夜、布団に入って眠る準備をしたはずなのに、頭の中だけが元気いっぱい。
昼間の会話を思い出して、
「あの言い方、まずかったかな」
「相手はどういう意味で言ったのだろう」
「もっと違う返事をすればよかった」
と考え始める。
明日の仕事が気になり、失敗しない方法を探しているうちに、数年前の失敗まで思い出すこともあります。
考えても答えが出ないことは、自分でもわかっている。それなのに、同じところを何度も回ってしまう。
この記事では、なぜ考えすぎを止められないのか、考え続けることで何を避けようとしているのか、頭の中の会議を終えるために何を整理すればよいのかをお伝えします。
・問題を解決する考えと、同じところを回る考えの違い
・答えが出ないのに考え続けてしまう理由
・考えている内容の奥にある気持ちの見つけ方
問題を解決するために考えることと、考え続けることは違う
考えることには、必要な役割があります。
仕事の段取りを決める。
相手への伝え方を考える。
失敗した理由を振り返り、次に変えることを決める。
このように、考えた結果として何かが決まり、次の行動へ移れるなら、問題を整理するために考えています。
一方、考えるほど疑問が増え、最初と同じ場所へ戻ることもあります。
「あの人はなぜあんなことを言ったのだろう」
「私のどこがいけなかったのだろう」
「嫌われたのだろうか」
「本当はどう思っているのだろう」
相手にしかわからないことや、今となっては確かめられないことを考え続けても、はっきりした答えは出ません。
それでも、
「もう少し考えたらわかるかもしれない」
と思い、同じ会話を何度も再生します。
ここで起きているのは、単なる考えすぎとは限りません。
答えを探しているようで、実際には別のことを終わらせようとしている場合があります。
同じことを何度も考えてしまうとき、探しているのは正しい答えとは限りません。
納得できなかった気持ちや、言えなかった言葉の行き先を探していることがあります。
「正しい答え」が見つかれば、過去を変えられる気がする
失敗した出来事を何度も振り返るとき、
「どこで間違えたのかを見つけたい」
という気持ちがあります。
間違えた場所がわかれば、次は失敗せずに済む。
原因がわかれば、同じことは起きない。
そう思うからです。
ところが、その奥には、
「あの出来事をなかったことにしたい」
「失敗した自分のままで終わりたくない」
という気持ちが隠れていることもあります。
たとえば会議でうまく答えられなかったあと、
「あの質問には、こう答えればよかった」
「最初の説明が悪かった」
「資料の順番を変えるべきだった」
と振り返る。
次回の準備を決めたところで終われるなら、役立つ振り返りです。
けれども、そのあとも、
「そもそも、なぜ私はあんな失敗をしたのだろう」
「みんなは私を仕事ができない人だと思ったのでは」
「もう評価は戻らないかもしれない」
と続くなら、仕事の改善だけを考えているわけではありません。
失敗したときの恥ずかしさや、自信をなくした気持ち、評価を失う怖さまで何とかしようとしています。
しかし、過去の場面を何度再生しても、そのときの自分が言い直したり、やり直したりすることはできません。
そのため、考えても終わらないのです。
相手の気持ちを理解できれば、傷つかずに済むと思っている
人間関係の悩みでも、同じことが起こります。
相手から返事が来ない。
いつもより態度が冷たかった。
会話の途中で、気になる言葉を言われた。
すると、
「何か怒らせたかな」
「嫌われたのかもしれない」
「どういう意味で言ったのだろう」
と考え始めます。
相手の気持ちがわかれば、次にどうすればよいか決められるように感じます。
嫌われたとわかれば、これ以上期待せずに済む。
怒っている理由がわかれば、謝ることができる。
問題がないとわかれば、ほっとできる。
だから、相手の言葉や表情を何度も思い返します。
けれども、相手に確認しない限り、本当の気持ちはわかりません。
「忙しかったのかもしれない」
と思った直後に、
「でも、私にだけ冷たかった気がする」
という考えが出てきます。
「気にしすぎかもしれない」
と思っても、
