職場で、年下の女性が評価されている。
会議で自分が出した案とよく似たことを話したのに、その人が言うと、上司がうれしそうに聞いている。
友人から、昇進した、結婚した、家を買ったという話を聞く。
SNSを開けば、仕事も家庭も充実しているように見える人がいる。
「よかったね」と言えないわけではありません。
けれども、なぜか落ち着かなくなる。
つい、その人の欠点を探したくなる。
「あの人、仕事はできるけれど、人への気遣いはないよね」
「幸せそうに見えるけれど、本当のところはわからないよね」
「かわいいから得をしているだけじゃない?」
そして、そんなことを考えている自分に気づき、今度は自分自身が嫌になる。
嫉妬してしまう心理には、単に「相手がうらやましい」という気持ちだけがあるわけではありません。
相手が持っているものを見たときに、
「私には手に入らない」
「私はあんなふうには扱われない」
「どれだけ頑張っても、私は選ばれない」
と感じると、嫉妬は強くなります。
つまり、嫉妬が苦しいのは、相手が魅力的だからだけではありません。
その相手を通して、自分が諦めてきたものや、自分には無理だと思ってきたものを見せられるからなのです。
嫉妬とは「うらやましい」だけではない
誰かを見て、「いいな」「私もそうなりたい」と思うことはあります。
この段階では、相手が持っているものを、自分も手に入れられる可能性があります。
ところが、
「私には無理」
「どうせ私は選ばれない」
「私はあの人のようにはなれない」
という思いが加わると、「うらやましい」だけでは済まなくなります。
「なぜ、あの人ばかり」
「私のほうが頑張っているのに」
「本当は、たいした人ではないはず」
という気持ちが出てきます。
欲しいものがある。
けれども、自分には手に入らないと思っている。
この二つが重なると、相手の存在そのものが苦しくなります。
嫉妬している相手は、自分が諦めてきたものを持っている
嫉妬する相手は、自分とはまったく関係のない人ではありません。
その人は、自分が欲しかったものを持っているように見える人です。
周囲から評価されている女性に腹が立つのは、自分も正当に評価されたかったからかもしれません。
人に頼ることが上手な女性が気になるのは、自分はずっと、誰にも頼らず頑張ってきたからかもしれません。
男性から大切にされている女性を見ると苦しくなるのは、自分も誰かに選ばれ、大事に扱われたかったからかもしれません。
それなら、自分も同じものを求めればよさそうなものです。
ところが、長年頑張ってきた人ほど、自分にはそれを求める資格がないように感じることがあります。
「私は、あの人みたいに愛想よくできないから」
「人に甘えるようなタイプではないから」
「私の年齢では、もう無理だから」
「実力だけで認められなければ意味がないから」
こうして、自分からあきらめてしまいます。
本当は欲しい。
けれども、自分には手に入らない。
その苦しさを少しでもやわらげるために、相手の価値を下げたくなるのです。
職場で女性に嫉妬してしまう心理
職場での嫉妬は、仕事の能力だけを比べて起こるとは限りません。
上司からかわいがられている。
周囲に気軽に助けを求められる。
自分の意見を遠慮なく話している。
それほど残業していないのに評価されている。
男性社員がその人には親切にしている。
そんな様子を見ると、腹が立つことがあります。
特に、これまで「きちんと仕事をすること」で自分の居場所を作ってきた人にとって、頑張っているように見えない人が評価されることは受け入れにくいものです。
自分は、頼まれた仕事を断らない。
誰かが失敗すれば、代わりに処理する。
人に頼らず、期限を守り、結果を出す。
それでも、親しみやすく振る舞う女性や、上司との距離が近い女性のほうが評価される。
そうなると、
「結局、仕事の実力なんて関係ないのね」
「私はこんなにやっているのに」
という気持ちが出てきます。
けれども、ここで苦しいのは、その女性が評価されたことだけではないかもしれません。
自分が長い間、
「人に頼ってはいけない」
「愛想で評価されるのは正しくない」
「誰よりも働かなければ認めてもらえない」
というやり方を続けてきたことも関係しています。
自分が禁じてきたことを、ほかの人が自然にやっている。
しかも、それによって評価や好意を受け取っている。
そこに、強い嫉妬が生まれることがあります。
相手の欠点を探したくなるのはなぜか
