彼が選んでくれたお店に入って、
「ここ、来てみたかった。うれしい」
と笑う女性。
プレゼントを受け取って、
「私のために選んでくれたの? ありがとう」
と喜ぶ女性。
困っているときに助けてもらい、
「本当に助かった」
と相手に伝えられる女性。
そんな姿を見ていると、
「結局、男性はああいう可愛げのある女性が好きなのよね」
と思うことがあります。
こちらは相手の負担にならないように気を配り、困らせないように自分のことは自分でやっている。
相手が疲れていれば自分の話は控え、何かをしてもらったら、すぐにお返しを考える。
十分に相手を大切にしているはずなのに、なぜか甘えたり喜んだりする女性のほうが、周囲から気にかけてもらっているように見える。
「私はこんなに頑張っているのに」
そんな悔しさが出てくることもあるでしょう。
可愛げは、見た目や話し方だけで決まらない
「可愛げのある女性」と聞くと、頼り上手な人や、甘え上手な人を思い浮かべるかもしれません。
男性に媚びる人。
できないふりをして、人にやってもらう人。
少し幼い話し方をする人。
そのような女性を見て、「私には無理」と感じる人もいるでしょう。
ただ、人から可愛げがあると感じられる女性は、いつも誰かに頼っているとは限りません。
自分でできることは自分でやり、仕事もしっかりしている。
そのうえで、
うれしい。
楽しい。
驚いた。
助かった。
会えてよかった。
という気持ちが、表情や言葉から伝わりやすいのです。
相手から見ると、何をしたら喜ぶのかがわかります。
自分の働きかけが相手へどう届いたのかも見えます。
この「相手から見て気持ちがわかりやすい」という部分が、可愛げとして受け取られていることがあります。
本当はうれしいのに、うまく表現できない
自立的な女性にも、感情はあります。
彼がお店を予約してくれたら、内心ではうれしい。
自分のために時間を使ってくれたことも、ありがたいと思っている。
プレゼントを受け取れば、自分のことを考えて選んでくれたのだと感じる。
ところが、いざ相手を前にすると、その気持ちをうまく表せないことがあります。
お店を予約してもらったときには、
「高くなかった?」
「予約するの、大変だったでしょう」
「ここなら私も知っていたよ」
と返す。
プレゼントをもらったときには、
「そんなに気を使わなくてよかったのに」
「これ、高かったんじゃない?」
「次は私が何か返さないとね」
と言う。
どれも、相手を気遣っているから出る言葉です。
迷惑をかけたくない。
無理をさせたくない。
相手ばかりに負担をかけたくない。
ただ、男性からすると、彼女が喜んでいるのかどうかがよくわかりません。
相手に伝わるのは、心の中にある感謝より、実際に表れた言葉や態度です。
「うれしかったけれど、うまく言えなかった」
という事情までは、相手には見えないことがあります。
人は、自分のしたことで誰かが喜ぶとうれしい
多くの人は、自分のしたことで誰かが喜んでくれると、役に立てたと感じます。
選んだお店を喜んでもらえた。
手伝ったことで相手が助かった。
自分の言葉で相手が笑った。
その反応が返ってくると、
「やってよかった」
「また何かしてあげたい」
と思いやすくなります。
これは、男性に限った話でもありません。
友人にプレゼントを渡したとき、ほとんど反応がなければ、
「気に入らなかったのかな」
と気になるでしょう。
一方で、
「これ、欲しかった。うれしい」
と喜んでもらえたら、渡した側もうれしくなります。
人との関係では、何かをしてもらうことだけが受け取ることではありません。
そのとき自分の中に起きた感情を相手へ返すことも、受け取ることの一部です。
自立的な女性は、相手のために何かをすることには慣れています。
けれども、してもらったことで生まれた喜びを返すことには、慣れていない場合があります。
何をしても喜ばない人に見えてしまう
彼女は、喜んでいないわけではありません。
ただ、相手には反応が見えていない。
この状態が続くと、男性は、
「何をしたら喜んでくれるのかわからない」
「自分が何かをしても、それほど必要としていないようだ」
「彼女は自分で何でもできるから、僕がすることはなさそうだ」
と感じることがあります。
彼女を喜ばせようと思って、店を選ぶ。
ところが、値段や手間の心配をされる。
何かを手伝おうとすると、
「いいよ、自分でできるから」
と言われる。
褒めても、
「そんなことないよ」
とすぐに否定される。
相手は、何度か声をかけた末に、手を出さなくなるかもしれません。
