず」

と考えれば、毎日不足になります。

なぜ自分にだけ厳しくなるのか

自分への採点が厳しくなったのには、これまでの経験が関係していることがあります。

きちんとできたときに褒められた。

迷惑をかけなければ、周囲が安心した。

成績がよければ認められた。

しっかりしていれば、家族の役に立てた。

失敗したときには、強く注意された。

そうした経験が重なると、

「できた自分には価値がある」

「できない自分は人を困らせる」

と考えるようになります。

誰かから直接、

「完璧でなければ価値がない」

と言われたわけではないかもしれません。

それでも、

ちゃんとしているときには受け入れられる。

失敗すると、がっかりされる。

手がかからないと褒められる。

そんな経験から、自分を認めるための条件が増えていきます。

仕事ができていること。

人に迷惑をかけていないこと。

感情を乱していないこと。

頼まれたことに応えていること。

その条件を守れている間だけ、自分に合格を出せるようになるのです。

できたことを認めると、気が緩みそうで怖い

自分を認められない人の中には、

「ここで満足したら、成長できなくなる」

と思っている人もいます。

八割できたことを認めたら、残りの二割をやらなくなる。

自分を褒めたら、努力しなくなる。

休んだら、そのまま怠けるようになる。

そのため、自分を動かすために厳しい言葉を使います。

「まだ足りない」

「こんなことで満足してはいけない」

「もっと頑張らなければ」

たしかに、その言葉で動けた時期もあったでしょう。

試験の前に勉強した。

締め切りまでに仕事を終わらせた。

周囲からも、努力できる人として評価された。

けれども、厳しさだけで長く自分を動かしていると、何をしても足りない感覚が残ります。

頑張ることはできても、終わったと感じることができません。

自分への評価が、成果ではなく反省会になる

一日の終わりに振り返ること自体は、悪いことではありません。

うまくいかなかった点を見直せば、次に生かせます。

ただ、振り返りが毎回、

「なぜ私はできなかったのか」

「また失敗した」

「もっと頑張るべきだった」

だけになると、改善ではなく自分を責める時間になります。

本来の振り返りは、

何ができたか。

何が残ったか。

なぜ残ったか。

次はどうするか。

を分けて考えるものです。

ところが、自分への採点が厳しいと、

「できなかった」

から、

「私はダメだ」

へ一気に進みます。

仕事を一つ残したことと、仕事ができない人であることは同じではありません。

返事が遅れたことと、誠実ではない人であることも別です。

今日は疲れて動けなかったことと、怠け者であることも同じではありません。

一つの行動から、自分全体を評価しないことが必要です。

他人に向ける基準と、自分に向ける基準が違いすぎる

友人が、

「今日は、予定していたことが全部できなかった」

と言ったら、どう答えるでしょうか。

仕事もして、食事も作り、家族の用事にも対応していたと知れば、

「それだけやっていたら、十分じゃない?」

と言うかもしれません。

友人が三日間忙しく働いたあと、

「少し休んでしまった」

と落ち込んでいたら、

「休まないほうが心配だよ」

と答えるでしょう。

後輩が一つ失敗して、

「自分は向いていないと思います」

と言ったら、

「一回の失敗で決めなくていい」

と励えるかもしれません。

ところが、自分に対しては、

「もっとできた」

「休むのが早い」

「また同じことをした」

と厳しくなります。

他人には事情を考慮するのに、自分には結果だけを求める。

他人には次があると言えるのに、自分には一度の失敗で結論を出す。

自分だけ、別の採点表を使っているのです。

自分への基準が高いことと、自分を雑に扱うことは違う

仕事の質を大切にしたい。

約束したことは守りたい。

人に迷惑をかけたくない。

そう考えること自体を変える必要はありません。

自分への基準を下げると、何もできなくなるわけでもありません。

ただ、

「できなかったところは見直す」

ことと、

「できなかった自分を責める」

ことは違います。

資料に間違いがあったなら、次から確認方法を変えればよい。

予定を詰めすぎて終わらなかったなら、次は量を調整すればよい。

疲れて対応が雑になったなら、先に休む時間を入れることもできます。

自分を責めるだけでは、次の方法は見つかりません。

厳しい言葉で追い立てるより、何が現実的だったのかを見るほうが、同じ失敗を減らしやすくなります。

百点ではなく、その日の条件で採点する

同じ一日でも、使える時間や体力は毎日違います。

よく眠れた日。

体調が悪い日。

急な対応が入った日。

家族の用事が重なった日。

気になることがあって集中しにくい日。

それらを無視して、毎日同じ百点を求めれば、無理が出ます。

今日は時間が少なかった。

それでも、必要な連絡は終わらせた。

急な仕事が入った。

予定していたものは残ったが、優先度の高いものには対応した。

体調がよくなかった。

最低限のことだけに絞った。

このように、その日の条件も採点に含めます。

「本来ならもっとできた」ではなく、

「今日の条件では、どこまでできたか」

を見るのです。

「できなかった」ではなく、「今回は残した」と考える

予定していたことが終わらないと、

「できなかった」

と考えます。

しかし、実際には、

優先順位を変えた。

時間が足りなかった。

急な予定が入った。

疲れて続けられなかった。

という場合もあります。

