子どもが大きくなり、夫婦二人の時間が増えると戸惑うのはなぜ?|母親の役割が減った後の心理

会話がなくてどうしていいかわからない夫婦 恋愛・夫婦関係

以前は休日になると、子どもの部活動や買い物、送迎、家族の予定で一日が終わっていた。

最近は、「今日は友達と出かける」「夕食はいらない」と言われることが増えた。夫から「せっかくだから、二人で出かけようか」と誘われる。時間はあるのに、楽しみより「行くのが少しおっくうだな」と感じてしまう。二人で何を話せばよいのか、行きたい場所も思いつかない。

子どもに手がかからなくなったら、自分の時間を楽しめると思っていた。それなのに、いざ時間ができると「私は、何をしたかったのだろう」とわからなくなる。

自由になったはずなのに落ち着かない自分に、戸惑うことがあります。

子どもの話がなくなると、夫と何を話せばよいかわからない

子どもが中学生、高校生、大学生、社会人になるにつれ、親と過ごす時間は減っていきます。家を出ていなくても、友人関係や学校、仕事、恋人、趣味など、自分の世界を持つようになります。

それまで夫婦の間には、学校、進路、部活動、体調、必要な買い物など、毎日のように子どもの話題がありました。家族で出かけるときも、子どもが行き先や会話のきっかけを作っていたかもしれません。

ところが、子どもが自分で予定を決めるようになると、夫婦の会話から共通の話題が減ります。食卓で二人きりになり、テレビの話を少しした後、会話が止まる。

そこで初めて、

「私たち、子どものこと以外に何を話していたのだろう」

と気づくことがあります。

子育て中は、送迎や進路、学校への対応などを夫婦で相談してきました。気持ちを深く話していなくても、親として家庭を維持していくことでつながっていたのです。

その共同作業が減ると、子どもが間に入ることで、なんとなく保たれていた夫婦の距離が、はっきりと感じられるようになる。

夫婦関係が終わっているとは限りません。長い間、親として動くことが中心になり、夫婦二人で過ごす時間がほとんどなかった場合もあります。

子どもが大きくなった後に戸惑う背景は、一つではありません。

・子どもに必要とされることで、自分の価値を感じてきた
・母親以外の自分が何をしたいのかわからない
・子どもを通して保ってきた夫婦の距離が見えてきた

必要とされる母親でいることが、自分の価値になっていた

子どもから、

「お母さん、これやって」
「迎えに来て」
「話を聞いて」
「どうすればいい?」

と、何度も頼られてきた。

忙しくて、「自分でやってよ」と思う日もあったでしょう。それでも、自分がいなければ家のことが回らない、自分がこの子を支えているという感覚は、母親としての居場所にもなります。

