「ちゃんと話せば、いつかはわかってくれるはず」
そう思って、何度も同じことを説明する。
「私がもう少し頑張れば、きっと状況は変わる」
そう考えて、仕事や家事をさらに引き受ける。
けれども、何度やっても相手の態度は変わらない。状況も良くならない。それどころか、自分ばかりが疲れていく。
周囲からは、
「もう違うやり方を考えたほうがいいんじゃない?」
「そこまで自分でやらなくてもいいのでは?」
と言われることもあります。
自分でも、今のままではうまくいかないと薄々わかっています。
それでも、なかなかやり方を変えられないことがあります。
やり方を変えると、これまでの自分が否定される気がする
同じやり方を続けてしまうのは、単に他の方法を思いつかないからとは限りません。
別のやり方を試すことに、抵抗がある場合もあります。
たとえば、長い間ひとりで頑張ってきた人が、誰かに頼る方法を勧められたとします。
頭では、
「頼ったほうが楽になるかもしれない」
とわかっていても、素直にそうできないことがあります。
誰かに頼ってうまくいったら、
「では、これまでひとりで頑張ってきたのは何だったのだろう」
と思ってしまうからです。
話し合うことにこだわってきた人なら、距離を置くという方法を選ぶことで、
「今まで何度も話し合おうとしたことが、無駄だったように感じる」
こともあります。
やり方を変えることが、方法の変更ではなく、これまでの自分を否定することのように感じられるのです。
そのやり方で、乗り越えてきたこともある
自分のやり方にこだわるのには、理由があります。
これまで、その方法で何とかやってこられたからです。
人に頼らず、自分で考えて動くことで、困った状況を乗り越えてきたのかもしれません。
言いたいことを我慢することで、家族の中の揉め事を増やさずに済んだのかもしれません。
何度でも説明することで、ようやく話を聞いてもらえた経験があるのかもしれません。
その時の自分には、その方法が必要だったのでしょう。
だから、今もうまくいかなくなったからといって、
「最初から間違っていた」
と考える必要はありません。
以前は役に立っていた方法が、今の状況には合わなくなっていることもあります。
冬に役立った厚いコートを、夏になっても着続けていたら苦しくなります。コートが悪いのではなく、今の季節には合わないということです。
やり方についても、似たことが起こります。
別の方法を選ぶことは、負けることではない
私自身も以前は、自分のやり方にかなりこだわるほうでした。
人から別の方法を提案されても、
「いーや、私はこの方法でやる」
と、なかなか受け入れられませんでした。
別の方法でうまくいったら、自分が間違っていたことになるように感じていたのです。
「これまでの努力が無駄だったと認めるくらいなら、もう少しこの方法で頑張る」
そんな気持ちもあったのだと思います。
けれども、やり方を変えることと、これまでの自分を否定することは同じではありません。
これまでの自分は、その時にできる方法で頑張ってきました。
その経験があったからこそ、
「この方法では、これ以上うまくいかないようだ」
とわかるようになったとも言えます。
違う方法を選ぶのは、負けを認めることではありません。
今の自分に合う方法を、改めて選び直すということです。
何を変えるかより、何を守ろうとしているかを見る
うまくいかない時に、無理やり行動を変えようとしても、元のやり方に戻ってしまうことがあります。
そんな時は、すぐに「どう変えればいいのか」を考えるよりも、
「私は、このやり方を続けることで、何を守ろうとしているのだろう」
と考えてみるほうが役立つことがあります。
誰にも頼らないことで、失望しないようにしているのかもしれません。
自分が正しいと思えるやり方を続けることで、これまでの努力を無駄にしないようにしているのかもしれません。
相手に何度も説明することで、「ここまでやったのだから」と納得しようとしているのかもしれません。
そこがわかると、自分のやり方を全部捨てる必要はなくなります。
残したい部分は残しながら、今は合わなくなった部分だけを変えることもできます。
やり方を変えられない理由を整理する
頑張っているのに状況が変わらない時は、努力が足りないのではなく、同じ方法を続けざるを得ない理由があるのかもしれません。
カウンセリングでは、
- そのやり方が、これまで何を支えてきたのか
- 別の方法を選ぶと、何が失われるように感じるのか
- 今も必要な部分と、もう必要ではない部分はどこなのか
を一緒に整理していきます。
自分のやり方をすべて捨てるのではなく、これまでの自分が頑張ってきたことも認めながら、今の状況に合う方法を探していくことができます。



