「マジメだね」「しっかりしてるね」「気が利くよね」
……そう言われたのに、なぜかモヤモヤする。
「それって、本気の褒め?それとも、何か裏ある?」
そんなふうに、“褒め言葉”を素直に受け取れないとき、ありませんか?
もしかしたらそれ、心のクセのせいかもしれません。
この記事では、「褒め=操作」と感じてしまう心理の背景と、そこから自由になるヒントをお届けします。
◆ なぜか、褒められると身構えてしまう
たとえばこんな場面。
職場でプレゼンを終えたあと、先輩にこう言われる。
「いや〜、〇〇さんって本当にしっかりしてるよね。安心感あるわ〜」
そのときは「ありがとうございます〜」って笑顔で返すけど、心の中ではこうなっている。
(え、それって“地味”って言いたい?)
(安心感あるって…おばさん感あるってこと?)
(っていうか、それって次回も任せるからよろしくってフリじゃない?)
この“裏読み力”、もはや特技です。
でも、褒められたはずなのに疲れるって、どういうこと?
実はそこに、無意識の警戒スイッチが入っているのかもしれません。
◆ 「褒め=操作」に変換される理由
褒められるとすぐに疑ってしまう。
この反応の背景には、「過去の学習経験」が関係しています。
たとえばこんな記憶——
- 子どものころ、「えらいね」と言われた直後にお手伝いを頼まれた
- 「さすが頼りになるね〜」と言われて、土日も出勤する羽目になった
- パートナーに「料理おいしいね」と言われた翌週、三日分作り置きをお願いされた
そう。褒めの直後に“何かが来る”経験を積み重ねていると、
脳は学習するんです。
「褒め=なにかをさせる前フリだな」
こうして、素直に「ありがとう」と言うよりも早く、
「で、何が目的?」と身構える思考回路が育ってしまいます。
これは“性格のせい”ではなく、過去のパターン記憶の影響なのです。
◆ 投影が起きているかもしれない
「投影」とは、心理学で言うと「自分の中の感情やクセを、他人に映し出すこと」。
つまり、自分が以前こんなふうにしていたなら——
- 表向きは「すごいですね〜」と笑顔、でも内心は「でも私の方ができるし」と思っていた
- 面倒な人に対して、「優しいですね」と言って、実は距離をとるための“やんわり断り”だった
- 話を早く終わらせたいときに、とりあえず「さすがですね」と褒めて切り上げた
……そんな記憶があると、
いざ自分が褒められたとき、こう思ってしまうのです。
「自分も“褒め”を使ってたし、相手もそうでしょ?」
結果、“褒めには裏がある”としか信じられなくなるクセが育っていきます。
◆ 自己評価が低いと、褒めが“不信”になる
もうひとつ見逃せないのが、自己評価と褒め言葉のズレです。
たとえば、自分のことをこう思っていたとします。
- 「私なんてまだまだ」
- 「全然ちゃんとできてない」
- 「むしろ失敗ばっかりだったのに…」
そんなときに、
「ほんとしっかりしてるよね」
「マジメで助かる」
と言われると、こうなります。
「いや、それはないわ」
「この程度で褒めるとか、バカにしてる?」
「むしろ“できてない感”を気づかれないように気を遣われてる?」
つまり、相手の評価を“信じられない”のではなく、“自分が自分を認めていない”だけ。
褒めにザワつくのは、「信用できない相手」ではなく、
「信用できない自分」とのギャップが原因なのかもしれません。
◆ “褒められ筋”が育っていないだけかもしれない
褒めを受け取るのが苦手な人って、意外と多いです。
その多くが、これまで「褒められる経験」が少なかった人たち。
- がんばっても「まぁ、それくらいは普通でしょ」と流された
- 褒められると「調子に乗るな」と釘を刺された
- 褒められるより先に、できてない部分を指摘されてきた
こんな経験を繰り返していると、
褒められても、「いやいやいやいや…」と“拒否ボタン”が即押される。
「褒め=照れ」「褒め=気まずい」
そうやって受け取る回路が錆びついてるだけ。
つまり、“褒められ筋”が育ってないだけなんです。
筋トレと一緒で、少しずつ慣れていけば、ちゃんと育ちます。
◆ 褒めは“評価”ではなく、“ただの感想”かもしれない
「マジメだね」
「しっかりしてる」
「安心感ある」
これらの言葉に、「なんか上から来てない?」と感じてしまうこともあります。
たとえば、言った人がちょっと年上だったり、距離がある人だったりすると、
どうしても“評価されてる感”が出てしまう。
でもその言葉、
もしかしたら「ただの感想」だったのかもしれません。
- 「あ、そう感じたんだな」
- 「今の自分って、そんなふうに見えるんだ」
そう受け取ってみると、褒め=承認ではなく、ただの共感になる。
すると、少しだけ気がラクになります。
◆ ぎこちなくても、「ありがとう」って言ってみる
褒めに慣れてない人ほど、「受け取る練習」が必要です。
完璧じゃなくていい。
照れても、ぎこちなくても大丈夫。
一度くらい、こう返してみてください。
「……え、本当に?あ、ありがとうございます……?」
(↑表情が引きつっててもOK)
信じるのがうまくできなくても、
まずは「否定しない」をやってみる。
それが、自分との信頼を育てる第一歩です。
🔍まとめ
「褒められるとモヤモヤする」
「なんか裏があるように感じる」
「褒め=コントロールだと思ってしまう」
そんなクセには、
過去の経験、投影、自信のなさ、褒められ慣れてなさ……
いろんな背景が隠れています。
でも、クセは変えられます。
疑うよりも、「ありがとう」と言えるほうが、きっとラクだし、ちょっとあったかい。
まずは、“受け取り筋トレ”、始めてみませんか?
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▼元になったnote記事はこちら:
▶︎ 『思い込みかも劇場』#08「その褒め、本気?裏あるやつじゃないよね?」
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