子どもが成長すると、以前なら母親に聞いていたことを自分で決めるようになります。相談する相手も、友人や恋人、先生、職場の人へと広がります。

成長をうれしく思う一方で、

「もう私を必要としていないのではないか」
「子どもの中で、私の優先順位が下がった」
「母親としての役目が減ったら、私には何が残るのだろう」

という寂しさが出てくも場合があります。

これをすぐに「子離れできていない」「子どもに依存している」と決めつける必要はありません。まずは、自分が何を失ったように感じているのかを見ていくことが大切です。

長い間、必要とされることへ多くの時間と気持ちを注いできた人ほど、役割の変化に気持ちが追いつくまで時間がかかることがあります。

母親の役割が減ると、自分が何をしたいのかわからなくなる

家族の予定、子どもが必要とするもの、夫や子どもの好み、家族が困らないために必要なこと。

こうしたものを優先してきた女性が、急に「これからは好きなことをすればいい」と言われても、すぐには答えられないことがあります。

「何がしたい?」と聞かれても、

「別に何でもいい」
「特にない」
「面倒だから家にいたい」

と答えてしまう。

したいことが一切ないとは限りません。自分の希望を考える前に家族の都合を優先する生活が長かったため、自分だけの希望を感じ取り、それを選ぶことに慣れていないのです。

外食先なら、子どもが食べられる店や夫の好みを先に考える。休日の予定も、家族全員の都合を見て決める。

自分の時間ができても、自分を基準に予定を決める方法がわからないのです。

急いで趣味や目標を探すことだけが大事なのではありません。

何に興味を持つのか。何をすると疲れるのか。誰となら会いたいのか。休日は出かけたいのか、家で休みたいのか。

これまで後回しにしてきた自分の希望を、改めて知っていく時間が必要になることがあります。

夫から二人で出かけようと言われても面倒に感じる理由

夫から「久しぶりに二人で食事に行こう」と言われても、うれしいより先に「面倒だな」と思う。

この反応だけで、夫への愛情がなくなったとは判断できません。

面倒さの中身は、人によって違います。

・夫と二人で出かけることに慣れていない
・会話が続かず、気まずくなるのが嫌だ
・夫を楽しませるために気を配ることになりそう
・夫の行きたい場所へ付き合うだけになる気がする
・子育て中に誘ってほしかったのに、今さらと思う
・以前、夫に求めても応えてもらえず、期待することをやめた
・今度は夫に合わせるのかと思う
・長年の疲れが出ていて、一人で休みたい

夫は「二人の時間を作ろう」と考えているのかもしれません。けれど妻には、「また誰かに合わせる予定が増える」と感じられることがあります。

夫婦の外出そのものが負担なのか。夫に合わせることが負担なのか。会話に困ることが嫌なのか。過去の不満が出てくるのか。

同じ「面倒」という言葉の中にも、疲れ、不慣れさ、怒り、諦め、気遣いへの負担が混ざっている場合があります。

子どもとの関係で、夫に求めていたものを補ってきた場合

妻が夫に、話を聞いてほしい、必要としてほしい、気持ちをわかってほしいと思っていても、夫からそれらを十分に受け取れなかった場合があります。

その寂しさを意識しないまま、話しかけてくれたり頼ってくれたり、感情を素直に見せてくれる子どもとの関係の中で、その不足を埋めてきた人もいます。

そのつながりが、夫との間で得られなかった親密さや、必要とされる感覚を補えていたなら、子どもが離れていくことは、子どもが大人へと成長して家を離れていくのを見守ること以上の寂しさになります。

「成長を喜べない母親なのではないか」

と自分を非難する前に、

「子どもに必要とされなくなることで、私は何を失うように感じているのだろう」

と考えてみる必要があります。

母親としての居場所なのか。毎日の目的なのか。会話の相手なのか。夫との間をつなぐ存在なのか。

そこがわかると、子どもの生活に関わり続ける以外の選択肢も考えやすくなります。

夫婦二人の時間を、急いで増やさなくてもよい

夫婦の会話が減ったとき、「共通の趣味を持ちましょう」「定期的に出かけましょう」「毎日会話の時間を作りましょう」と勧められることがあります。

役立つ人もいるでしょう。

ただ、話したいことがない状態で会話の量だけを増やすと、宿題のようになってしまう場合があります。

まず整理したいのは、夫と二人になると自分の中で何が起きるのかです。

・これまで夫婦は何を通じてつながっていたか
・子ども以外に共有してきたものはあるか
・夫と二人になると、退屈、緊張、怒り、疲れのどれを感じるか
・話したくないのか、何を話せばよいかわからないのか
・夫へ言わずにきたことがあるか
・夫と何かをしたいのか、一人の時間を持ちたいのか