そこで女性は、
「彼は私のことを喜ばせようとしてくれない」
と感じます。
彼女の中には、喜ばせてほしい気持ちがある。
男性の中には、何をしても受け取ってもらえない感覚がある。
お互いの気持ちが見えないまま、すれ違っていきます。
感情表現が豊かな女性は、相手が関わりやすい
うれしさや楽しさを表現する女性は、相手にとって関わりやすい面があります。
何が好きなのかわかる。
何をすると喜ぶのかわかる。
自分の行動が役に立ったこともわかる。
そのため、相手からの働きかけが増えることがあります。
可愛げのある女性だけが特別な価値を持っているというより、相手が関わった結果が、感情として返ってきやすいのです。
たとえば、二人の女性が同じように彼から食事へ誘われたとします。
一人は、
「今日、楽しみにしていた」
「このお店、好き」
「誘ってくれてありがとう」
と伝える。
もう一人も同じくらい楽しみにしていました。
けれども、実際に口にするのは、
「忙しいのに時間は大丈夫?」
「明日も仕事でしょう」
「無理して誘わなくてもよかったのに」
という言葉です。
後者の女性は、彼を思いやっています。
しかし、彼に届くのは、喜びより心配です。
気遣いが悪いわけではありません。
喜びより先に気遣いが出ることで、本当の反応が隠れてしまうのです。
喜びを見せることにも、怖さがある
悲しさや寂しさを見せるのが苦手な人は、自分が感情を抑えていることに気づきやすいかもしれません。
一方、うれしさや楽しさまで抑えていることには、気づきにくいものです。
子どもの頃に、
「そんなにはしゃがないの」
「調子に乗らないの」
「それくらいで喜ばないの」
と言われてきた人もいるでしょう。
うれしそうにしたら、からかわれた。
楽しみにしていた予定がなくなり、がっかりした。
欲しいものを口にしたら、わがままだと言われた。
自分だけ喜んでいると、家族の機嫌が悪くなった。
そのような経験が重なると、感情を表す前に自分を抑えるようになることがあります。
また、喜びを見せることは、自分がその人を必要としていると伝えることでもあります。
「あなたがしてくれたことで、私はうれしくなった」
と示すことになるからです。
人に影響されない自分でいたい人にとっては、それが落ち着かないこともあります。
期待していると知られたくない。
相手を好きなことを見抜かれたくない。
喜んだあと、同じことをしてもらえなかったら傷つく。
そのような怖さから、気持ちが動いても表情や言葉を抑えることがあります。
してもらうと、すぐに返したくなる
何かをしてもらったとき、うれしさより先に、
「借りを作ってしまった」
と感じる人もいます。
食事をごちそうしてもらったら、次は自分が払う。
プレゼントをもらったら、同じくらいの金額のものを返す。
話を聞いてもらったら、今度は相手の相談に乗る。
それ自体は、相手を大切にする行動です。
ただ、受け取った瞬間から返すことばかり考えていると、うれしさを味わう時間がありません。
相手から見ても、
「喜んでもらえた」
とは思えないこともあります。
自立的な女性にとっては、何かをしてあげる側に戻ると安心します。
何かをしてもらったままでいると、相手より下の立場になったように感じたり、自由を失ったように感じたりすることもあります。
そのため、相手の好意を受け取る前に、すぐにお返しをしようとしてしまうのです。
可愛げのある女性に腹が立つとき
感情をわかりやすく表現する女性を見て、腹が立つことがあります。
「あんなに大げさに喜んで、わざとらしい」
「男性に好かれようとしているだけ」
「できないふりをしている」
そう思いたくなることもあるでしょう。
実際に、男性へ媚びるために振る舞いを変えている人もいるかもしれません。
ただ、その女性が見せているものの中に、自分が長い間抑えてきたものが含まれている場合もあります。
私も、うれしいと声に出したかった。
私も、何かをしてもらって喜びたかった。
私も、相手に自分のために動いてほしかった。
私も、頑張らなくても気にかけてもらいたかった。
けれども、自分にはそれができなかった。
できなかったことを自然にしている人が大切にされているように見えたら、悔しくなるのも無理はありません。
その悔しさの奥には、
「私も大切にされたかった」
という気持ちがあるのかもしれません。
何も言わなくても気づいてほしかった
自分の感情を表せない人ほど、心のどこかで、
「本当に私のことを大切に思っているなら、言わなくてもわかるはず」
と感じることがあります。