すべてを「自分の能力不足」にしないことです。

たとえば、

「今日は掃除ができなかった」

ではなく、

「今日は仕事を優先したので、掃除は明日に残した」

と考える。

「連絡できなかった」

ではなく、

「今日は返事に必要な内容を整理できなかったので、明日返す」

と考える。

言い換えだけで済ませるのではなく、自分が何を選んだのかを確認します。

何かを優先すれば、別のことが残るのは当然です。

全部を同時に終わらせられないことまで、自分の欠点にする必要はありません。

褒められたときに、すぐ否定しない

人から褒められたとき、

「いえいえ、全然です」

とすぐに返していないでしょうか。

謙遜として言うこともありますが、心の中でも本当に受け取っていないことがあります。

「助かった」

と言われたら、

「もっとできたのに」

を続ける前に、

「相手にとっては助かったのだ」

という事実を残します。

「よく頑張ったね」

と言われたら、

「まだ足りない」

と消す前に、

「そう見えた部分もあったのだ」

と受け取ります。

相手の評価を全面的に信じなければならないわけではありません。

ただ、自分の厳しい評価だけを唯一の正解にしないことです。

合格ラインを先に決めておく

その日の終わりに採点すると、できなかったことばかりが気になりやすくなります。

そのため、始める前に、

「今日はここまでできればよい」

と決めておく方法があります。

仕事では、最優先のものを二つ決める。

家事では、今日必要なものだけを決める。

休みの日なら、何もしない時間も予定に入れる。

全部できたら合格ではなく、何を終えたら今日は終わりにするのかを決めます。

追加でできたことは、合格条件ではありません。

余力があったからできたものです。

合格ラインを後から上げ続けると、いつまでも終了できません。

最初に決めたところまで終わったなら、

「今日はここまで」

と止める必要があります。

できたことを数えるのは、甘やかしではない

一日の終わりに、できなかったことだけでなく、できたことも確認します。

大きな成果である必要はありません。

時間どおりに起きた。

必要な連絡をした。

行きたくなかったけれど仕事へ行った。

疲れていたので、無理な予定を断った。

途中で投げ出さず、今日の分まで進めた。

人に頼ることができた。

それらも、その日に自分がしたことです。

できたことを見ると、

「この程度で満足してはいけない」

と思うかもしれません。

しかし、できたことを確認するのは、そこで成長を止めるためではありません。

現在地を正確に知るためです。

できている部分までゼロにしてしまうと、自分がどこまで進んでいるのかわかりません。

完璧にできない自分を許せない理由

自分への採点が厳しい人は、単に向上心が強いだけではないことがあります。

できなければ、人から見放される。

役に立たなければ、自分の居場所がなくなる。

失敗したら、信用を失う。

そんな感覚があるため、完璧に近づこうとします。

だから、

「もっと自分に甘くしましょう」

と言われても、簡単には変えられません。

自分を厳しく管理することで、これまで仕事や人間関係を保ってきたからです。

その厳しさを弱めると、全部が崩れるように感じます。

けれども、休んだ日があっても、これまで積み重ねてきたものが消えるわけではありません。

一度失敗しても、これまでの信頼がすべてなくなるとは限りません。

誰かに助けてもらっても、自分が役に立たない人になるわけではありません。

自分に求めるものを、人間ができる範囲に戻す

自分に甘くするか、厳しくするかの二択ではありません。

必要なのは、自分に求めるものを、現実の人間ができる範囲へ戻すことです。

疲れる日がある。

集中できない日がある。

判断を間違えることがある。

人に迷惑をかけることもある。

助けてもらうこともある。

予定どおりに進まない日もある。

それらをすべてなくさなければ合格できないなら、誰も合格できません。

完璧ではないことと、何もしていないことは違います。

一部できなかったことと、一日全部が無駄だったことも別です。

今日できたこと。

今日残ったこと。

次に回すこと。

それぞれを分けて見る必要があります。

自分への採点方法を見直す

一日の終わりに、

「今日もダメだった」

と思ったときは、すぐに結論を出さず、何を基準に採点しているのかを見ます。

今日、実際にしたことは何か。

予定外に対応したことはなかったか。

できなかったことは、何個あったのか。

それは本当に今日中でなければならなかったのか。

同じ一日を友人が過ごしていたら、何と言うか。

そのうえで、改善したいことがあれば、次の方法を決めます。

反省だけで終わらせず、

「明日は予定を一つ減らす」

「確認する時間を先に入れる」

「これは一人で抱えず、相談する」

と、具体的な対応へ変えます。

カウンセリングでは、自分に合格を出せないとき、どのような基準を自分に課しているのかを整理します。

失敗しないこと。

人に迷惑をかけないこと。

いつでも役に立つこと。

感情を乱さないこと。

その条件を守れなかったら、何が起きると感じているのかを見ていきます。

自分を責めることをやめるだけではなく、これまで厳しい採点によって何を守ってきたのかを知ることが必要です。

今日できなかったことがあっても、今日したことまでなくなるわけではありません。

一つ残った仕事が、一日全部を不合格にするわけでもありません。

こちらの記事もどうぞ

タイトルとURLをコピーしました