夫婦二人の時間を増やすことを、最初の目標にしなくてもよいのです。

以前の夫婦に戻るより、今の二人に合う関係を作る

子どもが大きくなっても、子どもが生まれる前の夫婦へ、そのまま戻れるわけではありません。

長い年月の中で、夫も妻も、仕事、体力、興味、休日の過ごし方が変化しています。

これから考えるのは、

・今の二人なら何を共有できるのか
・一緒に過ごす時間と、別々に過ごす時間をどう持つのか
・お互いに、これからどのような生活を望んでいるのか

ということです。

いつも一緒に出かけ、同じ趣味を持つことだけが答えではありません。

別々に過ごす時間を持ちながら、必要なことは相談できる。そんな形もあります。

母親以外の自分は、これから何をしたいのか

子どもに手がかからなくなった後、今度は夫との関係だけに時間を注ぐ必要はありません。妻自身にも、家族のために使う時間とは別の生活があります。

ただし、長い間、自分の希望を後回しにしてきた人が、急に大きな目標を決めようとしても苦しくなります。

家族の希望を考えずに選べるなら、休日をどう過ごしたいか。以前は興味があったけれど、時間がなくてやめたことはあるか。一人の時間はどのくらい欲しいか。

すぐ答えが出なくても、「何もしたくない」と感じるなら、まず休みたいほど疲れている可能性もあります。

今の自分が何を好み、何を負担に感じるのかを知るところから、新しい生活が見えてきます。

自分の中で起きていることを整理する

次の問いに、はっきりした答えを出す必要はありません。気になるものから考えてみてください。

・子どもが家にいないとき、私はどのような気持ちになるか
・子どもに必要とされなくなることで、何を失うように感じているか
・家族の希望を考えずに選べるなら、休日をどう過ごしたいか
・夫と一緒にいたくないのか、二人で何をすればよいかわからないのか
・夫と出かけることの、何を面倒に感じているか
・夫と二人になると、どのような気持ちが出てくるか
・夫婦の時間と一人の時間を、どの程度持ちたいか

同じ悩みに見えても、理由は人によって異なる

「夫と話すことがない」
「二人で出かけるのが面倒」
「子どもがいないと落ち着かない」

同じ言葉を使っていても、その背景は同じとは限りません。

夫に期待することを諦めている人もいれば、二人で過ごすことに慣れていないだけの人もいます。子どもが離れていく寂しさが強い人、母親以外の自分がわからない人、長年の疲れが出ている人、これ以上夫に合わせる生活を増やしたくない人もいます。

そのため、「夫婦で出かければよい」「趣味を持てばよい」「子離れすればよい」という一つの方法では、かえって苦しくなるのです。

これまでの家族関係、夫婦の距離、母親として担ってきた役割、子どもとのつながり、自分に対する見方を分けて整理する必要があります。

まとめ

子どもが自分の世界を持ち始め、夫婦二人で過ごす時間が増えると、自由より戸惑いを感じることがあります。

夫と話すことがないからといって、夫婦関係が終わっているとは限りません。子どもの話題や予定を通して会話し、親として家庭を維持すことで、つながりを保ってきた場合があります。

子どもに必要とされることが、自分の価値や居場所になっていた人は、母親としての役割が減ると、自分が何をしたいのかわからなくなることもあります。

夫との外出が面倒な理由も、不慣れさ、疲れ、怒り、諦め、気遣いへの負担など、人によって違います。会話や外出を急いで増やすだけでは、気持ちが置き去りになることがあります。

これから考えていくのは、子どもが生まれる前の夫婦を再現する方法だけではありません。今の二人に合う関係と、妻自身が望む生活の両方です。

自分だけで考えると、夫への不満、子どもへの寂しさ、自分の将来への戸惑いが重なり、何から整理すればよいかわからなくなることがあります。

カウンセリングでは、子どもに必要とされることで何を感じてきたのか、母親の役割が減ることで何を失ったように感じるのか、子どもの成長以前から夫婦の間にどのような距離があったのかを、その人のこれまでの生き方に合わせて見ていきます。

さらに、夫から誘われたときに何を負担に感じるのか、夫に求めても受け取れなかった気持ちを子どもとの関係で補ってきた部分があるのか、自分の希望を考えないようになった背景には何があるのかも整理できます。

「子離れをする」「趣味を持つ」「夫婦で出かける」と答えを決める前に、自分の中で何が起きているのかを知ること。そのうえで、夫婦の時間と自分の時間をどのように持ちたいのか、これから母親以外にどのような自分でいたいのかを考えていくことが、今の生活に合う関係を作る出発点になります。

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