嫉妬している相手について、欠点を探したくなることがあります。
「あの人は評価されているけれど、裏では嫌われている」
「あの人の夫は優しそうだけれど、何かあるに違いない」
「あの人は成功しているけれど、運がよかっただけ」
これは、その人を本当に嫌っているからとは限りません。
相手が素晴らしい人のままだと、自分との差を強く感じてしまうからです。
相手の価値を下げることができれば、自分が感じる惨めさを一時的に減らせます。
ただし、相手の価値を下げても、自分の価値が上がるわけではありません。
しかも、嫉妬が態度に出ると、人間関係まで悪くなります。
素っ気ない返事をする。
相手の成果を認めない。
わざと情報を渡さない。
陰で批判する。
距離を取る。
その結果、周囲から扱いづらい人だと思われることがあります。
すると、
「やっぱり私は人に好かれない」
「どうせ私には誰も味方してくれない」
という、もともと持っていた思いが強くなります。
自分を低く見積もることで嫉妬が生まれ、嫉妬から出た態度によって、さらに自分を低く見ることになる。
なかなか厄介な循環です。
恋愛で嫉妬してしまう心理
恋愛での嫉妬は、「相手を失うかもしれない」という不安とつながっています。
彼がほかの女性と楽しそうに話している。
返信がいつもより遅い。
飲み会に女性が参加すると聞いた。
SNSで知らない女性が、彼の投稿に反応している。
そんな出来事があるたびに、
「もっと魅力的な女性が現れたら、私は捨てられる」
「彼は今は私と一緒にいるけれど、本当はもっといい人を探している」
と考えてしまう。
ここで見落とされやすいのが、彼は現在、自分を恋人として選んでいるという事実です。
自分がどれだけ自分を低く評価していても、彼まで同じ評価をしているとは限りません。
けれども、自分が自分を見る厳しい目を、彼もこちらに向けているはずだと思ってしまう。
不安が強くなると、
「誰と連絡を取っているの?」
「どうして返信できなかったの?」
「その女性とは、どういう関係?」
と何度も確認したくなります。
彼の予定を細かく聞いたり、スマートフォンを見たくなったり、女性との付き合いを制限したくなることもあるでしょう。
本人としては、関係を壊したくないからやっていることです。
ところが、彼からすると、何をしても疑われ、説明しても信用してもらえない状態になります。
やがて彼が疲れて距離を取ると、
「やっぱり私から離れていった」
という結論になります。
最初から恐れていた結果を、自分の行動によって近づけてしまうことがあるのです。
本当に疑わしい場合と、自分の不安は分けて考える
もちろん、恋愛で嫉妬する側に、すべての原因があるわけではありません。
実際に嘘をつかれている。
過去に浮気があった。
約束を何度も破られている。
誰にでも思わせぶりな態度を取る。
関係について聞いても、はっきり答えない。
このような状況で不安になるのは、相手の行動にも原因があります。
それまで、「自分に自信がないから嫉妬するのだ」と決めつける必要はありません。
大切なのは、現実に起きている問題と、自分の中で膨らんでいる不安を分けて見ることです。
けれども、嫉妬が強いと、この二つを混同します。
相手の曖昧な態度に腹が立っているのか。
過去に裏切られた経験を思い出しているのか。
自分より魅力的に見える女性がいるだけで怖くなっているのか。
自分でも区別がつかなくなります。
そのまま怒りとして相手にぶつけると、本当に伝えたいことが伝わりません。
本当は、
「あなたが好きだから、失うのが怖い」
「私は、自分が選ばれ続けるとはなかなか思えない」
「疑ってばかりいる自分にも疲れている」
と感じているのかもしれません。
けれども、口から出るのは、
「どうせ私より、あの人のほうがいいんでしょ」
「男の人なんて信用できない」
「好きなら、そのくらいわかるでしょう」
という言葉になってしまいます。
これでは、相手には責められていることしか伝わりません。
嫉妬する自分が嫌いになると、嫉妬はさらに苦しくなる
嫉妬していることを認めたくない人もいます。
人の幸せを喜べない自分は、性格が悪いのではないか。
年下の女性を気にするなんて、みっともない。
恋人を疑う自分は、重い女なのではないか。
そう考え、嫉妬している自分まで責めてしまいます。
すると、最初は相手に向いていた怒りが、自分にも向かいます。
相手がうらやましい。
そんな自分が嫌い。
