“あの子ばっかりズルい”と思ってしまう人、まだ本気を出してない説

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「ズルい」と感じてしまう気持ちは、本当は“うらやましい”の変装かもしれない

「あの子ばっかり、なんかうまくいってない?」
「え、また彼氏できたの?なんで?」
「なんかズルくない?ああいうタイプ」

そんなふうに思ってしまうこと、正直、ゼロではない。
もちろん口には出さないし、SNSの“いいね”もちゃんと押す。
むしろ「うらやましいって思っちゃう私、ちっさいな〜」と、
モヤモヤをなかったことにしようとすることもある。

でもその気持ち、けっして性格が悪いからじゃない。
むしろ、何かに踏み出す前の、心の準備運動みたいなものかもしれない。

そんな視点で、“ズルいと思ってしまう気持ち”の正体と、
そこにあるかもしれない「まだ本気を出していない私」について考えてみたいと思います。

比べてるうちは、まだ見てるだけ

誰かの恋愛やキャリア、SNSのキラキラ投稿を見て
「いいな〜」と思ってしまうことってありますよね。

特に、自分がまだ手をつけていないことに関しては、
やたらと“あの子がまぶしく”見えてしまう。

「恋愛とか無理って思ってるけど、やっぱり彼氏できたらうれしいかも」
「今は転職する勇気ないけど、理想の仕事についたって聞くとちょっとザワつく」

そういうとき、心のどこかで「自分もほんとはやりたい」と感じているからこそ、
“人の成功”が気になってしまう。

この心理は、社会心理学でいう「上方比較(アップワード・コンパリソン)」という現象で、
自分よりもうまくいっている人と比較することで、自己評価が揺れる状態のことを指します。

つまり、「まだ始めてない分野」ほど、見てるだけの自分と動いてる誰かの差を大きく感じやすい。

でも、実はそれだけじゃない。

ちゃんと自分も“がんばってるつもり”の分野、
たとえば恋愛、婚活、キャリアみたいなテーマでも、
うまくいってる人と自分を比べて、モヤモヤしてしまうことってありますよね。

「私だって、やってるし」
「頑張ってるけど…なんであの子だけ?」

そう思ってしまうのは、“努力してるのに報われない”ように感じる不公平感があるから。
やってる。がんばってる。…なのに、なぜかうまくいかない。

もしかすると、やっていないわけじゃないけれど、
“やり方が違う”だけかもしれないし、
自分の中に、まだ気づいていないブレーキやパターンがあるのかもしれない。

そう考えると、結果の違いも、ただの“勝ち負け”ではなく、
「違いがあるだけなんだ」と思える余白が生まれてくる気がします。

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“ズルい”の正体は、“うらやましい”の変装

「あの子ズルい」と思ったとき、
その感情をちょっと深掘りしてみると、
出てくるのはたいてい「うらやましい」という気持ち。

だけど、うらやましいって、意外と素直に認めづらい。
なんとなく負けた気がしたり、
「自分には足りない」ってことを認めるみたいで、ちょっと苦しくなるから。

そこで心は、防衛モードに入ります。
「うらやましい」じゃなくて、「ズルい」って言葉にすり替えて、
少しだけ強い立場から相手を見ようとする。

心理学ではこういう反応を「防衛機制」と呼びます。
とくに「置き換え」や「投影」がよく起きる場面です。

たとえば――
本当は「私もああなりたい」と思ってるけど、
その気持ちを認めるのがちょっとつらくて、
「うまくいってるのは運がいいだけじゃない?」
「あの子、なんか軽く見られるタイプだもんね」なんて、無意識にラベルを貼ってしまう。

これって、自分を守るための自然な反応です。
人って、“ほしいものが手に入ってないときほど、持ってる人にちょっと冷たくなる”ものなんですよね。

でも実は、「ズルい」と思ったその相手は、
自分が“こうなれたらいいな”と思ってる未来の姿をちょっとだけ先に体現している人なのかもしれません。

だから「ズルい」は、憧れや理想に手が届かないときのサイン。
見方を変えれば、“今の私にとって大事なテーマ”がそこに浮かび上がってるということでもあるんですよね。

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本気を出すって、意外とこわい

「じゃあ私も、やってみようかな」
そう思ったはずなのに、なぜか手が止まる。
予定を入れるだけで緊張するし、
やろうとしても、なぜか他のことで忙しくなってしまう。

これって、決して「やる気がない」わけじゃない。
むしろその逆で、「本気で望んでるからこそ、こわい」ってことなんです。

心理学では、こういうとき「自己効力感(self-efficacy)」が関係しているとされます。
“やってもうまくいかないかも”と感じていると、人は無意識に行動を避ける。

さらに、「もし本気でやって、失敗したら?」という不安。
これは「失敗回避動機」につながっていて、
“自分の価値”が失敗によって否定されるんじゃないかと、心が守りに入る状態です。

本気でやって失敗すると、「自分に価値がないのかも」って感じてしまうのが怖いんですよね。

だから本気は出さず、ちょっと力を抜いた状態でやってみて、
「まあ、そこまで真剣じゃなかったし」と逃げ道を残しておく。
それは、自分を傷つけないための知恵でもあります。

でも、その一方で、
「本気を出したら、何かが変わってしまうかもしれない」という“こわさ”もある。

たとえば、うまくいって理想の人と出会えたら――
それまで守ってきた“ひとりで平気な自分”が壊れてしまうような、
心のどこかで「変わりたくない私」も眠っていたりする。

変わることへの期待と、変わることへの恐れ。
その間でゆれているから、なかなか一歩が出ない。

でもそれって、すごく正直な反応なんだと思うんです。

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“ズルい”と言ってる自分も、別にズルくない

ここまで読んで、
「え、私ってすごくこじらせてる…?」と思った人もいるかもしれません。

でも大丈夫。
人のことを“ズルい”って思ったくらいで、自分を責める必要はありません。

むしろそれは、ちゃんと自分の感情が働いている証拠
理想や願いがあるからこそ、誰かの姿に何かを感じるんです。

心理学では、このモヤモヤは「認知的不協和」ともいわれています。
自分の理想と現実のギャップに気づいたとき、心がザワつく。
でもそのザワつきは、“ズレに気づけた”からこそ起こるもの。

そしてもうひとつ大事なのは、
「ズルい」と思った相手を、少しでも気にしてるってこと自体が、やさしさの裏返しだったりもするということ。

本当にどうでもいい人のことなんて、モヤモヤもしないし、覚えてもいない。
わざわざ心に引っかかるってことは、
自分が大事にしている価値観やテーマと、その人の姿が重なっているからなんです。

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おわりに

「あの子ばっかりズルい」って感じるとき、
本当は「私もそっちに行きたい」と心がサインを出しているのかもしれません。

だけどまだ、動く準備が整っていない。
まだ、ちょっと怖い。
まだ、自分のタイミングが来てない。

それはぜんぶ、悪いことじゃない。

つまり、“まだ本気を出してないだけ”。

だったらその“本気”、
あの子じゃなくて、自分のために、ちょっとずつ使ってみてもいいのかもしれません。
モヤモヤの奥に眠っている、“理想の自分”に、そろそろ会いに行くタイミングなのかも。

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