自分は相手の表情や声の調子から、疲れていることに気づく。
頼まれなくても、必要なものを用意する。
相手が喜びそうなことを考える。
だから、相手にも同じことを期待します。
自分が言葉にしなくても、うれしいことや寂しいことに気づいてほしい。
自分から欲しいと言わなくても、与えてほしい。
しかし、相手が同じように人の様子を読み取れるとは限りません。
気づいてもらえないことが続くと、
「私は大切にされていない」
という悲しさが強くなります。
その一方で、気持ちをわかりやすく表現している女性は、周囲から反応を受け取っている。
その姿が、さらに苦しく見えるのです。
感情を表せば、必ず大切にされるわけではない
感情表現が苦手なことと、相手から大切にされないことを、すべて結びつけることはできません。
女性がうれしそうにしても、何もしてくれない男性はいます。
自分の都合ばかりを優先し、相手の気持ちに関心を持たない人もいます。
女性がいつも笑顔で、自分を持ち上げてくれるときだけ機嫌がよい男性もいるでしょう。
そのような関係では、女性が感情を表現しているというより、男性が望む反応を求められています。
大切にされることには、喜んだときに一緒に喜んでもらえることだけでなく、疲れているときや、何も返せないときにも尊重されることが含まれます。
嫌なことを嫌だと言える。
意見が違っても話を聞いてもらえる。
反応が薄い日があっても、責められない。
そのような関係があるかどうかも見なければなりません。
「私の感情表現が足りないから、大切にされないのだ」
と一人で責任を引き受ける必要はありません。
自分の気持ちを少しずつ見せたとき、相手がそれを受け取ろうとする人なのかも大切です。
別の女性になる必要はない
感情を表現するために、声を高くしたり、できないふりをしたりする必要はありません。
本当はそれほど喜んでいないのに、大げさな反応をする必要もありません。
自分にない振る舞いを無理に加えると、今度は演じ続けることが苦しくなります。
最初から豊かな表情や言葉が出なくても、
「うれしい」
「楽しかった」
「助かった」
「選んでくれたことがうれしい」
と、実際に感じたことを一つ伝えるだけでも、相手に届くものは変わります。
その場では言葉が出なくても、帰宅してから、
「今日は楽しかった。誘ってくれてありがとう」
と送ることもできます。
大切なのは、可愛げのある女性らしく振る舞うことではありません。
自分の中に起きたことを、無視しないことです。
自分の喜びが見えなくなっているとき
長い間、考えて動くことを優先してきた人は、自分が何を感じたのか、すぐにはわからないことがあります。
お店へ行っても、料理を楽しむ前に値段や帰りの時間を考える。
プレゼントを受け取っても、喜ぶ前に相手へのお返しを考える。
人から褒められても、受け取る前に否定する。
気持ちを感じるより先に、判断や気遣いが始まります。
その反応には、これまでの経験が関係していることがあります。
感情を見せたときに何が起きたのか。
喜ぶことを止められた経験はなかったか。
期待すると傷つくと思うようになったのはなぜか。
何かを受け取ったままでいると、どのような居心地の悪さが出るのか。
こうしたことを見ていくと、自分が感情を表せない理由が、単なる性格の問題では収まらないことがわかってきます。
カウンセリングでも、感情表現を豊かにする方法だけを考えるわけではありません。
うれしかったはずの場面で、なぜ気持ちを抑えたくなるのか。
相手に喜びを見せた先で、何が起きるように感じているのか。
誰かに大切にしてもらうことへ、どのような抵抗があるのか。
現在の人間関係と過去の経験を一緒に見ながら、その人の中で止まっている感情を整理していきます。
喜びや楽しさを表に出せるようになると、別の女性に変わるわけではありません。
自分が何を好み、何をうれしいと感じる人なのかが、相手にも伝わりやすくなります。
そして、自分の気持ちを伝えたときに喜んで関わってくれる人なのか、自分が相手の望む反応をしなければ不機嫌になる人なのかも、以前より見分けやすくなります。
可愛げのある女性になることより、自分の感情が見える関係を作ること。
そのほうが、大切にされることの意味を、自分に合った形で考えられるのだと思います。
こちらの記事もどうぞ
うれしい、楽しい、助かったという気持ちがあっても、なぜか相手の前では表せない。その場で何を抑え、感情を見せた先に何が起きると感じているのかを整理したい方は、カウンセリングをご利用いただけます。



