「ありがとう」と感謝を伝えることって、人間関係を良くしていくえで大切なのだという話しは、皆さんも聞いたことがあるかもしれませんね。
カウンセリングでもよく、「感謝してみましょう」なんてご提案したりもするのですが、関係性を良くしていくために感謝を伝えるということが、間違っているわけではありません。
間違っているわけではないのですが、「ありがとう」と感謝を伝えたら、すぐに関係性が良くなるというわけではありません。
そんなに簡単にコトは進まない
例えば、最近ケンカが増えてギクシャクしているカップル。
以前のように仲良くなりたいと思った彼女が、「よし!彼に感謝を伝えよう!」と、「いつもありがとう」なんて伝えたとしましょう。
「よし!感謝を伝えたし、これで私たちの関係は良くなる!」
とは、思わないかもしれませんが、多少の期待を持つかもしれませんね。
「俺の方こそ、君にいつも感謝しているよ」なんて、言ってくれちゃったりなんかして・・・と、妄想などはしないでくださいね。
そのようなことは、まず起こりません。
だって、最近ケンカが増えてギクシャクしているわけです。
ケンカしているということは、お互いに怒りがたまっているわけです。
いくら感謝には、怒りを和らげる効果があると言っても、ガッチガチに固まった怒りの塊を、たった一度感謝したくらいで、和らげられるわけはない。
確かに相手に感謝の気持ちを伝えることは、関係性を改善していくときに大切なことではあります。
ですが、人の心というのは、少々面倒な部分があって、感謝の気持ちを受け入れて、お互いの怒りが消えていくのに、時間もかかりますし、それまでに色々なことが起こるものなのです。
まずは疑いが出てくる
「いつもありがとう」と彼女が彼に伝えると、おそらく彼の反応は、「は??」となります。
だって最近よくケンカしているわけですから、そんな状態の彼女から突然感謝されると、まず【疑い】が出てきます。
「は??」と彼に反応された彼女は、「いや・・・だから、いつもありがとうって・・・」となります。
疑い満載の彼は、「急になんだよ!本当はそんなこと思ってもいないくせに!」と言います。
もしくは、「何か俺に隠し事でもしていたのか?」なんて更に疑ってくるかもしれません。
せっかく普段は言わない感謝の気持ちを、関係性を良くしたくて勇気を出して言ったにも関わらず、そのような反応が返ってきた彼女はどうなるか?
「なによ!人がせっかく感謝したのに!もういいっ!二度と感謝なんてしない!」
ガラガラガラ!ビッシャーーーーン!
心のシャッターを下ろしてしまうかも?
そして彼もまた、「ふんっ!やっぱりなっ!ありがとうなんて思ってもいなかったんだよなっ!」
ガラガラガラ!ビッシャーーーーン!
だいたいこのような結果に終わることが多いかもしれませんね。
だから、関係性を良くしようと感謝を伝えるチャレンジをするときは、最初は相手は疑ってくるであろうということを、わかっておいていただきたいのです。
「そうなのね。は??なんて言われても気にしなければいいのね」と思うかもしれませんが、確かにそうです。
でもその疑いは、一回や二回感謝を伝えたくらいでは、解消されるものではありません。
何回も何回も、「本当はそんなこと思ってもいないくせに」「なんだよ、裏があるのか?」「何を企んでいる?」と、執拗に繰り返されます。
ええーーーーっ!!面倒だっ!
とは思わないでくださいね。
だって、立場が逆であったとしたら、やっぱり疑うでしょ?
ケンカばかりしている相手から、「いつもありがとう」なんて言われたら、疑いまくりですよね。
ですから、最低3か月。
できれば半年は頑張り続けなくてはいけません。
とにかく長期戦
そして、言っておきますが、相手に感謝していることが、本当に伝わる前に、相手は今までで一番暴れます。
「もう、良い加減してくれ!」「嘘はもういいんだっ!」「もういいっ!やめてくれっ!」たくさん罵倒されちゃうかもしれません。
でもこれは、最後の最後のあがきです。
何をあがいているのか?
「こんな俺が感謝などされるはずがない」という思い込みがあがいているのです。
そのような思い込みにとどめを刺すためには、本気で相手に向かって行かねばなりません。
「誰が何と言っても、私はあなたに感謝しているし、あなたのことが大好きなの!一緒にいたいの!あなたが必要なの!」
サクッととどめを刺してやってください。
ポイントは、これは本気でやらないとダメということ。
「なるほど~最後の最後に暴れるのね。暴れたらあのセリフを言えばいいのね」と、テクニックとして言おうとすると、失敗します。
本気です!!
あなたの本心をビシッ!と伝えないと、「こんな俺が感謝などされるはずがない」という最後の悪あがきは終わりません。
誰だって自信がないから疑う
カップルの場合としてお話ししましたが、親子の場合でも、友人同士の場合でも同じです。
人は感謝しているときには、不思議なもので怒りの気持ちが出てこないものです。
ですから、関係性を良くしたい人に対しては、何か感謝できるところはないかな?と探して伝えることが大切です。
でも、ほとんどの人は、誰かの役に立ちたい、必要とされたいと思いつつも、「こんな自分が役に立てるわけがない」「こんな自分が必要とされるわけがない」と自信がありません。
まして、関係が悪化している状態なのだとしたら、余計に自信などあるあるはずがないのです。
だから、疑うことをします。
疑われると、「そんなことはない!」と反論したくなってしまうのですが、どうしてそうなるのか?
人に感謝している自分のことを、自分でも疑っているからです。
「いやいや、この私が、人のことを心の底から感謝できるわけがないよね。だって、私って嫌な奴だもんね」
だから、相手の疑いに対して、痛いところを突かれた!となるのです。
そして、「私が感謝しているのに、それを疑うなんてなんてひどい奴!」と、感謝のことはすっかり忘れて、またしても怒りに飛びついてしまいます。
そもそも自分のことを、嫌な奴だと思っていなければ、相手が疑ってきたとしても、「ん?何を言っているのだろうか?お腹でも痛いの?」くらいの反応になるはずなのです。
つまり、私たちはみんな、基本的に自信がないということなのかもしれませんね。
というわけで、感謝は関係性を良くしていくためにとても大切なツールで、「ありがとう」を伝えるということは、単純なことなのですが、とっても難しいということなのです。
だからって、できないわけじゃないですからね。
どれだけ関係改善に、本気になれるかがポイントなのかもしれませんね。