けれども、相手を見るとまた腹が立つ。
この繰り返しになります。
嫉妬しないように努力するだけでは、なかなか変わりません。
嫉妬の奥にある「本当は何が欲しかったのか」がそのままだからです。
嫉妬の奥には、長年続けてきた頑張り方がある
嫉妬に悩む人の中には、自分の価値を「頑張った量」で証明しようとしてきた人がいます。
人より多く働く。
頼まれたことは断らない。
弱音を吐かない。
結果を出す。
迷惑をかけない。
誰かに選ばれるのを待つのではなく、役に立つことで自分の居場所を作る。
そうやって生きてきた人にとって、特別に頑張っているように見えない人が評価されたり、愛されたりすることは、受け入れにくい出来事です。
「私はこんなにやっているのに、なぜあの人が」
という思いが出てきます。
けれども、ここで起きているのは、単にその人に嫉妬しているということだけではありません。
自分が長い間、
「役に立たなければ価値がない」
「頑張らなければ選ばれない」
「欲しいと言うより、我慢して認められるほうが正しい」
というやり方を続けてきたことが関係しているかもしれません。
そのやり方は、仕事を任されるうえでは役に立ったでしょう。
家庭を支えるためにも必要だったかもしれません。
けれども、恋愛や人間関係では、自分を苦しくさせることがあります。
相手が好意を向けてくれても信じられない。
ほめられても、社交辞令だと思う。
大切にされても、いつまで続くかわからないと疑う。
そして、自分が受け取れないものを、自然に受け取っているように見える人に腹が立つのです。
嫉妬している相手を見ると、自分が欲しいものがわかる
嫉妬をなくそうとすると、余計にその相手が気になります。
「気にしないようにしよう」
「比べないようにしよう」
と思っても、気づけばまた比べています。
それよりも、嫉妬している相手が何を持っているように見えるのかを考えてみると、自分のことが見えてきます。
評価されることかもしれません。
誰かに選ばれることかもしれません。
人に頼ること。
女性として扱われること。
豊かさを受け取ること。
遠慮せずに意見を言うこと。
頑張り続けなくても、そこにいていいと思えることかもしれません。
嫉妬するということは、それが自分にとって、どうでもいいものではないということです。
本当は欲しかった。
けれども、自分には無理だと決めてきた。
あるいは、欲しがること自体を格好悪いと思ってきた。
その可能性があります。
嫉妬している相手の問題ばかりを考えていると、この部分は見えません。
職場や恋愛が変わっても、同じ嫉妬を繰り返すことがある
職場では、評価される同僚に嫉妬する。
恋愛では、彼に近づく女性を警戒する。
友人関係では、自分より幸せそうな人と距離を取る。
家族の中では、親から可愛がられたきょうだいを今も許せない。
場面は違っても、
「私は選ばれない」
「私は後回しにされる」
「私は頑張らなければ価値がない」
という思いが共通していることがあります。
その場合、目の前の相手との関係だけを変えても、別の場所で同じ苦しさが出てきます。
転職しても、また評価される女性が気になる。
恋人が変わっても、またほかの女性を警戒する。
付き合う友人を変えても、また自分より恵まれているように見える人が気になる。
相手や環境が変わっても同じ感覚が続くなら、今の問題だけではなく、自分が長年続けてきた生き方も見ていく必要があります。
嫉妬してしまう理由は、一人では整理しにくいことがある
嫉妬している自分について一人で考えていると、相手の欠点探しか、自分への説教になりやすいものです。
「私の性格が悪いから」
「もっと自信を持たなければ」
「人と比べなければいい」
そう結論づけても、なぜ特定の相手にこれほど反応するのかまでは、なかなか見えてきません。
嫉妬している相手は、何を持っているように見えるのか。
自分は、いつからそれを諦めるようになったのか。
仕事、恋愛、家族の中で、同じ立場を繰り返していないか。
自分はこれまで、何をすることで人から認めてもらおうとしてきたのか。
カウンセリングでは、今嫉妬している相手のことだけではなく、こうした人生全体のつながりを一緒に整理していきます。
嫉妬だけを消そうとするのではなく、その奥にある「自分には手に入らない」という思いが、どこから続いているのかを見ていくのです。
嫉妬している相手は、自分が長い間、諦める側に回ってきたことを教えているのかもしれません。