「気づかないふりをしているだけでは」
と疑い始めます。
この状態では、どの答えを出しても、新しい疑問が生まれます。
本当に困っているのは、相手の気持ちがわからないことだけではないからです。
「もし嫌われていたら、私はどうなるのだろう」
「関係が終わったら、その悲しさに耐えられるだろうか」
「また、自分だけが何もわかっていなかったら悔しい」
その怖さが残っているため、相手の気持ちを完全に理解しようとしてしまうのです。
考えている間は、気持ちを感じずに済むことがある
何度も考えてしまう背景には、気持ちを直接感じることへの抵抗がある場合もあります。
たとえば、相手から傷つくことを言われたとします。
本当は悲しかった。
腹が立った。
もっとこちらの事情も聞いてほしかった。
そんな言い方をされる筋合いはないと思った。
けれども、その場では何も言えなかった。
あとになってから、
「相手はなぜあんな言い方をしたのだろう」
「私にも悪いところがあったのかな」
「機嫌が悪かっただけかもしれない」
と考え続けます。
相手の事情を考えている間は、自分がどれほど傷ついたかを見ずに済みます。
自分の反省点を探している間は、相手への怒りを感じずに済みます。
今後の対応を考えている間は、「わかってもらえなくて悲しかった」という気持ちから離れていられます。
考えることが得意な人ほど、つらいときにも頭を使います。
感情を出すより、状況を分析する。
人に話すより、自分の中で答えを出す。
腹を立てるより、自分にも原因がなかったかを考える。
その方法で多くの問題を乗り切ってきた人もいるでしょう。
ただ、気持ちは分析しただけでは終わりません。
何が正しかったかを考え続けても、悲しかった気持ちは悲しかったままです。
相手の事情を理解しても、言われた言葉が平気になるとは限りません。
自分の中で終わっていない出来事は何度も戻ってくる
何度も思い出す出来事には、自分の中で終わっていない何かが残っています。
たとえば、
- 言いたかったことを言えなかった
- 相手の説明を聞けないまま関係が終わった
- 謝ってほしかったのに、何もなかったように扱われた
- 自分だけが我慢して話を終わらせた
- 本当は納得していないのに、「もういい」と言った
出来事そのものは終わっていても、気持ちの中では終わっていません。
「あのとき何と言えばよかったのか」を考え続けるのは、言えなかった言葉が今も残っているからかもしれません。
「なぜあの人はあんなことをしたのか」を考え続けるのは、理由が知りたいだけでなく、自分が受けた扱いに納得できていないからかもしれません。
「私の何がいけなかったのか」を探し続けるのは、自分に原因があったと思うほうが、相手にはどうにもできない事情があったと認めるより受け入れやすいからかもしれません。
自分に原因があるなら、自分が変われば次は防げます。
けれども、相手の問題や、どうにもならない出来事だったとしたら、自分では完全に防げません。
その無力さを感じることがつらくて、自分の間違いを探し続けることもあります。
考えすぎが続くと、自分の気持ちがさらにわからなくなる
考えることに集中していると、自分の気持ちや希望が後回しになります。
「相手はどう思っているのか」
「私の対応は正しかったのか」
「普通ならどうするべきなのか」
という疑問ばかりになり、
「私はどう感じたのか」
「本当は相手にどうしてほしかったのか」
「これから私はどうしたいのか」
がわからなくなっていきます。
また、考えすぎて疲れていると、行動する力も残りません。
相手に確認したほうがよいと思いながら、連絡できない。
次の準備をしたほうがよいのに、過去の失敗を振り返るだけで一日が終わる。
休みたいのに、頭だけが仕事を続けている。
答えを出すために考えていたはずが、考えることによって何も決められなくなるのです。
頭の中の会議を終えるために確認したいこと
考えすぎていると気づいたときは、無理に何も考えないようにするより、考えている内容を分けてみます。
今、答えが出る内容かを確認する
まず、今考えて答えが出ることなのかを見ます。
「明日の会議で何を伝えるか」
これは自分で決められます。
