「自分でやった方が早い」がやめられないのは、心のクセでした

「自分でやった方が早い」と抱え込みすぎる人のイメージ 仕事・対人関係

頼んで待つより、自分でやる方が早いし確実。
そう思って、なんでも引き受けてしまう人はいませんか?

仕事でも家庭でも、「つい自分で抱え込んでしまう」クセがある人は、実は少なくありません。
それ、単なる効率重視ではなく、心のクセかもしれません。

本記事では、「自分でやった方が早い」に隠れた心理と、それが引き起こす落とし穴について、具体例を交えて解説していきます。


◆「自分でやった方が早い」の裏にある“スピード信仰”

仕事や家事、連絡のやりとりなど……
あらゆる場面で「人に任せると遅い」「結果的に手間が増える」と感じたこと、ありませんか?

たとえば:

  • 後輩に資料作成を任せたら、レイアウトが崩壊していて修正に2倍の時間がかかった
  • 夫に洗濯を頼んだら、柔軟剤の代わりに洗剤をダブル投入していた
  • 子どもに先生への連絡の手紙を持たせたら、ランドセルに手紙入れたまま帰ってきた

……そんな経験があると、「もういい、自分でやる!」と心に誓いたくなるのも当然。

でもその積み重ねが、「自分でやるしかない」という前提を強化していくんです。


◆ 自分でやるクセの正体:「信じていない」から

本当に「自分でやる方が早い」人は、仕事も家事も要領が良く、スピードも精度も高い。
ただし——その分、他人を「待てない」「信用できない」と感じやすい傾向もあります。

たとえば、職場で同僚に資料の一部を任せてみたところ、提出期限ギリギリになっても出てこない。
「このままだと間に合わない」と感じた瞬間、結局すべてを自分で作り直してしまう……なんてことも。

こうした「信じるより、自分が動いた方が早い」というスタンスは、裏を返せば「他人に期待してがっかりしたくない」という防衛反応でもあるのです。


◆「期待すると傷つくから、最初から頼らない」戦略

「どうせやってもらえない」
「頼んだら文句を言われそう」
「お願いすること自体がストレス」

そんな予測をもとに、最初から「頼る」という選択肢を排除する人がいます。
まるで、「期待すると裏切られるから、最初から期待しない」という“恋愛の予防線”みたいに。

でも、これを繰り返すと、どんなに忙しくても、疲れていても、「誰にも頼らない」がデフォルトになってしまうんです。

そして気づけば——
誰からも「助けが必要そう」に見えなくなっている。

これは、効率的で自立的な人ほど陥りやすい、“孤立のスパイラル”とも言えます。


◆ 本当に「早くて正確」なだけ? 〜 実は“安心感の補償行為”かも

心理学では、こうした「自分がやらなきゃ」と無意識に頑張り続ける傾向を、“補償行為”と呼ぶことがあります。

たとえば:

  • 「ちゃんとしていない自分」は見せられない
  • 「頼ってはいけない」という思い込みがある
  • 「仕事ができない人」と思われるのが怖い

そんな心の前提があると、「頼る=負け」「任せる=怠け」と無意識に思ってしまうことも。

つまり、「自分でやった方が早い」というのは、ただの効率ではなく、「不安を打ち消すための行動」になっている可能性もあるのです。


◆ 過去の経験が、このクセを育てた

こうした行動パターンは、過去の環境や人間関係から身についたことも多いです。

たとえば:

  • 子どもの頃、頼っても親が助けてくれなかった
  • チームで動いたらトラブルになり、自分が尻拭いをした
  • 「ちゃんとしないと認められない」と感じていた

そんな体験が、「人に任せると、あとで困る目に遭う」という“人生の教訓”になっていることも。

すると、大人になってもその信念は更新されず、
「やるしかない」「自分でやった方がマシ」という結論だけが生き残ってしまうんです。


◆ 頼ることを避けるほど、一人で抱え込む

「人に頼ること=迷惑をかけること」と思っている人は、自分に厳しい反面、他人にも「自分でやるべき」と無言のプレッシャーをかけていることがあります。

しかも、自分が頑張ることが当たり前になっていると、まわりも「この人に頼んだら早いし安心」と、どんどん依存してきます。

すると、

  • 自分は誰にも頼れない
  • でも周りは私に頼ってくる

……という不公平な構造が生まれ、
そのうち「なんで私ばっかり」と疲弊してしまうことに。


◆ ちょっと頼ってみる練習。「5分遅れても、まあいっか」

頼ることを「お願い」ではなく「実験」としてやってみるのも手です。

たとえば:

  • 母親の病院送迎を、いつも自分でやっていたのを、たまには兄に任せてみる
  • 5分遅れで迎えに来たけど、特に事故もなく、母も無事に診察を受けた

その結果、「あれ、任せても大丈夫だったかも」という“新しい事実”が蓄積されていくと、
ようやく心の中の「信じられない警報機」も少しずつ静まっていきます。


◆ まとめ:“自分でやる人”が、人に任せられるようになるまで

「自分でやった方が早い」は、正しいことも多い。
でもそれが習慣になりすぎると、自分が“チームの便利屋”になってしまうリスクもあります。

  • 人に頼ることは、依存ではなく「信頼」
  • 「誰にも迷惑かけない」より、「たまには頼っても、大丈夫」な関係のほうが長持ちする
  • 何でも完璧にやるより、「ま、いっか」で任せる余白をつくる方が、むしろ信頼されることもある

「やるべきこと」と「やらなくていいこと」の境界線を引き直すこと。
それが、自分の人生に“頼りどころ”をつくる第一歩になります。


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