「相手が私をどう思っているか」
これは相手に確認しなければわかりません。
「過去の自分は、なぜあんな言い方をしたのか」
当時の状況や気持ちを振り返ることはできます。
しかし、完全な正解を出すことは難しいでしょう。
今答えが出ないことなら、
「これは、今夜考えても結論が出ない」
と区切ります。
諦めるという意味ではありません。
自分で考えられる範囲を確認するということです。
事実と、自分の想像を分ける
考えている内容を、事実と想像に分けます。
「相手から半日返信がない」は事実です。
「私を嫌いになった」は想像です。
「会議で質問に答えられなかった」は事実です。
「全員が私を能力のない人だと思った」は想像です。
想像が当たっている可能性もあります。
ただ、まだ確かめていないことまで事実として扱うと、不安は大きくなります。
「何を考えているか」から「何を感じたか」へ移る
同じことを何度も繰り返しているときは、いったん考える内容から離れます。
そして、
「私はあのとき、どう感じたのだろう」
と確認します。
悲しかった。
恥ずかしかった。
腹が立った。
怖かった。
悔しかった。
期待していたぶん、がっかりした。
すぐに言葉が出なくても構いません。
「相手の態度が嫌だった」
「自分ばかり責められた気がした」
「本当はわかってほしかった」
というところから始められます。
今できることを一つだけ決める
考えたあとに何も決まらないと、また最初へ戻ります。
そこで、
- 明日、相手に確認する
- 伝えたいことをメモする
- 次回のために準備することを一つ決める
- 今は判断しないと決める
- 今夜は休み、明日の昼にもう一度考える
など、現在できることを一つだけ決めます。
すべてを解決する必要はありません。
今できることが決まったら、その日の会議は終了です。
方法を知っていても考えすぎが止まらないとき
「事実と想像を分ける」
「紙に書き出す」
「今できることを決める」
こうした方法を知っていても、同じことを考え続けてしまう場合があります。
そのときは、考え方を変えるだけでは足りないのかもしれません。
過去に、何も知らないまま裏切られた。
突然責められ、説明する機会をもらえなかった。
嫌だと言えず、我慢することで関係を保ってきた。
気持ちを話しても、考えすぎだと片づけられた。
こうした経験があると、今度こそ先に答えを見つけようとします。
何が起きるかを理解しておけば、以前と同じ思いをせずに済むと感じるからです。
けれども、本当に残っているのは、答えがわからない不安だけとは限りません。
あのとき何も言えなかった悔しさ。
信じたのに裏切られた悲しさ。
自分の気持ちを誰にもわかってもらえなかった寂しさ。
その感情が残っていると、現在の出来事をきっかけに、以前の会議まで再開します。
まとめ|考え続ける理由を、考え方だけの問題にしない
同じことを何度も考えてしまうとき、もっと考えれば正しい答えが見つかるように感じます。
しかし、答えの出ない問いを繰り返している場合、考えることだけでは終わりません。
その奥には、
「本当は何が悲しかったのか」
「何をわかってほしかったのか」
「何を言えないままにしたのか」
「同じことが起きたら、何が怖いのか」
という気持ちが残っていることがあります。
頭の中の会議が始まったら、何を考えているかだけでなく、何を感じたのかも確認してみてください。
そして、自分で答えを出せることと、相手に確認しなければわからないこと、今はもう確かめられないことを分けます。
それでも同じ出来事へ何度も戻ってしまうときには、現在の悩みと一緒に、過去に言えなかった気持ちを整理することが役立ちます。
カウンセリングでは、考えすぎを無理に止めることより、どの出来事がまだ自分の中で終わっていないのかを見ていきます。
そのとき感じた悲しさや怒り、悔しさを言葉にし、過去の自分には見えなかった事情を現在の視点から捉え直すことで、同じ問いを使って過去をやり直そうとする必要が減っていきます。
こちらの記事もどうぞ
何度考えても答えが出ず、過去の会話や失敗へ戻ってしまうときには、考えている内容の奥にある感情を一緒に整理できます。




